第474話 食劇の景虎

新二『俺が先攻でいい?』


景虎『いいぞ?先攻だから負けたとか言うなよ?松?』


新二『ぐぬぬ!吠え面かかせてやる!』


今日も懲りずに松ちゃんは閉店を狙って勝負。

前回予告通りラーメン勝負。



新二『鶏塩ラーメン!』


先手、松ちゃんが出したるは鶏ひき肉と昆布で出汁を取ったラーメン!

鶏ひき肉と昆布だしにちょいっと調味料足しただけ。

これが旨い!ほんとに素人だよね?

付け合わせは鶏チャーシュー。

俺は試食してるから知ってるけどコレほんと旨かった!


審査員は奥さん、今日は遅番保利くん、女子大生バイト。

何度もやるからうちわにプリントアウトして景虎or新二ってリバーシブルになってる審査員用うちわが作られた。美味い方の名前が書いてある方を出すわけ。

閉店後行われる料理勝負も7回目。


奥さん『…美味しいわ。』

保利『見た目より濃い!』

女子大生『鶏の旨みがガツンと来るわ!』


俺も審査員したかったなぁ。

今日はじゃんけん負けちゃったの。

この料理勝負の模様を録画して望を始め友達に見せるとすんごいウケる。

そして食べたくなる。

でもさ?23:00にする事では無い…!


満足げな3人を見て吐息を漏らす松ちゃん。

美味しいって声に顔が輝く。

…後攻、景虎さん。


俺カレは飲食店である。店名通りカレーとハンバーグの店。

だから終業後もほのかに香る肉汁とスパイシーなカレーの薫り…。


景虎さんはてぬぐいを頭に巻いて…



景虎『特製カレーラーメン!おあがりよ!』


!!!


出た!!幻のカレーラーメン!

松ちゃんはふふって鼻で笑う。


新二『…B級グルメを否定するわけじゃ無い。

でも味が想像出来るだろ。

カレーもラーメンも美味い。合わせれば…でも想像が出来る味!!』


すっかり俺カレに馴染んだ松ちゃんは人見知りも出なくなっておしゃべりできる様になった。スタッフたちとも。

カレーラーメンを見て松ちゃんが言った事は間違ってはいない。

…間違ってはいないけど…想像出来る味じゃ無いんだよソレ。想像を遥かに超えてくるの!


奥さん『やっぱコレうっまいわぁ♡』

保利『…2回目だけど美味いっ!!!』

女子大生『あへぇ♡』


女子大生のお姉さんが出しちゃいけない声を…!

審査員のリアクションに驚いた松ちゃん!


当然…


景虎3ー新二0


Winner 景虎!7連勝!


新二『んなわけない!忖度?公平に!』


クレームつける松ちゃんに景虎さんが食ってみろってどんぶりを渡す。

一口すする。じゅるるっる!



新二『うま!なんだコレ?!

濃厚!味噌ベース?想像出来る旨さを遥かに超えて…

何すんだ?』


景虎さんが服を脱がそうとしてるw


景虎『料理漫画だと服破れたりしない?』


松ちゃんの服を脱がせることになんの需要があるというのか…!

松ちゃんはけっこう美味いって言いながら一杯完食した。

景虎さんも松ちゃんの鶏ラーメンをうま!って言いながら完食。


『惜しかったね。

アレは景虎さんの三つある必殺料理スペシャリテの一つだから…。』


新二『あんなのがまだあんのか?!』


景虎『あー!敗北が知りたい!

松〜早くおじさんを負かしてよぉ♪

がんばれ♪がんばれ♪』


新二『ぐぬぬぬぬぬ…!』


このおバカな勝負も結構楽しい。

最近では奥さんも文句言わなくなって…


☆ ☆ ☆

ある日。


奥さん『…まったく…材料費、光熱費、早く帰って休むなり仕込みに時間を…。』


新二『すいません…これ少ないんですが厨房借りたり、光熱費の足しに…

あと、貰い物なんですが…。』


そう言うと松ちゃんは奥さんに車で運んで来た実家に唸るほどあるお中元の箱と生々しい厚さの封筒を奥さんに差し出した…!


奥さんは受け取れない!受け取れないです!って言いながら手を伸ばした。

箱はビールに洗剤、油にタオルセットといくつあっても困らないものばかり。


新二『コレは商品券ですから大丈夫っす。』


奥さん『おほほほ♪それなら…料理勝負の経費として預かっておきましょうか…♪

うん、料理人だもん切磋琢磨することも大事よね!』


俺カレの最上位権力者の承認を得てこの料理勝負は行われています。

負けた松ちゃんがずっと次回課題を設定している。


新二『次回…天ぷら!天ぷら勝負!』


☆ ☆ ☆

そして8回目の勝負にして…


景虎1ー新二2

Winner 新二!



新二『やった!どうだおっさん!』


景虎さんは苦笑いしながら、


景虎『年上なんだから景虎さんと呼べ。

今回はお前の勝ちだ新二。』


あ。

景虎さんが松ちゃんを『新二』って名前で呼んだ!


新二『…!』


松ちゃんはびっくりして固まってる。

景虎さんは笑いながら、


景虎『7勝1敗とは言え?俺に一回でも勝ったんだ、松!って呼べないだろ。

今日から新二って呼ぶわ。』


松ちゃんの頬に朱がさす。

嬉しいよね?男が男に認められると言うこと。


新二『…景虎…さん。』


松ちゃんは感激の面持ち。

景虎さんはうんうんって頷きながら、


景虎『勝ち逃げはしないよな?

じゃ今回は俺の負けだから次回品目は俺が決めて良いよね?』


新二『…あぁ。』


景虎『次回の課題は…カレー!カレーライス!!』


『大人気ない…!!』


思わず声が出ちゃう。

審査員も松ちゃんもポカン。


景虎『負けっぱなしでいれる訳ないだろ!勝負だ新二!!』



☆ ☆ ☆

二日後。


景虎『ふふふ…ブラックカレー!』


景虎さんは鼻に黒いマスクをして登場。

コレ!中毒性のあるカレー!

なんかどろどろで真っ黒で旨そうじゃない…

だけど理由は説明出来ないんだけど延々ともう一口食べたくなる!

景虎さんの必殺料理スペシャリテ



景虎3ー新二0

Winner 景虎!


景虎『俺はカレー将軍だぜ!

カレーに関しては世界中で俺に勝てるヤツは誰もいねえんだ!』



奥さんが優しく微笑みながら松ちゃんの肩を叩いて言った。


奥さん『こう言う大人げ無いおっさんになっちゃダメだぞ?

私新二くんカレー美味しかった!もう一杯ちょうだい♪』


『俺も!』


松ちゃん1勝8敗!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る