第459話 初東京【side立花望】
『どうしよう…アイドルならないか?とかモデルスカウトされちゃったり…!』
兄『…お前は何し行くんだ…!』
いつもの様に2枚の布団で兄姉弟3人で寝る我が家。
さっき聞いたんだけど!香椎先輩インターハイでベスト8まで進出したんだよ!すごくない?
ロインではクールだったけどあれ負けてビキビキになってたよね。
あたしは明日から東京へ行くの!
全中の本戦が始まるよ!明日の朝から車で高速に乗って昼過ぎに着いて明後日朝第二試合からの登場!
先生の車で親友sも応援に来てくれる!
五回勝てば優勝!勝ち進めば三日間の日程!
なんと!家族全員で応援に来てくれるよぉ!
東京…田舎娘のあたしからしたら煌びやかで流行の最先端…!
あたしなんか…いや…原石?こんな可愛いんだから…あるかも…!
でも!あたし!
ひー『あすは…またりょかんにおとまり!しゅごい!』
兄『ひーちゃんは絶対の家族の手を離しちゃダメだぞ?』
ひー『はーい!』
うん、良いお返事!我が弟は天使よのう。
あぁ、まだ見ぬ強敵…さらさらとの再戦!
やっべぇオラわくわくしてきたぞ?
寝れるかな?明後日が本戦だけど今日寝れるかな?
電気消してすぐひーちゃんは寝息を立てる。
目がギンギンだよぉ!こうゆう時は兄ちゃんに無茶振り!
『…兄ちゃん…面白そうな話しして?』
兄『…こんど田中くんたちと映画撮るんだけど…
香椎さんがキャシーレイナって役になりかけて…!』
『ひーっひっひっひ!香椎先輩がアメリカ帰りの金髪爆乳ノー天気娘!
田中くんセンスあるよぅ!』
そんな面白い企画を…!
あたしも出たい!ねぇお願い!あたしも出たいよぉ!
兄ちゃんにねだってるうちに眠くなってきた…。
兄『…もう寝なさい。』
『…うん…もう…ねりゅ…。』
頑張る…から…にぇ…。
☆ ☆ ☆
朝からドライブ!
ひーちゃんと歌を歌ったりしてるうち昼過ぎに旅館に着いた。
そこから歩きで駅前に出る。
夏休みだからか東京は人でいっぱいだった…。
父『いや、コレが普通だぞ。』
『ふぇ?お祭りとかじゃ無いの?』
祖父『平日の昼だしこんなもんだろ?
休日の昼頃とかすっごいんだぞ?』
祖母『ほんとほんと。』
祖父母は旅行で関東圏何度か来てる。だからわかる。
父さんも母さんも修学旅行東京だったし、仕事や出張で来た事ある。わかる。
何故ひーちゃんは落ち着いてる…?
あたしと兄ちゃんだけキョロキョロしてるの?
ひー『テレビだとよくみるよ?
しぶやのスクランブルこうさてん!』
…くっ…5歳の弟の方が落ち着いているなんて…!
祖父母と父さんは折角だからちょっと観光と親戚の家を訪ねるそうな。
母さんと三兄妹は試合会場を下見した後渋谷、原宿を回るんだー!
※望要望。
どうしよう…まじスカウトあるかも知れない…!
兄『うまい。』
母『美味しいね。』
ひー『おいしいな。』
『食ってばっかりじゃない!』
兄『わたあめとソフトクリームを両手持ちで食ってるお前に言われたく無い。』
食い歩きみたいになってるじゃん!
でも…色々なお店があるよ…新川町なんて何も無い…コンビニスイーツ以外だと町の真ん中のコーヒー店の大判焼きかアイスしか無い。
まあ…思い出だよね…。
兄ちゃんと母さんが足を止めてカップケーキ食べ始める。
あたしはひーちゃんと手を繋いで原宿をブラリとする…。
大丈夫すぐに戻るよ!
…何となく怖くてひーちゃんの手を握ってるのは秘密!
ひー『だいじょうぶ。ぼくがついてるよ?』
『やだ!うちの弟男前!』
ふふー!ひーちゃんはきっと良い漢になるね?
そう思ってニコニコ歩いていたら…
キャッチ『お嬢さん、モデルに興味無い?』
『えっ?』
本当にキャッチ来た?!
思ってたよりすぐ来る!
…でもなんか怖いかも…。
スーツ着て真面目そうな…でもそれが手口かもしれない…!
キャッチ『一目見てピンと来たよ!
素材…ううん、すごい原石!
天才的に可愛い!君なら…!』
もう…褒めすぎだよぉ…!
でも嬉しさよりも怖さが先立つ。
口上手すぎでしょ!
あたしの身近な男性…兄ちゃんや宏介くん。父さん爺ちゃん…皆んな口は上手く無い。それで良いんだ。
…実際スカウトされるかも?とか思ってもスカウトされる気は無い訳で。
『(断ろう。あたしは別にモデルにもアイドルにも女優にもグラビアアイドルにもなる気は無いんだし)』
そう思い、キャッチのお兄さんに丁寧にお断り入れようって思う。
ありがとう、声かけてくれて…でもあたしは…。
お兄さん?おーい?お兄さんはひーちゃんを凝視している?
キャッチ『…なんて可愛いんだ…!
おめめはクリクリ…ほっぺはぷっくり…優しさと強さが同居する…
こんな男の子見た事が無い…!
君がお母さん?』
『…ふぁっく。』
ひーちゃんの可愛さはわかる、でも母に見える?まだJCだよ!
やべぇこの人の目ふし穴だよぉ!
キャッチ『子役、キッズタレント…どっちでも大成するよ!
原石…?いやもう輝いてる…!いますぐテレビに…!』
あたしはひーちゃんを抱いて逃げた!
その後もひーちゃんは三回スカウトされた…!
世界がうちの
ひー『テレビにでたらおかねいっぱいもらえるの?』
振り切った先でひーちゃんが不思議そうに聞いてきた。
『まぁ…成功すれば貰えるかもね?いっぱい。』
ひーちゃんは目を輝かせて、
ひー『そしたらおかあさんもおとうさんもおうちにいられる?
まいにちいっしょにいられる?』
…。父さんも母さんもひーちゃん絡みの借金を返す為に必死に働いている…。
寂しいんだろうね、まだ5歳だもん。
でも普段は絶対そんなことを言わない我慢強い5歳児なんだ、うちのひーちゃんは。
『…そうするとひーちゃんは東京で暮らさないといけなくて…。
家族に会えなくなっちゃうかも知れない。』
ひーちゃんは泣きそうな顔で、
ひー『しょんなのやだよぅ!いっしょがいいよぅ!』
…私は唐突に理解したんだ。
家族はいつまでも一緒に居れないって。
まだ中学生…って思ってた。でも兄ちゃんだってもうじき高校卒業。
卒業したら大学が専門学校か就職?家を出る可能性だっていっぱいあるよね…。
『ひーちゃん。家族が一緒に居られるのは子供のうちだけなんだ。
…だから子供の頃は父さん母さんに甘えていっぱいご飯食べて勉強して遊んで成長しなきゃなんだよ。』
一緒に歩きながらひーちゃんは頷く。
…こういうの兄ちゃんの仕事なんだけどな。
『いい?ひーちゃんがお金稼がなくっても良いんだよ。
…姉ちゃんがそのうちプロのテニスプレーヤーになって父さんや母さんや兄ちゃんを支えるんだ。
あ!秘密!ひーちゃんこれ秘密だよ?』
ひーちゃんは頷いてお口チャックしてくれた。
…始めて家族に将来の夢を話した。
…あたし…テニスのプロになりたい。
その為にもここで結果出したい!
この後も母さんたちに合流するまでに、
ナンパや合コンに誘われて、ひーちゃんも執拗に追いかけ回されて、
最後にもうじき兄ちゃんたちに合流出来る!って時にまともっぽいお姉さんに話しかけられたと思ったらイッちゃった目で、
お姉さん『貴女たちの健康と幸せについて祈らせてください…!』
『ぴゃ!』
あたしはひーちゃんをサーフボードのように小脇に抱えてダッシュして逃げたよ!
やっと合流できた!母さんも兄ちゃんもお腹いっぱいって顔で、
兄『望?ひーちゃん?そろそろ旅館戻ろう?』
『早く戻ろうよぉ!』
ひー『たのしかったね?』
何とも言えない。
旅館に戻って温泉入って。
今回は平和な旅館で本当に良かった…!
※前回同様温泉付き旅館を母がチョイス。
寝る前にもう一度入るから!
兄ちゃんと一緒に近所の大きな公園を走ってラケット素振りして軽く汗かいて戻る。
夜8時頃、親友sを代表して茜から電話が来た。
茜『のぞみー?今中学校に居るの!明日の荷物運び込んでさ?
今日の深夜に先生の車で出発して明日早朝東京入りだからね!
望は東京に憧れあったじゃない?東京どう?楽しい?』
…あたしは少し考え込んでこう答えた。
『…東京…狂った街…!』
※望の感想です。
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