第457話 打ち合わせ【side香椎玲奈】

八月に入ってもうすぐインターハイ。

その直前に田中くんからお願いされてた映画撮影の打ち合わせ会なの!

久しぶりに承くんに会えるよ!


昨日夜、お姉ちゃんが


優奈『…玲奈、承くんに先日新二くんとの時間にバイト代払うって言ったじゃない。』


『…うん、誕生日に承くんの家に行った時ね。』


そうそう、承くんママにも説明してきたでしょ?

そう言った後お姉ちゃんはふう。ってため息を吐いた。


『それでね、さっきバイト代払うから時間教えて?口座にお金振り込むよ?ってロインしたら電話かかってきて、


承『あの後考えたんですけど、玲奈さんが困ってるのを自分がなんとかするって言ったのでお金は頂けません。』

って言うのよ!』


『…承くん…♡』


お姉ちゃんもうっとりした表情で、


優奈『お姉ちゃんもね、気にしないで受け取ってなんならもっと払いたい位なんだよ!感謝してるんだよ!って言ったの。


承『説明しずらいんですけどお金貰ったら違うんです。

僕が玲奈さん困り事をなんとかしたいってだけの私的な行動なので…すいません。』って!

…玲奈の婚約どうしようも無かったらお姉ちゃんが承くん貰っちゃおう…♪』


『ダメー!!』


お姉ちゃんにそんな気は毛頭無いのはわかってるよ!でも!

お姉ちゃん綺麗でセクシーだし…承くんはなんか年上お姉さんに弱そうな気配がするよ!

…そっかぁ…私のために…ふふー!

承くんは漢気のある義侠心に富んだ男の子。

古風だけど一本筋の通った漢なんだよね…。

約束は守る義理固いし口にした事は遵守する。

私は承くん好きで良かったな、この恋心が誇らしい!

…でも、あとから思うと私はまだ立花承という人を。

昔から知ってるはずの男の子を完全にはわかっていなかった。

測りかねていたんだって後でわかるんだよね…。


☆ ☆ ☆

駅前のカラオケルームで皆んな集合!

人数が多く、パーティルームを予約していたの。

田中くんが監督のこの作品。

北翔高校の文化祭用の企画で、中一時の承くんのいじめ、田中くんへのいじめ、それを承くんが解決したあの件を本人を使って再現する映画。

事前に電話で相談受けてて、


田中『…香椎さんのセンスを当てにしてるので…忌憚の無い意見を…!』


なんて言われた。

話の流れは概ね決まってて細部の流れだけどうしよ?って感じ。

あとは本人役が意外と照れちゃったりするから本人風なキャラを演じたら?とかアドバイスしたのね。


田中『…本人役にこだわりたいけど…確かに本人役より『キャラ』を演じた方が良い演者も居るかもしれませんね…。

大筋一緒でノンフィクション気味な台本とキャラが立ってる本人風味なキャラでの台本二つ作って打ち合わせで決めましょう。

この人はキャラ付け!とかでも映画ならありかも。』


人によってキャラ変えるはまあありかも?

映画だしその方が面白くなるかもね?

田中くんは楽しそうに電話切ったの。


☆ ☆ ☆

人数多いな!

駅前カラオケボックスのパーティルームに人が多い!

田中くんと北翔の人が3人。

承くん、宏介くん、青井くん。

私、千佳、伊勢さん。

…伊勢さんは当時は別クラスだったっけ。


でもなんかあの打ち上げを思い出す。

唯一楽しかったなって思える打ち上げ。

東光チームの承くん、青井くん、伊勢さんは…すっかり馴染んで3人組って感じ…。

千佳と私は笑っちゃう。

なんか不思議だよね?って。

そして監督の田中くんから説明が始まる。


田中『…って感じであの日々を映画にしたい!

基本、本人役で時代は高校一年生。』


まあ高2で中1は結構キツいもんね。

良いと思うな。


☆ ☆ ☆

あらすじ


舞台は中高一貫の私立高校。

中学からエスカレーターで進学した高校で前々から目を付けられてた陽キャに承くんがいじめられて…それを田中くん視点で傍観する。

承くんは宏介くんの助けもあり、いじめを撃退!

…そして抵抗した承くんからいじめのターゲットは田中くんに移っていく。

田中くんは必死にいじめからの脱却を試みるけど上手くいかずに承くんを頼る。

…承くんは最初断るが…好きな委員長(私!)のためにいじめとの対決を決意する…!

承くんと青井くんの対決が山場になるよね。

そして青井くんの自供で学校からいじめは無くなる。


そんなお話し。


☆ ☆ ☆

あらすじが配られ読み耽るみんな。

表情はさまざまで、承くんは照れてるし、宏介くんは無表情、青井くんは青ざめてる…千佳良いの?千佳は青井くんの背中を撫でている…。

いまだに青井くんはこの頃の事を恥じていると聞いた。

…向き合う為なのかな?


仮名だけど香椎(仮)とか立花(仮)とか田中(仮性)って書いてあって田中くんが真っ赤になって訂正していた。タイプミス位あるよね?


一通り読んだところで田中くんが皆に聞く、


田中『ちょっと本人役恥ずかしくって無理!とか言う人居るかな?』


承くん恥ずかしそうに顔を赤らめている。


承『…俺役…恥ずかしいセリフ多くない?』


田中『史実通りだよ!見返したもん!

で、もし恥ずかしいようならキャラを少しコミカル?な役にアレンジしてそれを演じるってのもアリだと思うんだ。

例えば小幡さんをもっと腐女子強調して男同士に萌えまくる!みたいなキャラ付けしたり?』


千佳はクールに前髪をかき上げながら、


千佳『原型が無いじゃない…!』


承くんと青井くんがツッコミしたそうな顔してるよ!

なんか久しぶり同窓会みたいな雰囲気で楽しいんだけど本題からズレがち。

アレンジキャラは一旦棚上げにして、重要な話があるのね。


田中『いじめっ子…青井くんが実行犯だけど…主犯…

…本人役なら外町くんキャスト出来れば良かったんだけど…。』


田中くん本人に申し込んだらしいの!断られたそうだけど。

直接悪役は青井くんだけど外町くん役は重要だと思うな…。

…でも意外とあっさり決定したの。


小幡『私がするわ。

悪役っぽいキャラでしょ?航とコンビで最後の文化祭出し物で優勝とったんだからね!

今回も玲奈と承くんコンビには負けないよ!』


ニヤッと千佳が微笑む。

青井くんがハッとした顔。

…千佳…青井くんのフォローも考えて…。

良い彼女だね?私は嬉しくなっちゃう。

そしたら私の親友役が空く訳だけど…


千佳『…だからね、玲奈の親友役…成実にお願いしたいかな。』


成実『…いいけど…。』

『…うん。』


…後で気付いた、千佳は伊勢さんと私の間をとり持ちたかったんだって。

昔ケンカ別れしちゃった私と伊勢さん。

この頃は流石に険悪では無いけれどもまだちょっとギクシャクしてた。

…時間が経ってたから話しは出来るようになっていたんだけどね。


…なんか楽しみになってきた!

細部を田中くんたちと相談しながらああだ!こうだ!って話しあう!


ロケ予定地なんだけど校内シーンは北翔高校。制服も北翔高校の制服を借りれるらしく、タイだけオリジナル。町内を走るシーンや決闘の河川敷公園は新川町で撮影。

一週間で撮り切る!お盆ごろで申請してあるって。


田中『最後にさっき言ってたアレンジキャラだけど…一部は結構自信があってね?

個性が強い方がコミカルだったりキャラが強調されたりして…

例えば…香椎さん?』


え?!私??

…一応私今回ヒロイン的な立ち位置で…?

私個性無い?!


田中くんは私を上からしたまで見て…


田中『大変結構…結構過ぎる気もするんですよ。』


自分で言うのもなんだけど!

ヒロイン力高いよ!

その…ルックス的にも…動きが強調されやすい手足の長さも、声質も通りやすいし、中学生の頃より…その…セクシーになってきたよ!

何が不満なの!


田中『パンチが欲しいなぁって…例えばなんですが…最後のあたりを…。』


皆んなペラペラページをめくる。

…そこには…



『香椎玲奈アレンジ


仮名 キャシー レイナ

アメリカ帰りの金髪爆乳JKでラテン系のノリですぐ踊り出す。

陽気で大概の事は踊って笑えば忘れられるノー天気な娘。』


横に居た伊勢さんが崩れ落ちた!


伊勢『あははははっはあはは!!!

ひーっ!ひーっ!おなか!おなか痛いよぅ!

香椎玲奈が…キャシーレイナって…!

ね?いいの?このままじゃあんたキャシーレイナ役だよぉ!』


伊勢さんは短めスカートで下着見えてる…で笑い転げ過ぎてお腹抑えて痙攣し始めた…笑いすぎ…!

田中くん!覗かない!


『絶対いや。』


一演者に徹しようと思ってけど…


『(ダメだ…コレ早くなんとかしないと…。』


側の千佳…千佳もお腹抑えて痙攣してた。

青井くんが上着を千佳のお尻を隠すように掛けていたよ。


承くんは自分のアレンジキャラが、


高橋 紹運ショウウン…武将のような漢。度量寛大にして高義真実の士なり。


ってコメントに目を輝かせてる!


承『きっと立花宗茂の実父の高橋紹運がモデルなんだ!立花と関連付けて!』


承くん?!なんで気に入ってるの?!

このままじゃ金髪アメリカ娘と戦国時代の武将のラブコメ始まっちゃうよ!


『田中くん、この台本は没収します。』


田中『なぜ…?!』


承くんが田中くんの肩を叩いて、


承『香椎さんの没収は帰って来ないと思った方が良いよ。

…諦めて次頑張って。』


…キャシーレイナなんて絶対イヤ!

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