第449話 料理勝負in俺カレ

始まる前に景虎さんはコンロの使い方や食材の場所、何があるか何が欲しいか松ちゃんに聞いてる。

松ちゃんはボソボソ大根やポン酢、一味唐辛子とか答えてる…。

知らない台所って使いにくいもんね。

景虎さん意外と説明丁寧。松ちゃんが頷いて借りたエプロンを身につけて準備を始める。

景虎さんは普段使わないコック帽に首元にスカーフまで巻いてるよ!


先輩たちと雑談しながら待つこと20分後。


景虎『シャリアピンソースハンバーグ!』

新二『おろしポン酢ピリ辛ハンバーグ。』



ジャッジは女子大生バイトのふたり。


女子『うん!美味し!』

女子『こっちもあっさりだけどうっま!』


勧められて俺も頂く…。


『…どっちも美味い…。』


景虎さんは当たり前として松ちゃんすげぇ。

景虎さんは少しがっかりしながら、


景虎『食べるなり泣き出したり、舌の上でしゃっきりぽん!とか美味いぞぉ!!とか光ったりしねえの?』


『できる訳ない。』


グルメ漫画の読みすぎだよ!


そして審査発表。

ふたりは小声で相談して…


女子『景虎さんの方が美味しかったです。

玉ねぎが香ばしくってほんのり苦味と爽やかさと甘味が最高。

おろしポン酢一味もあっさりでピリっとしてて美味しかったんだけどね?

あっさり感はポン酢の方が上だったけど旨みがシャリアピンの方がすごい!』


景虎さんはコック帽を外して一礼。


新二『…。』


松ちゃん悔しそう…。


景虎『まあ?俺は毎日ハンバーグ作ってるしぃ?

お前のも美味いけどな。

やっぱ俺のハンバーグさいこう♪』


新二『本職じゃねえか。

くっそ!客だぞ?敬語で話せ!』


景虎『もう営業終了後ですぅ〜!

お会計も済んでるしお客じゃ無くてうちのバイトの承の友達ですぅ〜!』


煽り景虎さんは大人気なくってコミカル。

ねえねえ悔しい?大丈夫〜?泣かないでね?って煽り散らかす40代…!


新二『はあ?はああ?

お前って呼ぶな!くっそ!』


景虎『お前なんて30手間の若造でしょ?

俺なんて40オーバーの歴としたおっさんだからね?』


歴としたおっさんが大人気ないことするな…!


この後、景虎さんはシャリアピンハンバーグの説明を初めて、玉ねぎの甘味と赤ワインのコク、しょうゆと砂糖のうま味が良く合うんだって話を聞きながら俺は残ったハンバーグでご飯をもりもり食べた。


景虎『俺勝ったから?

お前を松って呼ぶな!』


新二『は?松?』


景虎『松!いいから!ハンバーグの説明!』


松ちゃんはしぶしぶ説明を始める。

あっさりでおろしを思いついたけどここのメニューにあったなって思い直しておろしにポン酢に醤油、砂糖、少し出汁を加えてさっぱり美味しく仕上げたこと。アクセントに一味を加えたらさらに旨くなるって思って足した事を説明。…なるほど。

これもまたご飯がすすむ…!

景虎さんは頷きながら、


景虎『あっさりって課題にとらわれすぎたな?

あっさりかつ+α。

それが勝負の分かれ目だった。

課題は課題。

…でも最後は美味さが勝負をわけた。でも松の美味いじゃん!』


ゲラゲラ笑ってる景虎さんに悔しそうな松ちゃんにハラハラ。

景虎さんは松ちゃんハンバーグをむしゃむしゃ食べながら、


景虎『うめぇ。』


松ちゃんも景虎さんハンバーグを食べて、


新二『…結構うまい…。』


景虎『…こいつ可愛くねぇなぁ。』


そう言って景虎さんは笑った。

俺は二つのハンバーグの残りでご飯を頂いた!美味い!


…ちなみに家に帰った後、景虎さんは奥さんに怒られたらしい。

次の日のバイトでそんな話をした。


景虎『料理バトルしてみたかったんだよ!』


景虎さんは俺の知ってる大人で1番懐が深くて1番童心を持ち続けている。


☆ ☆ ☆

料理勝負後の帰り道。

自転車が松ちゃん家にあるので松ちゃん家まで松ちゃんカーで帰る。

車内で、


新二『承、さっきの勝負お前はどっち?』


ごく。難しい問い。

俺は躊躇ったけど、正直に言うことにした。


承『…景虎さんのシャリアピンの方がちょっと旨いと思う。

あっさりさなら松ちゃんだけど…あれはご飯3杯いける。』


松ちゃんは少しイラっとしながらも、


新二『…俺もそう思った。

向こうは本職でさ!毎日ハンバーグ作っててさ?

俺がちょっと口悪いくらいで大人気ない!

大体さ…!』


松ちゃんは車内でグチグチ景虎さんの悪口を言いまくる。


新二『俺を松!って!何様だよ!

…でも…ちょっと。ちょっとだけ面白かった。


…あと、承が俺に媚び売って俺のが美味いって言わなくって良かった…。』


…どうやら正解だったらしい。

俺は弟として松ちゃんに寄り添うつもり。

だから機嫌取りみたいなおべっかや追従なんてやらないしそもそも出来やしない。


新二『…もう一回勝負するわ。

勝たなきゃ気がすまない!』


松ちゃんは俺カレ気に入ったのかな?

来週また行く!って宣言して運転する顔は少し笑ってて…

俺は景虎さんに会わせて良かったなぁって安堵した。



☆ ☆ ☆

家に戻ると23:45。

シャワー浴びて部屋に戻ると望はまだ起きていて。


望『兄ちゃんおかえり!兄ちゃん!』


…ケンカして仲直り以降望は距離が近い。

反動なんだろうけど…近い近い!


望『兄ちゃん♪兄ちゃん♪今日はどうだった?』


もうすぐ近県を勝ち上がった猛者たちとの地方大会が始まるんだろ?

言ったって聞きやしない。

俺は今日の出来事を少し話しつつ望の話しを聞いてやる。

大体望が話したいんだよね。

でも、今日は…。


望『え?それで松ちゃんと景虎さんが料理バトル?!

何それ!熱い!それでそれで!』


今日は俺の話しに食いつく。

俺は俺カレでの出来事を語る。


『…それで松ちゃんのおろしポン酢ハンバーグ一味がけもあっさり旨くてご飯2杯いけて。

でも景虎さんのシャリアピンハンバーグは炒めたみじん切り玉ねぎと赤ワイン、醤油、砂糖の甘味と苦味と旨みが折り重なってご飯3杯いけちゃって…。』


向こうのベッドから望が目を爛々とさせながら…ヨダレ垂らしそうな口元でこっちを恨めしそうに見ている…。


望『…比喩表現だよね?

ご飯2杯とか3杯とか?』


翔『そりゃそうだよ。

その直前にハンバーグカレー大盛り食べてるんだぞ?

兄ちゃんは2人のハンバーグでご飯2杯だけ食べた。』


望『飯テロだよぉ!

この時間にハンバーグカレーや詳細な2種類のあっさりハンバーグの解説!

しかもご飯2杯食べながら味わい比べてるなんてぇ!

私は大会前でちょっと絞ってるのにぃ!!』


望にめっちゃ怒られた。

ハンバーグ、カレー、ご飯、どれもが望の食欲を煽ったらしい。


望『大会終わったら!絶対俺カレ奢ってよね!

制限無しの盛り盛りだよぉ!ひーちゃんと行くから!』


日付が変わる頃に妹は涙目で俺に奢りを約束させた。

ちゃっかりしてるんだこいつ…。



望『…おろしぽんず…しゃりあぴん…

…はんばーぐぅ…ぐぅ。


…むにゃむにゃもう食べられないよぉ…。』


これが花も恥じらう女子中学生!15の娘の寝言だよ?

俺はなんか安心しながら眠りについた。

こう見えても妹も俺を癒す。

調子乗るから絶対言わないけど!

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