第442話 人には添うてみよとは言うけれど…【side鶴田舞】

私の社会人生活も二年目の終わり頃だった。

仕事にも慣れて順風満帆!…とは行かなくて。

元カレがどうやったのか私の家を突き止めた…!

すっかり元カレがストーカーに進化して困りきってた頃、紐田先輩は私の相談に乗ってくれた。

去年からずっとアプローチしてくれてて、今年の新卒の娘には目もくれず続くアプローチにほだされかけてたのもあったのね。


…紐田先輩は陽気なイケメン。

ちょっとうっかりで女好きって評判だけど…私には優しい…♪

『舞ちゃんが心配!』そう言ってくれる紐田先輩が毎日送り迎えしてくれて…ある日ついに人通り少ない夜の公園で元カレと出くわした!

元カレと紐田先輩は揉み合いになり、


紐田『舞ちゃんは俺の彼女だ!もう二度と顔出すな!』


そう言って元カレを殴りつけた!


暴力なんて大嫌いなんだけどキュン♡て来た。

もう一度俺の彼女だ!ってそう言って私を抱き寄せ、

キスをした…!

…そして、服の中に手を入れて胸を…!

ダメ!そこまで許してない…!


元カレ『…。』


元カレは魂抜けた顔で去っていき、以後二度と会う事は無かった…。


私の家に移動する。

先輩は揉み合いになって顔が腫れ、服も一部裂けてた。

私は急いで濡れタオルで拭いて消毒する!


紐田『痛って!』


『もう!無茶するからですよ?』


紐田『無茶くらいするさ!

…愛してるんだから…。』


『…せんぱい…。』


…もうムードは出来てた。

先輩は手慣れた様子で私にキスをして…

元カレと違うキス…そっと啄むキスからだんだん情熱的な大人キス…、


彼女にしてほしい…そう思っちゃってたし、今日の勇姿を見たら…もう紐田先輩しか考えられない…!

でも、今日すぐに結ばれるのは…身体を許すのは違うわよね…頭の端っこで私のモラルが警告する。


紐田先輩が私の服をするするって脱がす…


『ダメです。』


私が手を抑える、

紐田先輩は抑えた手にキスしてブラウスボタンをするりと外す…。


『ダメ…。』


紐田先輩は私のブラウスをしゅるって脱がしてブラのホックを一回で外す、手慣れてる…!

そして…私の胸がポロンって溢れ出るのを見て嬉しそうに、


紐田『やっぱ思ったとおり大きいね。』


私は胸を隠そうとして紐田先輩に止められる。


『…だめ。』


紐田『…可愛いよ舞…ずっと好きだった愛してる!』


強い瞳、さっき付いたであろう顔のあざ。

…先輩は私の乳房の先端に…!



『…あぁ…だめぇ…♡』


その日のうちに先輩と結ばれた…。



☆ ☆ ☆

昨日の出来事をオブラートに包み、勿論肉体関係の話などおくびにも出さずにランチ時に紐田先輩の勇姿を私は語る!

女社会での立ち回りには慣れないし独特のルールもある。

うちは割とドライなタイプでドロドロはして無かったんだけど…。


先輩女子『…紐田な…紐田は…オススメしない…。

よく考えてね?つるたん。』


つるたんは止めてください…


紐田先輩の同期の女子社員はそう言った。

でも紐田先輩守ってくれたんです!

…そのあと…すっごい愛してくれましたし…♡


先輩『人間性…まで言うと言い過ぎかもしんないけど…仕事ぶり見てみて?』


…私は浮かれていたんだね。

もう社会人生活も二年が過ぎる、24歳の大人の女性そういう自負があった。

自分の目で見て選んだんだって確固たる自信があったから先輩の忠告を全く気にしなかったのよね。


☆ ☆ ☆

恋人生活は順調で会社には社内恋愛って言いづらいから秘密の交際。

でも秘密ってことがまたスパイスになり恋愛は火がつくばかり。

目配せしたり、ちょっとの時間に会ったり楽しく刺激的な日々。

紐田先輩は…その…結構えっちい人で…毎日のように私の家に寄って…

私を求めて来たのね…私も喜んで応じてた…♡


…その…色んなことも教えられ、元カレとはしなかったこともして♡

すっかり夢中になってた頃…。


『…生理が来ない?』


おかしい…?

毎回避妊はしてるはず…もちろん完全とはいかないとは聞いてるし…。

社会人三年目になり、仕事も恋も楽しくて夢中な日々を妊娠って人生の一大事が塗りつぶす。


紐田『…そっか…責任は取るよ。』


紐田先輩は残念そうに言った…。

ん?そのテンション?


会社に報告してまだ三年目なのに産休取るのは申し訳ない…って私は思った。

彼は…三年目で産休なんて会社に悪い!

俺が養う!舞は退社して家庭に収まってくれ!って言われたのね。


おかしい?

私は初めて紐田先輩に疑問を持った…

でも脳みそお花畑だったからそっか!愛しい旦那さんと愛の結晶の子供を私が支える良妻賢母!…頭真っピンクだったのよね…。



発表した日に先輩女子に呼び出されて過去にも一回後輩女子と出来ちゃった結婚しかけて紐田は完全に出世コース外されてるんだよ?って言われた。

…まじですか?


…引き止められたけど…彼のススメでもう退職願いは出してある…。

先輩の勧めで仕事ぶり見てみな?って言われて…

私と同じような仕事…うん?

彼は私より四年先輩…だったよね?

私も新入社員の頃より、私についた顧客案件が増えてて…

でも先輩たちは基本顧客案件がメイン仕事になっていて、エース級の先輩たとは顧客案件+プロジェクトみたいな仕事を抱えている…。


…彼は…紐田先輩は私が新入社員だった頃と同じ仕事…しかも…うっかりは多分本当のうっかり…。


先輩女子『ね?うちの会社的につるたんの方がむしろ戦力なんだよ?』


目の前が真っ暗になった…。

あぁ、実家にも報告しなきゃ?

私は実家に彼を連れて戻る…。


…色々忙しかったり舞い上がって報告が遅れたたのは私が悪い…。


父『お前が!娘を傷物に!』


この時代に父は逆行するように彼を殴りつけた!

ああ?!

彼はよろめいた後、父に殴り返す!やめて!


古風な両親だった。

その2人の娘の私も比較的古風で男女交際に厳しい方で24だけど2人としかお付き合いして来なかったし…経験ふたりだけ…

でもそんな娘が出来ちゃった結婚というのは両親にダメージを与えた。


父『こんな奴婿なんて認められない!』

紐田『舞帰るぞ!こんなくそ親父に認めて貰う必要ない!


父と彼は激しい喧嘩別れ。

自分が間に入って今すぐじゃなくっても橋渡ししなければ…母にもフォローをお願いしたい。



しかし母は…


母『…舞…舞が出来ちゃった結婚って…母さん辛い…。』


素直に祝福して貰えないのはショックだった。

県の名を冠した国立大でストレートで合格して大企業の就職した私は地元じゃちょっとした有名人。

…そんな娘が出来ちゃった結婚は両親には認められない事だった。



そうこうしててもお腹はどんどん大きくなる。

退社の日がやってきて、私が手が空き次第引っ越しの準備。

…結婚式は無い。

そんな暇も、貯金も無い。

…私はまあまあ貯金あったけど…彼はまったく貯金していなかった…。

新居の敷金礼金、引っ越し屋さん代金は私持ち。


最初は家事…掃除洗濯食事のお礼を言ってくれた彼は…妊娠末期大きくなったらお腹を抱えて動けない私にチクチク言うようになる。


紐田『セックス出来ないなんて…。』

  『飯作れないのかよ…。』

  『…いいよな、俺は毎日仕事仕事なのに。』


私だって仕事したかったよ!もっともっとあの会社で!

私にとって夢のような仕事時間は彼にとってタダの拘束時間らしく愚痴ばかり言うようになった。


…でも、いい事もあった。

泉が産まれた…!


娘。私のお腹に宿った奇跡。

私は夢中だった。


紐田『育休取ったから友達とキャンプ行ってくるわ!』


『行ってらっしゃい♪』


退社した会社は大企業らしく、育休が長い!

やっぱ復帰出来るように産休にして席残しておけばよかったなぁ…。



そんな事思ってたら街でばったり先輩女子に出会った!


先輩『…大丈夫?つるたん?』


『…今はひもたんですけど?』


先輩『紐田クビになって赤ちゃん産まれて人生大ピンチじゃん?』


『はああ?!』


その夜は大戦争だった!

罵りあう夫婦!飛び交うお皿!

…もうダメ!このあと何日経っても意見は合わないし思想が違いすぎる!


とりあえず彼の主張。


紐田『俺ばっか働くのは違わない?』

※自分が家庭に入れと…。

  『娘ばっかり…舞は変わった…。』

※変わらざるをえない。

  『プリンちゃんはそんな事言わない!』

※不倫発覚!殺すぞ☆

  『何回かどさくさに紛れて生でヤッたから妊娠しちゃった。もっと遊びたかった…。』

※自分にも責任はあるけどあんまりでしょ。

  『会社を辞めるように仕向けた件は…自分を追い越されるのが我慢できなかった。俺男だぜ?』

※このコメントのどこに男らしさが?


とにかく、産休は嘘で。

家族養うのがしんどくて不公平で働きたく無くて爆発しちゃった☆

顧客にやらかして責めた上司に逆ギレして退社票出して来た!

※退職願です。上司即受け取りました(笑)


全部垂れ流したあと、彼はキレ気味に言った!


『そんなに働くの好きなら!お前が働けって!

俺は家でゴロゴロゲームしてるから!

子供はお前が見ろよな!好きで産んだんだから!』


『好きで産んだんだから泉は私が見るわよ!

でもあんたは要らない。

離婚しよう?』


彼は縋り付いてきたけど最後はキレながら、


『元カレに住所教えたの俺だから!

会社にあいつ問い合わせしてきたんだよw

俺教えたの!そしたら!あっさりストーカーになって!

あとはトントン拍子!あっさりヤラせてくれて!バレないように生でしまくって!

なあ?どんな気持ち?これからずっと育てていく娘が大っ嫌いな元旦那の種って?

お前の寿退社直後、希望あれば復帰出来るけど書類出せ?ってクソ上司に言われたけど破って捨ててやった(笑)』


私は思ったより冷静だった…。

※冷静じゃ無いですw


台所にあった麺棒(綿棒では無い)で殴りつけて!

ダウンしたところで…その…金ちゃんをサッカーみたいに蹴ってやった!


紐田『アッー!』


…彼は救急車で運ばれた。

慰謝料から相殺になった…(笑)

短い結婚生活の負担のお金や養育費の問題は残ったが。


…紐田は徹底してこれから働かないし絶対払わない!って宣言してるし、私も取る気は無い。

もうあのクソにこれっぽっちも期待して無いし、会う気もない。

…でも泉に会わせてくれたことだけは感謝している。



☆ ☆ ☆

出来ちゃった結婚してすぐ離婚した私は腫れモノ扱いで実家に帰れない。

世界的感染症の流行、私自身の境遇の変化から友達に相談もなかなか出来ずにひとり煮詰まっていた頃、新二くんと再会して玲奈ちゃんに出会った。


玲奈ちゃんの勧めで、先輩女子に今の境遇を説明したら、


先輩女子『つるたん…そんな事に…。』


復職は叶わなかったが時間融通きくパート先紹介してもらった。

玲奈ちゃんが新二くんとお料理会してくれたり、古風な喫茶店とか本屋さん巡りに誘ってくれたり…。

玲奈ちゃんは煮詰まってた私の心を知性と優しさでフォローしてくれた。

…その玲奈ちゃんを…!

私は一時、玲奈ちゃんのそれとないおすすめで新二くん株急上昇だった…。

※玲奈の策略ですw


私!新二くんを許せそうにない!

※男見る目三敗目。



☆ ☆ ☆


新二『…この鶴田さんの元旦那…紐田?

調べといて?』


ごつい爺『はい坊ちゃん。』

※昔から松方家に使える初老の強面お爺。


子供の頃からの目付役の坊ちゃん呼びに苦笑する新二。


新二『坊ちゃんはやめろ、もう27だぞ?

そうだな…社長と呼べ。』


ごつい爺『社長と呼べば良いんですね?坊ちゃん?』


新二『…。』


☆ ☆ ☆

紐田くん逃げ切れるかなぁ?

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