第441話 一寸先は真っ暗闇【side鶴田舞】

レストランの個室、

愛人になってなんて不躾な要求をされた私は一瞬でキレちゃって目の前の松方くんを責め立てる。


『だいたい?なんで玲奈ちゃんと結婚して?私を愛人にって言ったの?』


松方くんは娘の泉をチラッと見ながら、


松方『君のこと…鶴田さんのこと高校の頃から良いなって思ってて…。

俺の愛人になれば今みたいにあくせく働かなくても泉ちゃんとずっと一緒に居れるんだよ?

俺はどっちも…ふたりとも側に居て欲しいんだ…。』


私史上これほど呆れる側に居て欲しいを聞いた事が無いわ!


私も娘の泉をチラッと見て少し教育上良くないか…と怒りを抑えようと思った…。

その表情にこの男は…!


新二『泉ちゃんだってママと一緒に居たいはずだろ?

…月に35万円、手当は出せる…!』


35万?!

私が商社でバリバリ働いてた時でも月24万位…今のパートだと17万円くらい…

ゴクリ。


お金の有り難み、大切さはシングルマザーになってから痛いほどよくわかってる。

松方くんは勝負どころと見て、


新二『…泉ちゃんのパパは…慰謝料も養育費も払って無いんだろ?

月35万あれば無理して働かなくても良い。泉ちゃんの側に居てあげられる。良い教育や習い事だってさせてあげられる。

…俺…鶴田さんが欲しいんだ…。』


松方くんの泣きそうな顔。

…相変わらず寂しい人なんだろうな…今も昔も本物を探し続けているのかな?

傍らの泉を見る。

すやすや眠る愛しい娘…ママはね…。



『ねえ?新二くん?』


新二『うん!』


私の新二くんって戻した呼び方に嬉しそう。

…玲奈ちゃんが私と新二くんを繋いでくれた。

久しぶりに再会した新二くんは腹違いの妹を連れてて…

その玲奈ちゃんは新二くんをよく理解してて全部褒めるでは無い、でも等身大の新二くんの良さをさりげなく私に教えてくれて…

そんな一面があったんだ?とか高校の頃もそうだったかも!みたいな感じでよく話したしロインしたの。

気づけば玲奈ちゃんを大好きになってた私は休日や放課後にも玲奈ちゃんと会う。

天月高校の制服に身を包む玲奈ちゃんはそりゃもう可憐で道ゆく同年代男子の視線を釘付け!

でもね、玲奈ちゃんには好きな男の子が居る。

その話する時頬を染めて恥ずかしそうにその男の子のことを語るの…

…それを…


『ねえ新二くん…。』


もう一回呼びかける。

もう一回同じように反応するこの男は期待に胸膨らませてる…。


『…私…お金欲しいよ…私だけなら要らないけど…泉のために必要。』


新二『そうでしょ?』


でも、人には曲げちゃいけないものがあるでしょ!!


『でも泉に何て言うの?

ママは愛人でその人は好きな男の子が居る女子高生を権力で奪い取った卑劣な男なのよ?って言うの?

そんな男の人を喜ばせるのがママの仕事って?

私をおもちゃにしたいのか憐れんでいるのか性の捌け口にしたいのかわからないけど!!』


松方『ちが!俺はただ側に居て欲しい…!』


『久しぶりに叱るね?

札束で人の尊厳引っ叩いて側に居て?

それじゃあ心は手に入らない。


私貴方の事が嫌いになった。

今までは決して嫌いじゃ無かったけど…もうダメ、無理。

もう二度と顔見たく無い!

泉行くよ!』


ねむねむな泉を抱き上げて、私はお店を後にする。

…少し良いって思った新二くん。

お金持ちってとこじゃ無くって…内気で人の距離感に悩んででも少し優しいとこがあった…何故あんな事が言えるのか…

私は男を見る目が無いらしい…。

泉を抱きながら歩く私は泉の血統上の父親の事を思い出していた…。

もう泉も2歳になる…彼とは全く会って居ない…。



☆ ☆ ☆

大学時代の四年で私は産まれて初めて彼氏ができたり、その彼と…初体験をしたり…。

勉強に注力しつつも普通の女子大生として暮らしていた。

家は一般家庭。でも国立大に現役で合格した私は町内ではちょっとした有名人らしく両親も誇らしげだった。



高校の頃の友達も自分の生活があるのか疎遠になって大学の友達や先輩後輩のコミュニティしか無い状態。

それでも大学時代は楽しく刺激が多くこの頃もまた青春!って感じだった。


私も就活の時期になった。

首尾よく県内でもトップクラスの大企業の内定を獲った私を周囲は大絶賛!

両親も誇らしげ!大学でも羨ましがられて私は得意だったの。


すると彼氏がその事をネチネチ言うようになった。

良いよな内定取れて…俺はまだなのに…

美人は得だな?

…お前が働いて俺が主夫やるよ!

私を綺麗、可愛いって褒めてくれた口が嫉妬と偏見の言葉しか吐かなくなる。

どんどんすれ違い私は彼氏と別れた。

産まれて初めての彼氏との別れは結構キツくて私が思ってたより弱い人間だって事をわからしめる。

1番わからないのが散々ディスっておきながら別れたく無いって言った彼氏の気持ち。


…彼は見事にストーカーになった…。

※男見る目一敗。


私は就職を機に一人暮らしを始めた。

自由で気が楽!

でも自分でなんでもしなきゃいけない!


新卒で入った総合商社の総合職。

端的に言うと営業がメインなんだけど、朝頼まれてた資料を作成してメールチェックしながら電話受けて、お昼食べたら外回りして夕方戻ったら契約書や見積書を作成して送付なりfaxなりメール送信なりで先方に送るって作業をこなして退社。

外国からも来るし国内での取引など夢中で過ごす毎日。

私はとある先輩に言い寄られていた…。



私より4歳上の陽気で少年のようなイケメンな紐田先輩。

…正直子供っぽい男の人は苦手だったんだけど…先輩はまだ仕事わからなかった私に丁寧に教えてくれながら、


紐田『いけねっ!本当にミスっちゃったw』


『もう!先輩ったら!』


私の緊張をほぐすようにミスってみたり?

紐田先輩お茶目だな…とか思ってた。

…でも私は初カレでしくじってて恋愛が億劫。

今は仕事が楽しいし?

先輩は女好きって噂もあったし私はアプローチを断り続けた。


でもね、私の元カレが私の家を調べてやって来るようになった時…紐田先輩が助けてくれた…。

私を守ってくれて…♡


私は紐田先輩の何度目かのアプローチを受け入れた。

…これが間違いだったのよ…。

※男見る目二敗目。


☆ ☆ ☆

ごめん3話必要になったw

暑くて体調崩れ気味です、皆様も気をつけてくださいな。

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