第437話 優奈の玲奈【side香椎優奈】
今、目の前では愛しの妹がへたるようにしゃがみ込んだ。
…長年ずっと気にしていた男の子から初めて誕生日プレゼントを貰ったから。
そう聞いたら人は驚くだろう。
なんせうちの妹は完璧女子の異名を持つ何でもできる女の子。
スペックだけなら私も負けない。
…でも玲奈は子供の頃から面倒見の良さって言うのかな?
損な性分でしなくても良い苦労を背負い込み余計な仕事をどんどん増やす仕事中毒な女の子。
綺麗で可愛くて…でも不自由な我が妹が子供の頃から唯一気にしていた男の子…それが目の前の立花承くん。
見た目はモブ…目な爽やか男子だけど性根は武将!って玲奈が惚れ込むこの見た目普通の男の子は今まであった中学生には難問のトラブルを解決して見せてまったく見返りを求めない変わった男の子。
…中学に卒業式で玲奈泣かした時は怒鳴り込んでやろうかと思ったけど…色々あって玲奈が婚約しちゃうってとんでも展開。
…その日玲奈が泣きながら私に語ったのは、
最後の思い出作ろう位の覚悟で精一杯の色仕掛けをしたのに見向きもせずに、『俺が何とかしてみせる!』
って熱い啖呵を切ったらしい。
高校生位ってやりたい盛りじゃない?
玲奈綺麗で可愛いし胸も大きくなってきたしすんごい美脚だよ?承くん無理してない?痩せ我慢でしょ!
…その痩せ我慢できない人の方が多い世の中だもん。
…玲奈の目は間違っていない。そう思ったよね。
その玲奈の蕩けた顔を見たくて私は承くんの後へ回り込む。
承くん視点が最高の玲奈を見えるポイントでしょ?
好きな男の子にどんな顔見せる?お姉ちゃんにも見せて♪
…それは思っていた数倍愛らしい我が妹の姿。へたり込んで両膝ついて力なくへたり込んだ姿は少し膝立ち正座みたいな座り方。
2年前まで私も来ていた天月のスカートがふわっと広がって綺麗な円を描いている。
胸元に両手で真っ赤な大輪の薔薇の花束を愛おしそうに抱きしめてる可憐な姿に承くんもうっとり。
膝を付いてるから上目遣いのうるうるな瞳、
興奮と感激で赤くなった頬に何か言いたくて言葉が出ない艶々の唇…完璧!
うちの妹可愛い!可愛いよぉ!!
パシャパシャパシャパシャ!!
連写しちゃった…!
玲奈は怒る姿もラブリー!
あはは!帰るよ!ちょっと寄るとこあるし!
後ろを付いて来る2人。
婚約者問題の解決していない以上これ以上の進展は望めない…。
でも、私も。
私もなんとかしてみせる!
承くんだけにやらせない!私だって玲奈を守りたい!
だからね、私は承くんを気に入っている。
玲奈の良さを外見だけでなく中身も見てくれて、玲奈を守る為になんでもするって言ってくれた承くんに同志…?姉弟?そんな絆を感じてる。
だから私も承くんに何かしてあげたい。
自然に強くそう思えた…。
☆ ☆ ☆
帰り道。
『ね?承くん?今日親御さんって家に居るかな?』
承くんは、え?って顔で、
『…母なら居るはずですけど?』
私はお願いする。
『ちょっとご挨拶に伺いたいんだけど…いい?』
後部座席で承くんにしなだれかかりそうな妹が満更でも無い声で、
『そんな!親族顔合わせにはまだ早いよぉ!』
玲奈?
…ダメだ…目が♡になってる…。
この娘承くんの初スーツと薔薇花束ですっかりばかになってる…!
『私は承くんママに新二くん家行って遅くなってる理由を私が雇用してアルバイトして貰ってるって説明してくるの。
…さっき承くんに聞いたんだけど妹ちゃんと多忙を理由にケンカしたらしいのね。
…玲奈の為に承くんが多忙なんでしょ?
人に言いたく無いじゃ済まないよ。
玲奈も来て妹ちゃんにこの件キチンと説明して来なさい。』
…こうして立花家へ緊急訪問することになった…
少し前から考えていたことなんだけどね。
…玲奈の為に奔走する承くんに少しでも返したい。
スーツ購入もそうだし、バイト代も払うつもり。
立花家に到着。
ごめんね、夕食時に。
『夜分にすいません。
私、香椎玲奈の姉でこういう者です…。』
深くお辞儀して承くんママに名刺を手渡す。
『まあ!玲奈ちゃんの?綺麗ねー!妹さんとそっくり!』
よく言われますっ♪
私は先日、ペーパーカンパニーながら会社を起こした。
その名刺を手渡し、最近承くんが遅くなっている理由を手短に説明する。
『まあ!引きこもりの成人男性のケアやお世話の?
…社会的にも有意義なお仕事なのねー!』
『…最近は引きこもりやニートが社会問題になっていて…』
…全くの嘘では無いの。
こうゆうモデルの事業ちょっと検討しているのよね。
…引きこもりやニートに頭を悩ませる両親の話しをよく聞いてて…
無理やり部屋から引っ張り出して就職するまで絶対に帰れない施設とかどうかな?脛を齧られるお金で強制的に自立させる施設とか!
超スパルタで海軍式とかで。
話しがズレた。
『その最初のモデルで承くんをアルバイトで試用させて頂いています。
伺うのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
それに伴ってスーツの支給と賃金が…。』
…私は承くんママにそういった事情で、
クライアントからの急な呼び出し、遅くなる事があることなど謝りながら説明した。
承くんママはだから最近遅い日が増えたのねって納得してくれた。
…これで私の仕事はおしまい!
承くんの部屋へ通して貰って、
『玲奈!私先に帰るね!
帰り…夜だから承くん送って貰えるかな?』
『うん!』
承くんより先に玲奈が嬉しそうに返事した…。
この恋愛脳娘は…。
最後に妹のふたりきりタイムをお膳立てして私は車で一足先に家へ帰る。
駐車場に車を止めて、何の気無しに今日の写真フォルダを眺める。
…玲奈が真っ赤な薔薇を胸元で抱く写真を見つめる…。
その時フッと思い浮かぶ。
数年後…5年〜10年?もうちょっとだけ大人になってまさに女性として最盛期を迎える玲奈。
レースをふんだんにあしらった真っ白なウェディングドレスに身を包み、光沢のある透けるヴェールを被り、やはり真っ赤な薔薇のブーケを愛おしそうに胸に抱く玲奈の姿が見えた…。
私きっと泣いちゃうな…。
今は私だけの玲奈だけど…。
※違います。
いすれ玲奈は嫁いでいく。
きっと真っ赤な薔薇を誕生日プレゼントにくれたお気に入りの男の子の元に。
私の勘は当たるのよね。
今しか愛でられない玲奈を…全力の愛で愛でよう!!
☆ ☆ ☆
それからしばらくして玲奈は帰宅。
『今日一緒に寝よう?
スーツにプレゼントのお膳立てに2人きりの帰り道に私今日頑張ったじゃん!誕生日プレゼントだって!』
私の玲奈!
『それ!見られたよう!!』
玲奈は真っ赤になっちゃってラブリー!!
『え?!アレ見られたの?!
どうだった?』
『…言えない…!』
あんなに!尽力アンドサポートしたのに玲奈は同衾拒否!!
お姉ちゃん悲しい!!
☆ ☆ ☆
承がプレゼント買ってたころ玲奈はいったい何を買ったのか?
何故今夜は一緒に寝れないのか?
ヒント 没収したブツ(笑)
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