第434話 彼の初スーツ【side香椎玲奈】

7/7誕生日、私は17歳になった。

今日、インターハイ予選県大会シングルスで優勝!


でもそれより承くんに会えるよ!!


そのワクワクは私を昂らせる!

…承くんは…婚約発覚以降連絡は最低限かつ定型文みたいな文章でしかくれない。

…昨日松ちゃんのところで…

って松ちゃんって呼んでる。

なんだか思っていたより仲良くやれているのかな?と思っちゃいそうだけど承くん視点だからなんとも言えない。


一度新二くんに会った時に確認したいんだけれども…婚約者って間柄で会うのを承くんに見られたくはないんだよ。

私のせいで承くんはしなくて良い苦労と労働をしていると思うと申し訳無さでいっぱい。なんか返せたら良いのにな…。


そこに!お姉ちゃんのところに!

承くんからの相談!

なんでもドレスコードあるとこへ行くらしくってスーツが必要なんだって!

取引の末に私も同行する事に…!


午後の決勝が終わって一度高校に戻る。

16:00集合だから時間がある。

シャワー浴びて軽くメイクも直して万全でお姉ちゃんと合流!


『玲奈?テニスウェアでなくて良いの?』


『ターミナル駅で待ち合わせなのにテニスウェアはおかしいでしょ?』


お姉ちゃんはニマニマしながら、


『だって!テニスウェアの方がスカート短くて、腕も剥き出しで絶対男ウケ良いでしょ?承くんだって男の子!健康的な色気に弱いはず!』


なんと!?

…いやいや冷静になれ玲奈!TPOへ配慮しなきゃ!


『いやいや、ターミナル駅でテニスウェアはやっぱりおかしいよ!』


お姉ちゃんはチッて舌打ちして、


『流石にだまされないかー!』


って!私をその気にさせて遊ぼうとしたね?

お姉ちゃんの車の中で話す事10分。



承くん!承くんだよ!

白い半袖ワイシャツにエンジのタイ、グレーのスラックス!

東光の夏服姿!こうして見ると色味が北翔の制服と似てる。

タイの色が違うけど。

承くんはキョロキョロしてる!可愛い♡



ぷっぷー!!!


お姉ちゃん!迷惑!駅前で!


『ごめーん?お姉ちゃん免許取り立てだからよくわかんなくってー♪』


てへぺろ♪じゃないよ!

その音で承くんは気付いた!


『優奈さん…香椎さんも?

今日はすいません…。』


お姉ちゃんはうんうん!乗って!

って承くんを促し、助手席に乗せる…?

はあ?



『…お姉ちゃん…?』


『いや?今日は私と承くんスーツショッピングでさぁ?

玲奈はオマケでしょ?いいや?』


そうだよ!お姉ちゃんは優奈さんで…私は香椎さん…!

お姉ちゃんだって香椎さんでしょ!


承くんは申し訳無さそうに、


『松ちゃんを逆撫でしたり信頼を損なうような真似は出来ないよ。』


ぐぬぬ…!


ターミナル駅でも買い物出来るけど天月の生徒とかに見られると面倒だからバスターミナル付近のショッピングエリアでスーツを見る事になった。

お姉ちゃんの車で5分ほど。

…前に望ちゃんのテニスラケットとか買いに行ったね?

そう言えば!望ちゃん県を制したね!そうなの!


…承くんはシスコンなので望ちゃんの話題に食いつく。

ひーちゃんでも可。


望ちゃんの地方大会、ひーちゃんの絵本の話をするとあっという間にバスターミナル。

もっと話していたいよー!


『立体駐車場って…ブレーキとアクセル踏み間違えたらどうなるのかしらね?』


『お姉ちゃん?冗談でもやめて?』


六階のフェンス際スペース駐車中に言う冗談では無い。

私たちは早速ショッピングエリアへ移動する。


『承くん。美人姉妹連れ歩いて今どんな気持ち?』

『お姉ちゃん?なんで煽り口調なの?』


『油断するとお二人ともナンパされそうなので気が抜けない…。』


…修学旅行や2月のバレンタインデートでナンパから守ってくれたよね…♪


3人で話しながらスーツ売り場へ到着する。

大きいチェーン店では無く県内では有名なお店の本店。

広い売り場にオーダーメイド、セミオーダー、吊るし売り色んなタイプを扱っていて店員さんも多い。


お姉ちゃんは軽く、


『私も詳しく無いんだけどね?

春秋用、夏、冬で生地が違うの。

ドレスコードは…正直よほどでなければ引っ掛からないと思うから?

ペラペラの変なスーツじゃなきゃ大丈夫だと思うよ?』


承くんは少し驚いて、


『そっか!季節!考えて無かった…!

そうですよね?暑い寒い時期…あるもんね?』


私に、ね?って同意を求める。

制服だってそうだよなって1人で呟くとお姉ちゃんにどんなのが良いと思います?って尋ねた。

…ぷー。私は不満だなぁ。


お姉ちゃんはうーんって言いながら、


『玲奈の方がセンスは良いのよね?

お姉ちゃんちょっと参考資料が必要で本屋さん行くから?

玲奈おねがいね!』


『!!

うん♪』


お姉ちゃんはあ!って振り返り、承くんの手を取って、



『承くん、うちの事で…うちの玲奈の事で本当にごめんね、そしてありがとう。

これは承くんが玲奈の為に動いてくれてる必要経費。

正当な業務の経費なの。

だから今日、2着私に…私たち姉妹に贈らせてちょうだい。』


承くんは慌てて固辞した。

お姉ちゃんは粘り強く本来承くんがする必要のない苦労な事。

それで玲奈が救われたってお礼を言って、


『いずれスーツは必要になる。

だからお礼に贈らせて?私たちのせめてもの気持ち!

どうしても受け取れない?』


承くんは申し訳無さそうにやっと頷いてくれた。


店員さんの挨拶を聞き流し、少し2人で見せてくださいって伝える…。




ドキドキする…。


スーツ買いに行くって夫婦っぽくない?

承くんは少し上気した顔で、



『なんか大人!って感じする…!』


『わかるよ!大人になったらこれを着て毎日お仕事行くんだね?』


『想像つかないw』


いつか…承くんがスーツを着て仕事へ行く時…私が見送って…ふふー!

いい!すごく良い!


『昨日お姉ちゃんとネット見ながら調べたんだけど…

初心者はネイビーとかグレーが良いらしいね?』


『なるほど…。』


とりあえず、セミオーダー辺りで試着してみるよ!

土曜日必要で今日が火曜日だから3日〜4日で出来上がらないと間に合わない。

ここは3日で大丈夫とのこと。

色々話しながらスーツを選ぶの楽しいっ♪

こういうの!こういうのが欲しかったの!


この為に今日は革靴で着てもらった。

制服の白ワイシャツはそのままに私がチョイスした2着を着て貰う。


承くんは照れながら、


『…どうかな?』


パシャ!!


『香椎さん?』


『ごめん!つい!』


私はノータイムで写真を撮った。

…私もお姉ちゃんと同じ血が流れているよ…!


『で、どうかな?』

『格好良いよ!

初めてスーツ姿見たけど…大人っぽくてでもまだ少年らしさも残してて…

良い意味でアンバランスさを感じる!

寒色のネイビーだけど承くんの健康的な日焼けした肌色が少し黒目に出てしまう感じだけど…爽やかでフレッシュな新成人ぽい新鮮な格好良さがあるね!

印象はネクタイの色でコントロールできるけどそこはグレーの方が何でも合うカラーかもしれないね!

承くん結構細マッチョだからスーツ似合う!肩のラインとかすごくイイよ!』



…承くん?承くんが真っ赤になって照れてる…!


『びっくりした…香椎さんが急に長セリフをまったく噛まずに…!』


私としたことが!

私は舞い上がってそれを承くんに指摘されて…

恥ずかしいよ!耳まで真っ赤になった私を見て、


『褒めてくれて…ありがとう…なんか恥ずかしいね?』


2人して真っ赤になって俯いちゃって…店員のお姉さんだけは私たちを見てクスクス微笑んでいたの。

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