第431話 兄ちゃんは躊躇わない【side立花望】
夕日に向かって走れ!
親友sと走り出したあたしはあっ!って思った瞬間びたーん!!って地面に叩きつけられる!
『にゅあ!!』
よくわからない声が出て受け身ギリ間に合ったけどマジ痛った!
折角のお気に入りのウェア…薄紫のテニスドレス…あたしの一張羅…!
芹『もう!気をつけて!大会中でしょ!』
芹ママがあたしを起こして親友sが砂など払ってくれる。
緑『ほら膝擦りむいて…!』
きい『スカート砂だらけだよ!』
茜『胸元…!は接地しなかったみないだね…良かった。』
『ふぁっく。』
胸が無いから胸元が汚れなかったって言うの?!
良く見てよぉ!胸痛い!胸砂だらけじゃ無い?
悪態付いて立ち上がり足元を見ると…。
シューズが…兄ちゃんに買って貰ったお気に入りのシューズが!
利き足の右が…靴底が剥がれて…ぱかぱか…!
兄『望!大丈夫か?!怪我は?』
『大げさだよぉ。』
兄ちゃんはホッとした顔であたしを上から下まで眺めると、
兄『足擦りむいてるじゃないか!
…あれ?靴?』
あ…あ…!
あたしはコレを買って貰った時の嬉しさと感動を思い出す。
コレを買う為に兄ちゃんが何ヶ月も貯めてくれてた事も。
あたしはラケットも靴もウェアもそれは大事に使ってた…。
…でもあたしはその必死にバイトして兄ちゃんの目の前でウェアを汚し、靴を壊した…!
『あっ…あっ…あのね?あのね?
あたし靴大事にしてて…ウェアもお気に入りで…。
…兄ちゃん…。』
あたしは頑張って買ってくれた兄ちゃんの目の前で兄ちゃんの努力の結晶を汚して壊した…。
まるで大事にしていないと思われたんじゃないか?ケンカしてたから粗末に扱ったからこんなに汚れて壊したって誤解させたんじゃ無いか?!
…ここ数日のあたしに態度が脳裏に浮かぶよ…。
五月蝿くてワガママで邪魔な妹…兄ちゃんだって忙しいのに自分の都合を押し付けたウザい妹なんじゃないかな?
そう思われてるんじゃない?
兄ちゃん!そうじゃ無いんだよ!頭ばっかり回って言葉が出ない!
回る頭はどんどんあたしがワガママで兄ちゃんに見放される未来ばかりピックアップする。
そう思うと涙がじわって出てくる。
ダメ!泣くより謝るなり大事に使ってる事話さなきゃ!
兄ちゃんが買ってくれたラケットもウェアもジャージもシューズも超気に入ってて大事に使ってるんだよ!って…!
しゃがんで靴底が剥がれてぱかぱかの靴をまじまじ見つめる兄ちゃんになんて言えば良い?
気づけばあたしは涙がぽろぽろ。
親友sが察した!
緑『あの!お兄さん!望はお兄さんの買ってくれたシューズやウェアとかすっごい大事に使ってて…!』
きい『うん!いつも買って貰った時のこと私たちに自慢げに話すんです!
本当に宝物みたいにっ!』
茜『承くん望の話し聞いてあげてっ!』
芹『本当に望ちゃんは…大事に大事に使ってたんですよ?
本当です!』
兄ちゃんは不思議そうに親友sを見渡しながら、
兄『なんか怒ってるって思われてる?
…いやシューズの減り見て望練習したんだなって思ったんだ…。
頑張ったな。』
そう言ってあたしの頭を大きな暖かい手のひらで撫でてくれる…。
兄ちゃんは湿度とか使い方でシューズってそうゆう事あるんだよなって呟いて兄ちゃんもこないだバッシュでなったんだよって笑いながら話してた。
あたしは兄ちゃんが怒ってるんじゃないか?ここ数日の険悪なムードであたしを嫌いになったんじゃないか?って恐れたけど兄ちゃんはそんな事気にしていなかった。…シスコンなだけかもだけど。
芹が真面目な顔で望は替えのシューズ無いよね?って確認してきた。
無いです。
芹は少し慌てて、
芹『…もう夕方。
急いで靴補修のお店で専用の接着剤で補修して貰えば!』
緑『…でも…接着剤って数日置いた方が良く無い?』
きい『そう聞くよね?』
茜『…新しいの買えば?』
…あたし財布に二千円しか入って無いけど…?
芹も緑もきいも茜もたいして持ってはいない。
服買いに来たならまだしもテニスの大会に来ただけだもん。
安いので数千円から高いのだと数万円まであるけど…すぐには出せない。
兄『俺が出すよ。』
兄ちゃん?兄ちゃんだって普段財布に一万円以上滅多に入ってなく無い?
兄ちゃんは財布から5千円を取り出したあと…内ポケットからもう一万円取り出した…!
兄『芹ちゃん、みんな悪いんだけどこのままターミナル駅でしょ?
帰りに望のシューズ見てやってくれない?』
芹たちは大きく頷いた、
望『兄ちゃんは?兄ちゃんは見てくれないの?』
兄ちゃんに選んで欲しい!
兄ちゃんは恥ずかしそうに、
兄『時間出来たからって勢いで自転車でここまで来てしまったから1時間かけて新川まで自転車漕いで帰らなきゃならない。
同じテニス部の目線で見て貰った方が良い!帰ったら見せてな?
釣りは要らないからもし余ったらクレープでも食って帰れ。』
そう言って兄ちゃんは自転車で颯爽と帰って行った…。
一応まだテニス部で行動中の為、先生に事情を話しあたしたちはターミナル駅で別行動取ることを
すぐそこの100均でやっすいサンダルを買い、シューズは袋に仕舞う。
ターミナル駅で靴補修のお店を見つけてお願いした。
急いでるって言うと1時間でやってあげるよ!っておじさんは請け負ってくれた。
前に兄ちゃんと香椎先輩と来たお店が近くのバスターミナル周辺にある。
そこのポイントカード持ってるからそこへ向かう。
親友sと激論の末、また薄い紫のシューズ12,000円をチョイス。
良いでしょ!ラケットもウェアもこの色なんだから!
ポイントガードのポイントも使いさっきの修理費入れても15,000円使い切らずに済んだ!
兄ちゃんが友達にご馳走してあげなさいって言うのを忠実に守る。
…兄ちゃんはこうゆうの大事にする男。
みんなご機嫌でクレープパクつきながら帰り電車を待ってる間、
緑『…でも愛されてるね?兄ちゃんは望可愛いんだなって伝わった!うらやま!』
きい『ビターン!って転んだ時もダッシュで来たよね?優しい兄ちゃんだね?』
茜『承くんノータイムで15,000円出して釣り要らないって…格好良く無い?』
芹『相思相愛の兄妹♡良いお兄ちゃんだね?』
『…べつに。』
(そうだもーん!兄ちゃんはあたし大好きなんだもーん♪)
思ったけど言えない。
うちの父さんの言葉だけど…。
愛は躊躇わないこと。
あたしはこの愛を返したい。
いっぱいいつも貰っているから兄ちゃんに家族に返してあげたい。
でも、兄ちゃんは返さなくて良いと言う。
兄『望がしてもらった分はひーちゃんにしてあげるんだよ?』
コレが立花家の伝統!
あたしはひーちゃんに惜しまず躊躇わずにしてあげたいって思う。
そんなこと思いながら、でも口に出さずにいられない。
聞こえないように、
『…自慢の兄ちゃなんだもん』
緑『…わかってるよ。』
きい『うんうん。』
茜『ブラコンブラコン♪』
芹『これで明日は大丈夫♪』
…聞かれた…!!
散々親友sに揶揄われて家に帰ると兄ちゃんはまだ着いていなかった。
お母さんに事情を話して、
『あたし、シューズ慣らす為少しだけ走ってくる!』
明日の試合、しかも県大会の準決勝…勝てば決勝もこれで戦うんだもん!
走って中学校へ行き、テニスコートへ忍びこむ!
宏介くんもまだ帰っていないようだった。
少し土踏まずに圧を感じるな…踵が少し引っかかるかな?
新しいからグリップが効いてる気がする…?
小一時間動いて確かめ慣らす。
兄ちゃんの応援や愛情に賭けて…明日は負けられない…!
もうあたしに怖いものなんて無かった…!
家へ帰ると兄ちゃんも帰って来て…♪
あたしは兄ちゃんに甘えてしまうよ♪
ごめんて♪あたしだって寂しかったんだよぉ!
ご飯食べて、お風呂入って上がったらもう兄ちゃんに甘えてしまう。
ここ数日の反動と今日の漢気!にいちゃん!にいちゃん!
ひーちゃんが言う前に今日は布団並べて敷いちゃうもんね!
しばらくぶりじゃない?兄ちゃんは最近忙しくって夜居なかったし!
ひーちゃん♪今日は3人でねんねだよぉ♪
ひー『ぼくはいいたいことがあるんだよ。』
兄ちゃんとあたしは顔を見合わせる。
兄『ひーちゃん?もう大丈夫仲直りしたよ?』
あたしも頷きながら、
『そうそう。もう大丈夫!兄ちゃんと姉ちゃんは仲良し!』
ひー『…そうゆうもんだいじゃないでしょ。
ここにすわって…?』
あたし(15)と兄ちゃん(16)は弟(5)に正座させられた。
いつもの2枚の布団の上で。
涙目ひーちゃんに逆らえる者など我が家に居ないっ!
ねえちゃんなにかしたかな?
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