第430話 これで仲直りできるわけがない

芹『あ!お兄さん!』


『…こんにちは?』


どうしようって思ってるところに望の親友の芹ちゃんに出くわす。前にチョコ作り手伝って貰ったね…。


芹ちゃんは驚きながらも喜んで、


芹『望ちゃんがお兄さんとケンカ?険悪?になってから毎日大変なんですよ?

望ちゃんメンタル大荒れで怒ったり無気力になったり。』


『…ごめんね。

ちょっと色々あって…。』


芹ちゃんは良いんです!って言ったあと、


芹『もうすぐ試合なんです!急いで!』


俺は急かされて会場へ向かう。

望!試合前に一言かけたい!


☆ ☆ ☆

遠目でのわかる座り込んで頭からタオルかぶってるアレ…あれが我が妹。

怒ってるんだろうなぁ。

思い切って…!


『望!』

芹『望!お兄さん来てくれたよ!』


望はタオルを外してバッと立ち上がった!

目を真ん丸くしてこっちを見て…



望『なんで?なんで来れたの?!』


…色々走馬灯のようなここ数日を思い出す…。

何日前からすれ違ったり、タイミングズレたり、嫌なこと言われたり、ウインナー取られたり…でも素直な心で…。


『時間が出来たらここに向かってた。

兄ちゃん望の試合見たい!応援したい!』


望は真っ赤になって…怒ってる?照れてる?…怒ってる…!


望『はあ?キモ!キモ!

きんもー☆』


…俺このきんもー☆だけはなんか昔から傷つく…。


『終わったらゆっくり話そうよ。

じゃ初めて見る公式戦楽しみにしてる!また後でな!』


もう入場らしいから手短に言って俺は芹ちゃんに何処で見れる?ひーと母来てる?って聞くと丁寧に教えてくれた。

…清楚な感じで感じの良いお嬢さんだよ…望もこんな感じに育ってほしい…。


緑『お兄さんこんにちは!』

きい『なんか痴話喧嘩のカップルみたいでしたね?』

茜『望はもう大丈夫!機嫌めっちゃアガったよ!』


望の親友sに囲まれて試合のあるコートに移動。

あ!ひーと母!


ひー『にいちゃん!にーちゃーん!』


俺を見つけて手をブンブン振る幼児。そして微笑む母さん。


ひー『あるばいとはいいの?しあいいっしょにみよ?

よかった!うれしいな!ねえちゃんきのうしゅごかったんだよぉ!』


母『本当に大丈夫?』


俺は手短にバイト先が電気水道ガスのトラブルで今日は中止になった事を伝える。あ!望が入場してきた!


歩きながら観客席を見渡す望。

俺が手を振るとバッと目を逸らすけど…ニマニマしてる。

あいつは昔からそうだった。

イベントあると客席に家族を探す、そして見つけるとニマニマして知りません!って顔をするのだ。


試合は一方的なものだった。

公式戦初めて見たけど県内有力選手は伊達じゃないらしく危なげなく圧勝。

…強い。



試合後望はすごい勢いで走って来た!


望『アルバイトはバイトは良いの?』


ひーちゃんと同じ質問に母に答えたバイト先のトラブルを説明する。

…それでここまで自転車で…。


望『は?ここまで自転車で来たのー?

兄ちゃんはシスコンだねー!妹見たさにここまで自転車飛ばしたのー?!』


…妹ではない、妹の試合を見に来たんだ。

松ちゃんの事は言いにくい。松ちゃんの駅まで来てたからとは…まあそうゆうことにしておこう。


望『えへへー♪

そっか?あたしに会いたかったか♪

シスコン!シスコン兄ちゃん♪』


緑『ブラコンシスコンを笑うw』

きい『もうご機嫌なクセにw』

茜『昨日寝ないで待ってたのに…兄ちゃん帰ってこなくてぇってしょんぼりしてた猛獣w』


芹『ダメだよアゲとかないと!もう一試合あるんだから。』


親友sに冷やかされて望はハッと思い出したようにツンツンし始める。

腕を組んで顔を逸らして、


望『あ、あたし許した訳じゃ無いんだからねっ!

許して欲しいなら相応の誠意を見せて貰わないとっ!』


緑『デレる為のツンw』

きい『可愛い♡』

茜『もう誠意見せてくれたら許しちゃうよ♡って言ってるようなもんじゃん!』


芹『…誠意見せれなかったら?』


望はにたぁって笑って、


望『もうしばらく許さないし、指折る。』


ヴァイオレンス!

ひーちゃんが横でオロオロしてる!

仲直りはひーちゃんの為にも必要。


少し先の新川中のテニス部顧問の先生が4回戦があるから少し早めだけどお昼にしますよ!って号令がかかる。


…あ!俺、俺カレのカレー持ってる!

俺は急いで自転車に戻る!

良かった大丈夫!

初夏とは言え常温だけど大丈夫か?!

杞憂だった、カレーすごい。

俺は横のコンビニで紙皿とスプーンを買って望ひーが待つ公園へ戻った。


ひー『にいちゃん?それなぁに?』

望『…でっか!何それー?』


さっきの停電の話しから急遽の休業で余った大量のカレー。

それを貰い受けたって話し。


母さんの弁当は俺が来る予定無いから当然俺の分は無い。

…俺はカレー食べるよ。さっき食べたけど俺カレのカレーはマジで連続でイケる。


母『…お母さんの分お弁当あげるから私カレー貰おうかな?』


『すっげぇ量があるから全然大丈夫。あ。』


景虎さんうっかりしたのかご飯タッパーにしゃもじ、カレータッパーにおたまそのまま入れてる。


俺はさっきも食べたから母さん弁当のおにぎりとかコロッケとか頂く事にしよう。

紙皿にご飯よそって、ハンバーグ載せて、カレーをかけて!

母さんは嬉しそうにパクリ!


母『俺カレさんさすがよね♡

常温だけど美味しいわ♪』


ひー『ひーちゃんも!ひーちゃんもカレー食べたいよぉ!』


『ひーもいるんか?お弁当もあるんだから少しな?』


カレーに全て持って行かれては早朝から準備した母さんが不憫過ぎる!

紙皿に小さくよそって…はい。


ひー『うま☆うまだよぉ☆

…こうして…コロッケカレーにしてもおいしいね?』



じゅるり。


女子中学生からしてはいけない音がした。

すぐ横でこっちを見る…妹の目が…瞳孔開いてる…!

まさか…こんなので?

この数日の険悪な冷戦が?


俺は出来るだけ優しく、


『望も食べるか?』

望『食べるぅ♪』


間髪入れずに即答してきた…!

穏やかに穏やかに…



『どれくらい?』

望『大盛り!大盛り!』


芹『午後も試合あるから早めに食べて消化しておこうって早めランチだよぉ!望ちゃんステイ!』


望『カレーは別腹でしょぉ!』


望は尻尾があったらブンブン振ってそうな雰囲気でオーダーして来る。


望『ご飯多め、ハンバーグ2個♪母さんコロッケも載せちゃって〜♪

カレービシャがけ♪

にいちゃん大好き♡』


…。



緑『チョロっ!!』

きい『望ぃ!プライド無いのぉ!』

茜『食欲に負けたJC(笑)』


芹『仲直りしたかったんだよね?よね?』


望は耳まで真っ赤にして、


望『そうだよ!仲直りの為に仕方なく…

お前らだってカレー好きだろぉ!』


さっきからチラチラって視線は感じている…。

今回もお世話になっているし…。


『皆んなもカレー食べる?』


『『『良いんですか?!』』』


望の親友sと数人新川中の後輩までやって来て…思わぬカレーパーティー。

母さんが紙皿とスプーンを買いに行きつつ我が家の夕飯分のカレーを近くのスーパーのクーラーコインロッカーに預けて戻ってくる。

大量の白米とカレーの大半を望の部活仲間に振る舞った。



『望ちゃんのお兄さんが作ったの?』

『すっごい美味しい!プロの味!』

『望先輩良いなぁ、こんなカレー食べれるなんて。』


望『ま…まあね?兄ちゃんのカレー美味しいんだよ?

あたしも好き…なんだよ。』


お前前に食い過ぎで太ったろ(笑)

先生にまでお礼を言われる始末だけど…なんか望の株と俺の株が爆上げしたからいいか?

望は皆んなに羨ましがられたり褒められたりで嬉しそう。

…お調子者の娘だからね。


景虎さんの好意で貰った大量のカレーとライスは俺と望の株を上げて我が家の夕飯になった。


母『今日手入らずで夕飯楽チン♪

今日はひーちゃんとずっと一緒に居られるね?』


ひー『ほんと?ほんとなのー!

おかあさん♪』


母とひーちゃんも幸せそう。


望『ふー。満足♡』


芹『食べ過ぎだよ!』


望『大丈夫大丈夫!あたしだって考えて食べてるよ!』


芹『考えて食べる人はビシャがけしないのー!』


…でも2時からの4回戦も圧勝だった…望マジで強い…。

これで近県の入賞者が集まる地方大会進出が決定した。

団体戦はここで敗退したらしい。母校の後輩が悲しむ姿を見るのは悲しい。

…でも俺たちが在学した頃の一年生がもう中学最後の大会なんだな…って不思議な気分。俺ももう高校二年生なんだから来年この子らの何人かが東光に入学する頃には俺も三年生で…時間の流れを感じる。


近日ある三者面談の話しを母さんとして母さんとひーちゃんは先に帰る。

ひーちゃんが兄ちゃんも帰ろうよ?って誘うけど俺自転車あるのよ…。

母さんたちが帰ったのを見送って俺も最後の茜ちゃんの試合見て帰る事にするが…



望『茜!やった!茜も準決勝進出!』


茜ちゃんも四強入り!地方大会進出が決定した!


茜『明日の午前の準決勝で勝てれば…望と決勝戦える…!』


望『…ふはは!返り討ちにしてくれるわ!』


悪役ムーブ好きなんだよね…マイシスター。

なんかあの夕日(夕日じゃ無い)へダッシュだー!って望と親友sは走り出した!JC元気だな…。


生ぬるい目で見てると…。






びたーん!!!



すっごい音立てて望が地面に叩きつけられた!

ドミノみたいに綺麗にびたーん!


『望!!』


俺は慌てて駆け出した!!

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