第423話 宏介の輝き

北翔高校の3回戦が始まった。

二階の観客席の最前列を確保できた俺と紅緒さんは宏介の試合に釘付け!


紅緒『宏介くんがボール持つ機会多いね?』


『あぁ…ポジション的にね?』


バスケの説明をしながら試合を観戦する。

宏介頑張ってるな…!

第一Qが終わり2ゴール勝ってる状態。


紅緒『承くんのやってる3on3とまた違う面白さがあるね?』


そうなんだ、やっぱ普通のバスケットボールの方が戦術的に奥深い。交代があり総力戦!って感じする。

攻守が目まぐるしく入れ替わり狭いハーフコートでやりあう3on3の方が個人技重視の感じがするよね。


インターバルの最中も紅緒さんはため息ついて、


紅緒『部活…それを支えるマネージャー…青春♪

愛莉さんと宏介くんすっごいお似合いじゃない?』宏介にボードを使いながら説明する天堂さん。ニコニコ笑顔で楽しそうで…。


『…そうだよね。』


宏介は…女の人に不信感がある。

正確には女性恐怖症とまた?って恐れている感じ。

前よりは全然良い、でもこればかりは本人次第でもあり急かすものでも無い。

…天堂さん良いと思うんだよ、大人で優しそうで。


そんな感じで紅緒さんと一緒に観戦は続く。



☆ ☆ ☆

第二Qから北翔は戦術を変えてきた!

アイソレーションって言うんだっけ?

ひとりを切り離してそこから攻めるマンツーマン対策の戦術。

を前提にした戦術で!

それを宏介が担ってる!


ボールを持つ宏介が一対一でつっかける!


紅緒さんはハラハラしながら、


紅緒『皆んなフォローしないのぉ?!』


『皆んなは動いて宏介の方に行かせないフォローしてるんじゃない?

一騎打ち出来るように。』


紅緒『にゃるほど。』


宏介の高速ドライブでアウトサイドギリギリからの中へ切り込むカットイン!はっや!

向こうのマークが追いつくまでにジャンプシュート!決まった!!


紅緒『宏介くん格好良い!!』


『格好良いよな!わかる!

宏介格好良いわぁ!!』


紅緒さんはジトっとした目で、


紅緒『…普通は連れの女の子が違う男の子格好良い!とか褒めてたら、

「ぐぬぬ…」って嫉妬したりしない?』


『全然!宏介格好良いよね!』


紅緒『度し難い。』


紅緒さんは呆れ顔。

さっきのプレーは宏介名場面集に入れても良い活躍で俺ニッコリ。


…お隣も盛り上がっているようで…


皐月『宏介!さすが私の彼氏っ!!』

※違います。

ゆかり『…宏介くん…!』

?『宏介先輩抜いたけど追いつかれるまでの歩数わかってましたヨネ?』


女の子3人集まればキャッキャうるさい。

まあ黄色い声があがるのはわかる。

今のプレー宏介らしさ溢れてる!

抜く直前のフェイク2回入れて?インを警戒する相手の外側をぶち抜く!

そして追いつかれそうなギリギリゴールに近づいてジャンプシュート!



『…ってわけで?宏介の戦術眼と勝負強さ、テクニックとスピードを余す事無く発揮したシーンだったわけ。』


紅緒『承くん、続き始まるよ?』


宏介は守備でも魅せる!

相手のボールを弾いた!そこをダッシュでボール奪ってそのままカウンターあを一閃!連続ゴール!


紅緒『宏介くんがまた入れた!』


観客席も歓声があがる。

応援の父兄、北翔の生徒やその友人であろう声がどんどん大きくなる!


その後も紅緒さんとキャッキャ騒ぎながら宏介のプレーに一喜一憂しながら観戦を続ける!


☆ ☆ ☆

試合を見ながら思う。


…宏介。

宏介はすごい奴って俺はずっと思ってた。

頭も良くて運動神経も良い。

ちょっと無愛想だけどクールでイケメンで…。

でも、吃音だったコンプレックスがあって。

それでなのか俺は主役じゃない、脇役!親友ポジ!って言って目立たないようにしてたけど…


この試合どう見たってお前が主役でしょ?

それが俺には嬉しく誇らしい。


…ただ…嫉妬じゃ無いんだよ?

俺は高校に入り宏介みたいに部活に打ち込んだり、学業で明確な結果を残せていない。

…俺もバスケ部入って宏介と真剣勝負してみたかったな…。


小6以来宏介と同じクラスになった事は無い。

高校からは学校だって違うんだ。

宏介は本当にすごい。

チームの司令塔にしてゲームでは主役。


宏介立派になったな。

それが誇らしく悔しい。

…嫉妬じゃ無いんだよ?

宏介は高校生として理想的な俗に言う文武両道を体現している。

そのたゆまぬ努力で高校生として理想的な王道を歩んでいる。

それが眩しい。


…ああ、そうか。

幼馴染で親友で…ライバルなんだ。

俺は宏介に並び立てる漢でありたい!

やっぱり宏介はすごい、言葉を使わずに俺を鼓舞できるんだもん!



☆ ☆ ☆

紅緒『承くん?』


『あぁ、見てるよ?』


紅緒『私を無視しないでー!

…何を考え込んでいたの?』


躊躇いながら…でも嘘はつきたくない!


『…宏介はすごい、立派になったなって。

でも俺はどうなのかな?って思ってた。

大好きだから負けたくない!って思ってた。』


紅緒『ひさびさに聞く承くんの大好きのベクトルが男に向けられたモノっ!!』


紅緒さんはあはは!って笑って、


『でも承くんらしいね。』


そう言って、こてんって俺の肩に頭を預ける。

ふわってシャンプーの良い香りがする…!

なんで女の子ってこんなに良い匂いするんだろ…!

ダメ!俺!香椎さんが好き!


『ほら!宏介ボール持った!』


紅緒『宏介くん!がんばれ!』

紅緒さんは身体を起こして試合に集中する!


宏介の早い強いパスを11番が綺麗に決める!

点差も付いてきた!これで勝負ありかな?

宏介と11番がハイタッチ!そして客席をぐるっと見渡す!


紅緒『あっ!承くんも!ほら!

手を振って!!』


宏介がこっち見てるから紅緒さんがぶんぶん手を振り出した!

わんこの尻尾みたいだね!

俺も手を振るよ!



宏介『…!』


宏介が気付いて小さく手を振り返してくれた!

恥ずかしそうな様子がまた良いw



皐月『ほら!宏介が手を振ってるじゃない♪せっかく向こうが気付いてくれたのよ?ゆかりも振って♪』

ゆかり『…宏介くん…!』

日奈子『本当だ余裕ありまスネ♪』


ガバッと音がするほど隣を見ると隣の3人が宏介に手を振って…

…宏介が気付いてしまった…!


宏介がロボットみたいにカクカク…バランスを崩す!

大丈夫?!

横に居た11番が支えて宏介は交代した…。

次戦もあるしもう試合終了までもう5分。

代えて温存すべきなので交代は問題無いんだけど…。

…すっげぇ心配。




北翔は勝ち上がり午後の4回戦に臨む。

いよいよ待望のお昼ごはん!俺朝食食べ損ねて…腹ペコで…!

お弁当楽しみ!

宏介たちはアイシングやミーティングでもう少しかかる。


少し空いた時間に思い出すのは当然…

俺は望にロインしかけて…止めた。

試合直前とかでタイミング悪くて…動揺させちゃいけない気がしたんだ…。

…望から試合結果は来ていない。

望はどうしているだろうか?

試合の熱気から解放された俺に妹との隙間がのしかかっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る