第419話 中学最後の夏【side立花望】
大会直前で少し情緒がナイーブな望のはなし。
☆ ☆ ☆
県大会を3日後に控えた水曜日の部活終わり。
顧問『…皆んなの集大成見せてね!』
『『『『はい!』』』』
顧問『…立花さん。』
『はーい!』
結構綺麗な先生なのに疲れ出てる…美人台無しだよ?
顧問『絶対会場ではひとり行動しないでね?
相川さん?絶対目を離さないで?3人からも。』
緑『!!
私もそっち側?!』
きい『でしょ?でしょ?』
茜『そんな変わんないって!』
芹『…私じゃ止められないよ…。』
私は不服だな…
先週、山近くの合宿所で1泊2日のミニ合宿でさ?
空き時間にカブトムシ見つけて木登って捕まえたら…めっちゃ怒られたの…!
それでしょ?
茜『そりゃ先生からしたら…怪我とか1番注意しなきゃいけないこの時期に15の娘が脚全開にして木登ってて注意したら虫苦手なのにカブトムシくっ付けられて…卒倒しそうになってたもんwやっぱ要チェックやわw』
解せない。
今週の土曜日から三日間、全中のテニス大会が始まる。
個人戦ではあたしと茜。
団体戦のシングルスにきい。ダブルスに芹と緑が出るんだよ!
ベスト4まで行ければ次の地方大会、そこでも上位なら全国大会へ進出出来る。
…北翔の特待生へのノルマは全国大会。
去年は県ベスト4で地方大会ベスト8で全国大会へは行けなかった。
今年は燃えてるよぉ!
まずは!県大会突破!
緑『実際さ?この時期にもう出来ること無いよね?』
きい『もう3日後だからね。』
茜『追い込むと影響出ちゃうからね。』
芹『じゃあなぜ望ちゃんは…?』
あたしはいつも通りのメニューに走り込み。
サーブのフォームチェックはしっかり目。
『…地方大会と全国大会に照準を合わせるとここは緩めるより、日常的な負荷かけて8割の仕上がりで良いと思うんだよね?』
もちろん過度の鍛錬はしないしフォームや調整を念入りに。
目の前を軽視してるわけじゃないよ?
だも、先を見据えてるとそうなる…
地方大会に勝ち進めば…隣県のさらさらとまたヤレるかな?
今年に入って負けたのは香椎先輩とさらさらにだけ。
今度は必ず勝つ!私の熱い夏が始まるよ…!
☆ ☆ ☆
『あー、タブレット欲しいなぁー。』
広い液晶!操作しやすさ!持ち運びはアレだけど家で使うならタブレット良いよね…。
練習後、芹の家に皆んなで寄って少しおしゃべり。
エアコン涼しー!
私はおしゃべりしながら芹のタブレットでつむつむしながらため息を吐く。
茜『うちも去年買ったけど結構するもんな。』
きい『まあ何でも高くなったしね。』
緑『家だとこっちが便利だよね。』
『うちは貧だからさ。さすがにこの金額のモノおねだり出来ないよぉ。』
緑『まあまあ。』
私の口に緑がキットカットゥを差し込む。
はむはむ。
きい『ささ、もう一本♪』
さらにきいがアルフォートゥを捩じ込む。
むしゃむしゃ。
茜『皆んなおかしくない?部活終わりはこっちでしょ?』
茜がプロテインバー(チョコ)を無理やり!口に!
口が犯されるぅ!
『ママー!芹ママ!』
芹はしょうがないなぁって顔で、
芹『はい、牛乳。』
チョコものに牛乳って合うよね?
皆んなに甘やかされるあたしはもう欲しがってたタブレットの事など忘れてご満悦。
部活終わりに糖分とタンパク質が効く!
『あたしこれしか返せないよ…。』
必ず家にあるおやつ。
ぽたぽた焼きと雪の宿。
せんべいばっか。
緑『甘じょっぱいのうまいよね。』
きい『美味しいよ?』
茜『バリバリ!』
芹『うん、美味しいよね?』
あたしはなんか恥ずかしい。おばあちゃんがくれるおやつってこれかルマンドゥ。ルマンドゥは当たり、チョコ菓子だから。
でもそれ以外は大体せんべい。
こいつら気を使ってんじゃないの?
緑『私んちおばあちゃんが一昨日亡くなったから…望がうらやましいな。』
きい『…うん、うちは遠くに住んでるから…うらやましい。』
茜『良いおばあちゃんだよね!いつも、
『お転婆だけどうちの望よろしくね!』ってお菓子くれる!』
芹『…趣味が多い良いおばあちゃんだよね?』
あたしは頷く。
ばあちゃんは趣味人なんだ。
日本舞踊に生花、習字、裁縫。1番の趣味はカラオケってパワフルなばあちゃん。
…若い頃はすっごい美人だったらしい。
皆んなんちで出てくるおやつとうちのおやつが違ってばあちゃんと子供の頃ケンカした事を思い出した。
なんか…無性にばあちゃんの顔が見たい。
小一時間芹の家でおしゃべりしてあたしは家に帰る。
…おやつのことでケンカしたのはもうだいぶ昔のこと。
今更あやまる必要は無い。
…今日はばあちゃんが出してくれるおやつを何でも美味しいよ!いつもありがとうおばあちゃん♪ってお礼を言おうっと♪
『ただいまー!』
ばあ『おかえり、のぞみ。
今、じいちゃんがひーちゃんを迎えにいってるよ。』
『そうなんだ!』
ばあ『のぞみ、ばあちゃんなんか今日ね、昔のぞみとおやつでケンカしたこと思い出したんだよ…。』
…ばあちゃんもその事覚えてたんだ…あたしがわがままだったんだ…
謝ろうとすると、
ばあ『私、今風のものわからんで。のぞみが喜びそうなもの見つけたから今日買って来たよ。』
…ばあちゃん…。
ばあ『はい、マリトッツォ♪』
『そこ?逆に何処で買ってきたのぉ?!』
前にテレビで流行ってるって見たんだけどねぇ…?
ばあちゃんわざとだ…わざと今見なくなったマリトッツォ買ってきたんだ…!
そしてこれ何処で買って来たんだ?ばあちゃんの行動圏でこんなの売ってるお店無い!
生クリームたっぷりでうま!
美味しかったけど…
謎は深まるばかりだよ…。
☆ ☆ ☆
『おかしいよ!マリトッツォなんて売ってる洋菓子店が新川町にあるわけない!』
承『まあ、ばあちゃんだし。』
兄ちゃんはばあちゃんが変な行動力あるからきっとソレだろうって思ってる。
ブーム?ブームってほどブームじゃ無かったけど見なくなったから買って来たんだろ?って結論付ける。だよねー?
今日ひーちゃんは両親と寝るからそれぞれベッドで寝てるんだけど兄ちゃんと眠くなるまで話しちゃう。兄ちゃんはバイト帰りでお疲れ様。
あ!そうだ!
『兄ちゃん!3日後!土曜日にあたしの大会見に来なよ!』
承『…あー。ごめん、土曜は用事あって…。』
毎回見に来たい!って言うくせに見に来た事無いんだよね!
今回が中学最後だから見に来て欲しかった…。
承『宏介のバスケの大会見に行くんだ。
紅緒さんと。』
『は?』
宏介くんの試合…あたしも見たい!
日程かぶってるのは仕方ない。
でも?永遠ちゃんと見に行くの?
…兄ちゃんは香椎先輩が好きなんじゃないの?
あたしの最後の大会見に来て欲しい…。
色んな感情が入り混じり、あたしはすっごい腹がたつ!
『にいちゃんさぁ…永遠ちゃんは良い子だけどさぁ…ハッキリした方がいいよ?
香椎先輩と何があったか知らないけど?
成実ちゃんだってそう。
女の子3人誰にしよう?ってギャルゲーの主人公気取りなの?』
承『は?はあ?!』
望『そんな兄ちゃんは見たく無いなぁ。
だっさ。うちの兄ちゃんは硬派だと思ってたけど…。』
承『俺は…』
望『俺は誰とも付き合って無いとか向こうから誘われて!とか言わないでよね?』
やめた方がいい!ここでごめん!って謝った方がいいよ!
思うけど口は止まらない!
『女の子三人にデレデレしてさ?
気持ち悪い。
無自覚ハーレム主人公なの?』
承『…。』
暗闇の中、兄ちゃんは仕切りがわりに使ってる古い衝立を真ん中に立てた。
普段はまったく使われない衝立。これが立つ時は…ケンカして顔見たく無いって時だけ。
久しぶりに使われた衝立は向こうが透けて見えるのに一切の干渉を拒否する心の壁。
…あたしは今わかった。
あたしはただ兄ちゃんに試合見て欲しかった。
頑張ったな!すごいな!って褒めて欲しかっただけなんだ。
なのに…最近忙し忙しいって…バイト以外もなんか忙しそうにしている…。
多分香椎先輩の何かなんだろうけど…他人ばっかり優先しすぎじゃない?
ひーちゃんだって最近寂しがってるんだよ?!
※望は香椎先輩の婚約問題は知りません。何かあったのかな?って程度。
あたしに背を向けて寝た兄ちゃんに素直に謝れなくってあたしも逆側を向いて強がって寝たんだ!
…あしたは仲直りできるといいな…。
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