第417話 多芸多才なお嬢さん

松ちゃんとの第1回舎弟生活を終えた俺は翌日の休日落ち着かずに家に居た。

松方新二についてもっと詳しく知りたい!

人の心の機微を読むのに長けてて、一年分析していた香椎さんにもっと詳しく聞きたい!


昨日の夜、香椎さんから連絡が有ってひーちゃんに用事があって明日(つまり今日)会いに家に来ると言うのだ…!

俺は柄にも無く家や玄関を掃除して、シュッシュ消臭剤を撒いてお茶菓子とか用意。


ひー『かしちゃんがくるの?ぼくにおきゃくさん!』


ひーちゃんニコニコ。


望『おー香椎先輩来るのかぁ。じゃ今日は家に居よう。』


望も居る。

でもひーちゃんに用事?


ピンポン!玄関の呼び鈴が鳴る!



ひー『はーい!』


だっ!ひーちゃんが飛び出す!


俺と望『『走るな!』』


香椎『こんにちわ♪』

小幡『こんにちわ。』


ひー『かしちゃん!ツンデレちゃん!』


香椎さんと小幡さん?

よく見かける組み合わせだけど…俺の家に小幡さん?


俺は慌てて茶の間に通す。

玄関横の居間に顔出して2人は祖父母に挨拶してくれた。


香椎『なんで今日来たか?

なんだけどね?ふふー!』


ニコニコする香椎さんの笑顔に見惚れちゃう。

…前回家に来てくれた時の思い詰めてた悲しい顔よりすごく綺麗。

やっぱ女の子は笑顔が1番だよね。

そう言えば家に来るのは、会うのはあの雨の日以来…濡れて俺の部屋着着て帰ったあの日以来…。


それで何用なんだろうか?


☆ ☆ ☆

香椎『ひーちゃん!今日はね?

プレゼントがあるんだ!』


小幡『そうなの。喜んでくれたら良いんだけど…。』


2人ともニコニコ。


望『香椎先輩も小幡先輩もお上手ですもんね!

楽しみ!』


小幡さんは呆れたように、


小幡『望?食べ物じゃ無いのよ?』


望『…え?食べ物じゃ無いの?』


小幡さんと望がむぎゅむぎゅしている。

香椎さんはひーちゃんに目線を合わせて、



香椎『ひーちゃん♪雪だるまさんの事覚えてる?』


ひーちゃんは目をキラキラさせて、


ひー『もちろん!もちろんおぼえているよ!

いまはどこをたびしているかなぁ?』

閑話 ゆきだるまシリーズを参照↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16818093073640945265


香椎さんはもう一度ふふー!って笑った。


香椎『じゃん!なんと!

あの雪だるまさんの冒険を絵本にしちゃいました!

そして…』


俺を見ながらにっこりご機嫌な顔で、



香椎『高校生の絵本甲子園って言うコンテストに応募したら…


なんと!賞取ったよ!

刊行される事になってね?昨日製本されて届いたの!』


『『『おお?!』』』


ひー『しゅごい!しぃごいよぉ!』


ひーちゃんに手渡されたのはきちんと製本された…本屋さんで売ってるクオリティのもの!

小幡さんもニッコニコ!


タイトルは、ゆきだるまのぼうけん。


ひーちゃんは表紙を見ただけでウズウズ!


ひー『よみたい!よみたいよぉ!』


小幡『お姉ちゃんが読んであげるね?』


望『あたしも見たい!』


小幡さんはひーちゃんを抱っこしてゆきだるまのぼうけんを音読してくれる。

横で望も覗き込む。


香椎さんは俺に近づき、


香椎『あの雪だるま送った日にね?

インスピレーション沸いちゃって。

家で話し作ってね?絵本に出来ないかな?って思ったの。』


香椎さんは忙しいのにボランティアもしていると言ってた。

幼稚園や保育園で絵本の読み聞かせとか学童保育のお手伝いとか。

そこでオリジナルの絵本を思いついたらしい。



香椎『ストーリー作ってね?そのまま千佳の家に行って絵を描いて貰ってね。千佳がノリノリで色んなバージョンの雪だるま作ってね?』


嬉しそうにクスクス笑う。

プロトタイプをボランティアに持って行ったら子どもに大ウケ!

そしたら千佳が高校の絵本甲子園なる催しが締切間近であるよ!って急ピッチで仕上げたの!って。


小幡さんの涼しげな声の朗読が部屋に響く。

ひーちゃんは夢中で絵を見つめながら小幡さんの朗読に耳を傾ける。

望もすっかり引き込まれて静かに絵本を見ている。


香椎『ひーちゃん喜んでくれたら良いなって思って急に来た次第です♪』


いつかの俺の口調を真似したであろう香椎さん。

…香椎さん何でも出来るけど声真似だけは出来ないんだよね…。



キラキラした瞳でひーちゃんを見てる香椎さんを直視できなくて俺は目を逸らしちゃう。


香椎『承くん?』


『うん。』


香椎『どうしたの?』


この娘は人の為になる娘だ。

ひとりで何でも背負い込んで人の為に考えて行動出来るマルチな才能を持ってる稀有な人材。

やっぱり俺がなんとかしなきゃ!俺は誓いを思い出す。

必ず俺が何とかする!

そう思った俺は昨日の第一回松ちゃん家の話しを香椎さんに話す。


香椎『…うん、新二くんはね…』


ゆきだるまのぼうけんは2周目の音読に入った。

ごめん小幡さん、ひーちゃんは気に入った絵本3周は読んで欲しいタイプ…!


☆ ☆ ☆

その後はお茶して、色んな話ししてお昼まえにふたりは帰ることに。


別れ際、


小幡『じゃん!ゆきだるまのぼうけん2!

製本前だけどひーちゃんにプレゼント!』


小幡さんが少しドヤ顔で絵本をもう一冊取り出した!

ひーちゃんはびっくり!


ひー『ちゅじゅき?ちゅじゅきよめるの?!

やったー!ありがとツンデレちゃん♪』


千佳『…お姉ちゃんって呼んで欲しいかな?』


ゆきだるまのぼうけん2


さく かしい れいな

え  おばた ちか


なんか見てるだけで暖かくなるような素敵な絵本だった。

香椎さん、小幡さんありがとう。


香椎『…少しだけど…賞金も入るし絵本が売れると少し印税が入る。

…慰謝料なり承くんがお金必要なら私出すからね?』


『…優奈さんも言ってた。』


3ヶ月の試用期間の話も出来たし、後は俺が松ちゃんの信頼を得て…!

なんとか、心を獲るしか無い。


無茶だけはしないでね?香椎さんはそう言うと見惚れる笑顔で手を振った。

…小幡さんも去り際、


小幡『…玲奈から聞いた。

私が頼むのもおかしいんだけど…お願い、お願いね承くん。』


俺の手をキュって両手で握って小幡さんはにこって笑って香椎さんを追いかけた。

…心配だよね、親友だもん。


香椎さんと小幡さんはきっと俺と宏介みたいなもの。姉妹みたいなライバルみたいな保護者みたいな関係。


俺は香椎さんたちが見えなくなるまで見送った。

…ちなみにあの日貸した俺の部屋着は帰って来なかった…忘れてる?

※玲奈さんが大事に保管くんくんしています。



その晩…隣の望ベッドでひーちゃんは絵本を読んで貰っていた。


望『ゆきだるま三兄弟は宝探しの旅に出たのでした…もう勘弁してよぉ!』


よっぽど気に入ったのかひーちゃんは望の腕枕で何度目かのゆきだるまのぼうけんを1、2通して読まされている。


ひー『…はーちゃんがもういっかいよんでって?』


望『にゃっ?!はーちゃんも居るの?!』


ひー『ぼくといっしょにみてるよ?』


望は顔を引き攣らせて、


望『おねえちゃん…こうゆう時どんな顔したら良いかわかんない…。』


『…笑えば良いと思うよ?』


ひーちゃんはいつもの癖でお気に入りの物を抱きながら眠りにつく。

絵本を2冊抱いて眠るうちの弟はマジ天使!


望『あ!私も絵本描こうかな?

賞獲れば賞金ぐへへ。駄菓子屋で豪遊三昧!』


『そういうメンタルじゃ子ども向けの絵本は描けないんだよ。』


俺はいつも香椎玲奈の色んな面に驚き感動する。

そのどれもが魅力的で知るたびに好きになってしまうんだ。

香椎玲奈はいつも想像を超えてくる…!

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