第415話 訪問するよ!新二くんち!

放課後、昨日下見をした隣駅前付近のタワマンへ到着する。

鬼が出るか蛇が出るかまったく検討もつかない。

正直怖い。

でも、一度兄貴と思い定めたからには…誠心誠意尽くすのみ。

…本当に無理なら…一応策もあるんだけど…なんにせよ信頼を勝ち取らなきゃ話にならない。


『よっし!』


俺は気合いを入れて中に入った…!


…が。

え?何?これどうすんの?


初めてのオートロックに訳がわかんないよ!

早めに来てて良かったー。

まごまごしながら松方さんちの番号押して呼び出して開けて貰った。

開錠したら慌てて中に入った…!閉まっちゃうんじゃ無いか?って不安にならない?

4階の1番奥の部屋…そこが松方家。


深呼吸して、ボタンを押す。


新二『…はい。』


さっきのエントランスでもそうだった気怠い声。

27歳…よりは上に感じる。


『…立花です。』


そこに居たのかすぐに扉が開いた…!



俺は想像していた。

すっごい!でざいなーずまんしょん?って言うのかな?

室内に螺旋階段あったり、何十畳もある畳の部屋があったり?

お金持ちなんだから…って部屋の想像。


あとは…汚部屋。

舎弟が居てもいいか!なんて思うくらいだもの。

めっちゃわがままでだらしがなくってゴミや汚れ物や洗濯物が散乱してて

…地獄のような光景が広がる汚部屋だったらどうしよう…?って。


最悪なのは…どっちもって状態。

豪邸でデザイナーズマンションで汚部屋。

これが最悪。

しかし、それも受け入れる!

誠心誠意お仕えして認めて貰う。

そう考えればむしろそうゆう仕事がある方が良いのでは?



…杞憂だった。

想像通りひとり暮らし。

中は普通の…普通の高級マンションで広くてオシャレな4LDK。

居間に通され多少食べた物の袋とか散らかってはいるが全然普通のレベル。


高級感があって、シンプルながらも美しい内装。

良い部屋!

そして…でっかいモニターのPCに巨大なテレビ、壁一面に趣味の物が配置され…なるほどすっごいお金持ちって本当!


松ちゃんはふうってため息ついて、



新二『…本当に来たんだな。

面倒だけど…玲奈さんにも頼まれたし…。』


ぶつぶつ言いながら目を合わせない松ちゃん。


松ちゃんは俺をリビングのソファーに座らせ自分も座ると、


一応、玲奈さんの婚約破棄と諸々の代わりに俺が来たと認識していると。

自分としては全く破棄する気は無いけど玲奈さんの懇願を受けてのこと。

万が一立花の働きが俺を満足させたなら…婚約破棄に合意して後腐れなくこの問題は飲み込むとのこと。

…この辺は先の話し合いでだいたい話してた。


松方『…でさ?試用期間ってあるじゃん?

本採用するか試すやつ。

そんな合わない奴何年も側に置きたくないしお試しは3ヶ月。

3ヶ月試してやっぱダメだわ?ってなったら玲奈さんもお前も諦めて貰うわ。』


『…はい(…3ヶ月…!)』


ちょっと想定外だった。

そう来たか…!

でもそもそも無茶な願い。

正社員登用にも同様の事があると聞く…。

松ちゃんの言い分は全く間違っていない。


新二『まあ…こないだ言ったみたいな舎弟?弟分?みたいな感じで週何度か来てパシリや雑務。話し相手やゲーム相手…するかな?

まあなんか用あったら呼び出すかもしんね。』



なるほど。


新二『東光だっけ?近いから基本学校帰りでいいよ。

ちょうど護衛のおっさんと揉めてたからちょうど良いし。』



護衛?護衛居るんだ?


新二『あぁ…大企業の一族で…まあ要らん恨みを知らないうちに買ってることあるからな…夜とか出歩く時は付けろ!って言われてんの。

前に一回…。』


知らない男に名指しで呼び止められるエピソードやチンピラが絡んでくるって話し…神室町に住んでんの?


『こっわ!竜が如きじゃないんだから!』


松ちゃんが反応した!


新二『竜が如きやってんの?』


『父さんの持ってる2までなら。』


松ちゃんはすっげえ笑って、


新二『2は名作だけど相当昔の!アレは…!』


松ちゃんは竜が…を語り出してピタって止めて真っ赤になりながら、


新二『…まあゲーム話しはいいわ。

立花?お前から言いたいことは?』


松ちゃんは警戒している。

多分玲奈さんのお願いだと思ってる。

うん、それがメインだからね。

…でも今日は…



俺は気合い入れて松ちゃんの目を覗き込む。

松ちゃんはちょっと嫌な顔。



『…俺、松方さんの弟分になるじゃないですか?

だから今後は兄さん、兄貴のつもりで接します。

雇用関係じゃないですし。』


新二『…舎弟って外聞が悪いだけなんだが。』


無視!俺の流れ!


『ひとたび兄と仰ぐからには誠心誠意、真心を持って弟として勤めます。』


新二『…あぁ…まぁ。』


『じゃ!リピートアフターミー!』


新二『え?』


『生まれた日は違えども !』


新二『は?生まれた日は違えども…?』


俺の勢いに負けて松ちゃんはやる気無い復唱w


新二『死す時は同じ日、同じ時を願わん!』

新二『死す時は同じ日、同じ時を願わん…ってこれ!

三国志の桃園の誓い!』


死んだ目で復唱してた松ちゃんが気付いて笑い転げる。

男子必修科目だよね!三国志!

※桃園の誓い… 『三国志演義』序盤に登場する劉備・関羽・張飛の3人が、宴会にて義兄弟(長兄・劉備、次兄・関羽、弟・張飛)となる誓いを結び、生死を共にする宣言を行ったという逸話のことである。


松ちゃんは笑い転げて、


新二『玲奈さんが言ってた通り!

武将マニアなの?お前?』


ここだ!


『俺、承です。

弟分ですから承って呼んでください。』


新二『あー。承ね。

わかった承って呼ぶわ。

じゃ、最初の仕事。』


ごく。



新二『ダッシュでハミチキ五個とコーラとポテチ買って来て?

戻ってきたらゴミ捨ててトイレットペーパー交換。

そのあとウーバー来るから受け取って支払っといて。』


ポンって電子マネーカードを手渡された。


『…ういっす!』


俺は急いで行動開始!

こうして俺とまっちゃんの不思議な関係が始まった…!

…まずは3ヶ月で切られないように信頼を得なければ!

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