第414話 カフェと紅緒さん

『つまりあっちゃんでしか取れない栄養素があるんだよ。』


紅緒『…全っ然わからない。』




わからないかなぁ?明日ついに松ちゃんとの第一回舎弟生活を前に俺がしたかったのはあっちゃんに会いに行くこと。

学校ではなかなか会えなくて…バイト先に行けば逃げられないじゃない?

校内では隙あれば紅緒さんがしつこく付き纏って恥辱の、恥辱のって言ってくるからなかなか会いに行けない。

※色仕掛けのつもり。


今日、伊勢さんは木多さんと買い物行ったし、青井は部活だし。

仙道は用事あるとかで…紅緒さんがどうしても俺に着いてくる!って聞かないの。


俺は隣駅の駅前のカフェいくって言ったら着いてく!の一点張り。

でさ?自転車で10分過ぎた辺りから、


紅緒『どうやら…ここが限界みたい…私のことは…置いて行って?

…ありがとう承くん…楽しかったよ…?』


雰囲気出してくんの。

なんなの?まだギリギリ東光高校見えるよ?

なんで着いて来た?その電動アシスト自転車一回乗せて貰ったけど…めっちゃ坂道とか楽ちんでびっくりしたのに。

紅緒さんはお願い!ってポーズで、


紅緒『おねがい!なるみんから聞いてるアレやって!』


風が強い日、伊勢さんがその…女の子の日とかで体調が悪い日に俺と青井が引っ張って伊勢さんをレッカー登校することがある。それに憧れがあるらしい…。


結局自転車で並走しながら俺が手を引くか背中に手を当てて押しながら行くんだよ?

そうしてやっと20分かけてついた隣駅の駅前のカフェに入ったら、



紅緒『…カフェデート…憧れてた…良い…。』


って頬赤くしているから、

俺はあっちゃんのカウンターで注文しつつあっちゃんに声をかける。

制服似合うね!オススメは?今度の休日バスケしない?


厚樹『…うるせぇ。

バスケはする。時間知らせて。飲んだら帰れ。』


俺は肩をすくめて、


『あっちゃんデレたよね?』


紅緒『え?男目当てにカフェ来たの?』


って聞かれたらから冒頭の会話になったわけ。


紅緒『またあっちゃんか!

またあのイケメンが私の承くんを誘惑するのか!』


ってプンスコしている。


隣の席の美人大学生のお姉さんに、


『ね?あっちゃんでしか得られない究極の癒しがありますよね?』


??『あるよねー?至高のリラクゼーション!

うちのあっちゃん格好良いー!』


ここに来ると大体かち合うあっちゃんの4歳上の実姉の若葉さん!

こう見えてもモッテモテの女子大生!

会うといつもあっちゃん談義に花が咲く。

紅緒さんは驚いて、


紅緒『承くん?!誰この美人!』


『あっちゃんのお姉さんだよ。若葉さん。』


若葉『よろしくね?

…綺麗な娘!承くんも隅におけないねー!』


『え?紅緒さんはわんこ枠なんで…。』


紅緒『わんこ…犬…雌犬調教〜恥辱の破廉恥『言わせないよ?』』


紅緒さんは最近情緒不安定なんだよね。

※玲奈の事に夢中の承の気を引きたいんだけど方法を大間違い中。


若葉さんは堪能したらしく『またねー♪』って帰って言った。

俺カレ近くの県立大学に在学してるから授業の合間とかに来るらしい、近いしね。


紅緒『ふっふー!ここからふたりきりのカフェデート♡』


『はは、言いよるわい。』


紅緒『そっか、あっちゃんのお姉さんだから親しいのね?別に好きだとかじゃ…』


『実は…子供の頃の初恋のお姉さんなんだよね。』


照れくさい!懐かしいなぁ。

バレエの衣装がすっごく綺麗で…香椎さんに出会うまで若葉さんに会うたびドキドキしたっけ。


紅緒『はあ?はあぁ?!』


『まぁまぁ、ここのコーヒー美味しいよ?』


紅緒『飲まなきゃやってられない!』


まあ折角美味しいカフェの…まあカフェオレしか飲まないんだけど。

コーヒー苦手だけどミルク入ったカフェオレは好き。紅緒さんは美味し!って言いながらなんちゃらフレーバーのグランデ飲みながらケーキ食べてた。

グランデでっか!そう言えばイオグランデってなんなの?うちにあるドラクエでイオ最強呪文イオナズンだったのに?


話し逸れた。久しぶりに紅緒さんとゆっくり話す。

雰囲気なのかな?

学校のこと、友達のこと、宏介と天堂さんのこと、色々話す。

もうすぐ夏になる。暑くなるのかな?


香椎さんが死ぬほど好きな俺だけれども…紅緒さんにドキドキする時がある。

こうゆうしっとりした雰囲気で変なノリを持ち込まないで話している時。

黒髪清楚な美貌、色白で可憐なその姿。

透明感のある笑顔で見つめられると少し心臓がざわめく。

まあ紅緒さんだから長続きしないんだけどね。

※最初からこの路線で徹底的に攻めていればifルートも…。


そんな中、紅緒さんからの提案。


紅緒『来週の週末さ?宏介くんと愛莉さんインターハイ予選の試合なんだって!

金土日って。金勝たなきゃだけど土曜日に応援に行かない?』


紅緒さん…宏介と1学年上のマネージャーの天堂愛莉さんをくっ付けようって画策しているんだよね…。

※それにかこつけてダブルデートや宏介に承との仲を取り持って貰うべく暗躍しています。


土曜か…多分大丈夫!

俺は紅緒さんと宏介の試合の応援に行く約束をした。

宏介の試合見るの初めてだわ!めっちゃ楽しみ!



☆ ☆ ☆

紅緒『…最近さ?こうやって話すこと無かったね?』


『そうかな?』


紅緒『そうだよ!

…毎日バイトか勉強…

鬼気迫るって言うか…もちろんそんな承くんも良いんだけど…。』


…何かせずにはいられない。

俺みたいな何も持たない人間が香椎玲奈に釣り合う為に、香椎玲奈を救う為には。

ちょっとバイト代稼いだって、ちょっと成績が上がったからって大差は無いし変わりはしないのは重々承知している。

それでも何かせずにはいられなかった。


…限りある命だもん。

一生懸命に本気で頑張らないと…

いつからそう思えるようになっていたんだろ?


…そうだ、この娘から教わった。

日々を一生懸命に生きること。

まっすぐ真剣に今を楽しみありふれた日々の大事さを紅緒永遠から教えられた。


『紅緒さんみたいに毎日を頑張った方が楽しいって教えて貰ったからかな?』


頬杖着いてちょっと湿度の高い目で俺を見ていた紅緒さんは少し跳ねた。


紅緒『承くんがデレた!デレたよね?!

子作りする?しちゃう?』


『しない。台無し!』


紅緒さんは毎日を一生懸命に生きている。

毎日新しいことを、思い出を記録を夢を形に残そうと必死。

時々おばかな事しでかすけど本当に本気でいつも生きてる。

俺は紅緒さんに色々教えたつもりだったけど教えられたことの方が多いんだ。


☆ ☆ ☆


『(…ここか…。)』


カフェの斜向かい、でっかいタワマン(小さいタワマンなんて無いだろうが)を見上げて明日訪ねる松方さん…通称松ちゃんの家を確認できた。

…本当の目的はコレ。

絶対に遅刻や迷子はまずいから。


タワマンを見上げる俺を不審そうに見つめる黒髪ロングの清楚な美少女を促して俺は帰途に着く。





紅緒『…承くんや…すまないねぇ…。』


『それは言わない約束でしょ?おばあちゃん?』


完全介護で紅緒邸の前までおばあちゃんと並走しながら手を引いたり、背中を手で押しながら走ってまあまあ大変だったんだよね。

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