第412話 弟、立花承
夜、立花家。
『ひーちゃんおいで。』
ひー『にいちゃん♪』
膝の上に座る愛しい弟。
こんだけ可愛ければ…玲奈ちゃんちょうだい?って言えば譲ってくれるかもしれん…。
ただ俺みたいな男子高校生がそんな事言っても逆効果なわけで。
ひーちゃんを正面からマジマジ見つめる。
柔らかそうな髪、クリクリなおめめ、ぷっくりほっぺ、いつも笑っている口元…俺の弟マジ天使!
『ひーちゃんは弟の天才だね。』
ひー『?』
ひーちゃんは俺を信頼、ちょっと尊敬してくれる。
素直な裏表の無い心、純真、愛情そんなところか?
…他に弟キャラ…宏介もあっちゃんも弟だなぁ…。
…あのふたり弟キャラだから兄キャラの俺と相性良いのかな?
※違います。
…望は父さんとレトロゲームやってるから静か。
父さんコレクションをレトロゲームって言うとショックを受ける。
望とコミュニケーション取れるから父さん毎回楽しみにしてるけど足引っ張ると望うるさいからね。ファイナルファイ⚪︎とかダブルドラゴ⚪︎とか。
俺は珍しく静かな自室でベッドでゴロゴロひーちゃんを愛でながら弟に思いを馳せる。
ひー『はーちゃんもおとうとだよ?』
『はーちゃんも一緒にゴロゴロしたらいいよ。』
はーちゃん…。
うーん今それどころじゃない。俺が知ってる弟キャラ…。
本棚…うーん三国志とか水滸伝とか武将っていうか…。
三国志で弟って言ったら?
張飛だなぁ…。
※張飛…三国志演義の登場人物。『万人の敵』とか『一騎当千』とか言われちゃう猛将。
三国志冒頭で劉備、関羽と『生まれた日は違えど同年同月同日に死せん』と誓い合う桃園の誓いが有名、短気で浅はか猪突猛進で酒の失敗は数知れず。
幾多の武将を一騎討ちで討ち取ったり手柄も多い。
最後は部下に暗殺された。
最初から最後まで健気で義兄を慕って…失敗ややらかしが多いけど成功も多く生涯兄に愛されたね。
水滸伝だと
※李逵…あだ名は黒旋風、2丁板斧の使い手の豪傑。
性格は幼児がそのまま大きくなったような無邪気…いや無知凶暴って言われるほどこへ行ってもトラブル起こして大暴れする。
水滸伝は湖の真ん中にある島の塞にあつまった108人の頭領の山賊物語。
悲喜交々の物語の末集まる108星、その頭目の宗江を義兄と慕う李逵。
宗江は最後朝廷に投降して官軍として地方反乱に当てられすり潰される。
ある日、宗江に帝から酒が届いた…これは毒酒で…これを飲んで死ねって意味だった…初めて読んだ時こんな結末ある?って憤慨したっけ。
宗江は李逵を呼び酒を勧めた。大喜びでやってくる李逵。
しばらく飲んだとき、突然宋江が涙を流しながら李逵に謝罪した。宋江は奸臣の陰謀で毒入りの酒を下賜され死ななきゃいけないが、このまま死ねば後に残った李逵が朝廷に謀反を起こすのではないかと心配し、李逵を殺すために毒入りの酒を飲ませたのである。
すまないと謝る宗江に李逵はやはり涙を流しながら、「かまわないよ!おれは生きてるときも死んでからも、ずっと兄貴と一緒にーいたいんだ!俺も一緒に連れてってくれ!」といった。
この後「おれが死んだら、宋江の兄貴と同じところに葬ってくれ」と言い息を引き取った。
全力で媚びて歓心を買うなんて俺には出来ない…
ならどうだろう?
張飛や李逵のように…兄貴を松ちゃんを慕い続けて…真心が通じるまで…。
そしてひーちゃんのように兄を素直に信じて尊敬して…。
俺の出来る弟はこれだ!!
※考えに考えた結果明後日の方向へ走り出しました。
俺はひーちゃんをぎゅーって抱きしめて、
『ひーちゃんしゅごい。』
ひー『えへへー♪』
煮詰まってたけど方向性が見えてきた!
何処に居るのかわからんけど、
『はーちゃんもありがとう。』
って呟いた瞬間、ニッコニコの望が部屋に戻って来て…
俺のはーちゃんって声にビクン!って跳ねる。
望はオドオドしながら、
望『やだなぁ…兄ちゃんまで…。』
自分のベッドにゴロンして、
望『そうやってあたしがおばけ苦手だからって…』
ばん!!
望が話してる途中に落ちるはずの無い望の机の上のペンが音を立てて落ちる。
ペン…机の真ん中にあったよね。
望『ひゃん!』
(> <)←こんな顔で望は俺のベッドへ突っ込んで来て、無理やり俺とひーちゃんの間に入る。
そしてうるうるおめめの上目遣いで顎の下に手をぐーにしてくっ付けて媚びっ媚びのポーズで甘えた声で、
望『…今日…あたしぃ…おにいちゃんと一緒に寝るぅ♡』
『これはダメな妹だわ。』
対松ちゃん相手に参考にならないって意味で言ったんだけど…
望『良いでしょぉ!この年で兄と一緒に寝てくれる妹なんて居ないよぉ!』
頼んでない。
ひーちゃんは優しい笑顔で、
ひー『ねえちゃん、みんないっしょにねんねすればいいんだよ?』
望『ひーちゃん♡
ひー『はーちゃんもいっしょにね?』
望『ああーーん!』
普通にしてればうちは弟も妹も十分可愛い。
ただ松ちゃんはどう思うか?…不安は大きい。
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