第411話 香椎姉妹と帰り道

中華料理店を出た俺たち。

ご馳走様でした!松ちゃんに頭下げるけど松ちゃんは俺に興味は無い。


新二『じゃ俺車で帰るから。玲奈さん送って行く?』


香椎さんはニッコリ笑って、


香椎『姉がすぐ迎えに来ますので♪』


香椎さんは会釈して駅前ロータリーへ移動した。

聞かれて無いけど、


『俺電車で帰ります!

では、松方さんよろしくお願いします!』


一応松方さんって呼ぶ。

…松ちゃんの方が良くない?

一礼すると松ちゃんは面倒な感じで、


新二『…あぁ。』


めっちゃ高そうな青い車で走り去って行った。


ふう。俺も帰ろう。

高い中華屋さんだけど全く味がわからんかった。

望が羨ましがってたけど…なんて話そうか?

そう思いながらすぐそこのターミナル駅へ向かう。



ぶぶー!


うるさいな。車のクラクションが鳴ってる。

どうしよう?お菓子の量り売りでも買って帰ろうか?

それとも…



ぶぶぶー!


うるさいな…。

後ろを見ると、



優奈『おーい!そこの東光高校の立花承くん!

無視すんなー?』


歩道で車道からクラクション鳴らされるなんて思って無かったからびっくり!

めっちゃ知り合いだった!駅前で個人情報ダダ漏れ!

クラクション鳴らしてたの玲奈さんの姉の優奈さんだった…!


車内を見ると玲奈さんが居て…。

そりゃね?


『一緒に帰れませんて。』


優奈『私と一緒に帰ろ♪』


ちょっと望っぽい感じでこの人も自由なタイプの人なわけで…

俺は結局押し切られて後部座席に押し込まれる。


優奈『はいはい!玲奈もこっち!

助手席に荷物置きたいの!』


優奈さんは無理矢理後部座席に妹を押し込んだ。


車は出発し、優奈さんの鼻歌だけが響く車内。

香椎さんは…さっきまでのニコニコと真逆の暗くてしんどい顔。

…俺のせいだろうか?


優奈『あ!コンビニ寄ってくるー!

コーヒーも買ってくるけどあなたたちは?』


そう言いコンビニに車を停めるとわざとらしく、優奈さんは車から降りてコンビニに向かってのんびり歩いて行った。


シーンとした車内。

真面目な顔して社内にふたり。


『『あの!』』


ハモった。ままある事。



『『…。』』


ふたりして相手の出方を見ての沈黙。




『『…。』』


そしてまた2人して相手が話し出すのを待つ。

これ昔からあるやつ。



『またタイミング重なったね?』

玲奈『土下座したの?私のせいで?!』


今回は内容が全然違った。

いつもふたりで吹き出してたのに今回俺は笑って…香椎さんは泣きそうな顔。


玲奈『私、陰で聞いてた。

でも、中の様子は見えなかったから…中に入ると承くんが床の絨毯に正座してた。

私の事懇願してたのは聞いてた…承くん土下座してたの?』


俺は恥ずかしいとこ…見られては居ないけど…知られると面倒だなって思った。昔外町に土下座させれてるから2度目!慣れてる!なんて言い出せない状況。


玲奈『…新二くんに強要されたの?土下座しろ!って?

承くん…承くん…ごめん…ごめんねぇ…!』


後部座席で俺腕にしがみつき泣き出す玲奈さん…

俺は抱きしめたい衝動に駆られながらも引き離す。


『俺が好きでやった事。

強要されては居ない。でも頭が高いんじゃね?って言われたから。

土下座なんて何でも無い。いやまじで。』


玲奈『私はばかだ!承くんに話したらきっと無茶するってわかってた。

でも承くんならまたよくわからない方法でなんとかしちゃうんじゃないか?って自分勝手でエゴ全開な…ごめんね…ごめんね…。』


なんて…愛しいんだろう。

この娘のためなら俺は何だって出来る。


『大丈夫!大丈夫!

松ちゃんもさ?思ったより悪い人じゃ無いね?』


俺は思ってたより松ちゃんは悪い人では無いと思っていた。

俺と会う必要は無いのに会って直接話せたこと。

土下座強要しなかったし、土下座した時しんどい顔してたこと。

俺の懇願なんて無視出来るのに翻意しないと言いながらも俺が香椎さんの代わりになる機会?お願いを一応は試してくれると言ってくれたこと。

中華料理奢ってくれたこと。


それを説明して、


『だからね、会ったら俺スキンヘッドのボディガードにいきなり殴られたり?間男認定されて拉致られてとんでも無いこともあるかもしれんって緊張していたの。』


※承くんは悪夢で見た玲奈にえっろいことしている人間的に最低最悪の極悪非道なクズ野郎を想像していました。



玲奈さんはまだポロポロ涙を流しながら俺の話を聞く。

…言わないけど実際これからでしょ?

無理言ってすぐに俺は失格って追い返されるかもしれない。

人の居ないところでは酷いことされるかも知れない。

ただ形だけですぐダメになるかも知れない弟分?舎弟?まあパシリ。



『またまた昔もこんな事言ったっけ?

好きな娘のためなんだから無茶するし、無茶なんか何でも無い!

…でも色々起こるかも知れない。』


玲奈さんは緊張の面持ちで頷く、

狭い車内、近い近すぎる!


気づけば玲奈さんは俺の手を両手でキュって握ってる。

あぁ可愛すぎる…!

今日だけ!


俺も両手で玲奈さんの両手を握りながら、



『必ず俺が松ちゃんとの婚約はなんとかしてみせる。

例えどんな手を使っても。

だから多少の事は我慢してくれない?』


玲奈『うん…でも無茶はしないでね…。』


『うん、幸い弟分?舎弟?近くに居れば見える事も!』


俺はソッと手を離した。

名残り惜しいけどもうこういうのしないって決めてたのに!

俺の心弱い!それだけ涙目玲奈さんは引力すごい!


『香椎さん、離れて。』


『承くん!もう!』


香椎さんと改めて距離を取ろうとして…目を爛々とさせながら外から観察する優奈さんと目が合う。

このお姉様は…!



優奈『…承くん漢だね…!

玲奈の目に狂いは無かった!』


うんうん頷いた優奈さんは車に乗り込み、俺を家まで送ってくれた。

車を降りる俺に手を振る玲奈さん。


優奈さんはニコニコしながら車を降りて来て、

真面目な顔で、


優奈『本当にありがとう承くん。

玲奈から大体は聞いている。

何かあれば私にもすぐに連絡して?』

※プロポーズっぽいのされた!まで聞いています。

※※さっきまで誤字ってポロポーズになってましたw


以前アドレス交換はしている。

優奈さんに助力をお願いする事もあるかも知れない。

俺は頷いた。





家に帰っても考えるのはもちろんこの先のこと。

俺は松ちゃんの弟分として何が出来る?

弟分…弟キャラ…良いかも知れない。

でも俺長男な訳で。

幸い俺にはひーちゃんっていう最高のモデルケースになりうる弟コンテンツが側に居た。


俺は一晩弟について考えた…!

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