第410話 懇願

『…香椎さんを…香椎玲奈さんを解放してあげてください。

彼女が申し出ている…婚約破棄受け入れて頂け無いでしょうか?』



新二『…嫌だよ。

俺は玲奈さんが欲しい。』


香椎玲奈が欲しい…それはまったく同感だよ。

いつもの武将ジョークどころじゃない緊張感!

俺は言葉を続けた…!


『香椎さんは…いつも自分のことを後回しにしちゃう損な性分の女

子です。

子供の頃からいっつも人の為、皆んなの為に!って駆け回っている娘でした。

今回の会社の事だって…。』


新二『…だったら俺と結婚したら?

結婚したら香椎商事だって松方グループと太い繋がり、縁戚関係が出来て万全の体制になる。

今後も似た事(会社の危機)あるかも知れないし?

一生不自由はさせないし、贅沢だってさせてあげられる。

お前に出来んのか?』


俺は首を振る。

贅沢!なんか斬新な響き!

…でも香椎さんは贅沢なんて望んじゃいない。

香椎さんに意思が婚約破棄なら…俺は叶えてあげたい!


『でも、香椎さんが望んでいる事をなんとかしてあげたい。

…彼女はまだ結婚したくないんです。

大学へ進学して、夢の弁護士になりたいって願っているんです。

もし…もし彼女が好きなのなら応援してあげられませんか?』


新二『…ふー。

最高学府のあの大学行って弁護士…そこまでくると可愛げないだろ?

そこまでの学歴必要無いでしょ?鼻につく。

まして俺が一生養うし。

だったら女性としても最高の時期の18歳で結婚した方が俺は良いと思うな。』


いやらしい顔している新二くんに間髪入れず、


『香椎さんが望むならそれも良い。

でも香椎さんは弁護士になって人を助けたいって言っていました。

自分を守ってくれた人が居る、言葉だけで周囲敵に回しても一歩も引かずに彼女を守り通した男が…その人のようになりたいと。

彼女は現実的なのに理想を追い求めるところがあって…きっと理想の自分になりたいだけなのかも。』


その漢が目の前の新二くんじゃないのは今はわかる。

…どんな漢なんだろう?玲奈さんの初恋の漢…!

※わかってませんw



新二くんは少しイラつきながら、


新二『ずいずん玲奈さんに詳しいし、思い入れあるみたいだけど…

なに?付き合ってるの?』


『いえ!付き合ってません!

とんでもない!』

※堂々の即答!陰で聞いてる玲奈イライラ☆


新二『じゃあなんで?なんでお前がしゃしゃって来るの?』


『好きだからです!』


俺はもう恥も外聞も無い!

即答!

※一転陰で聞いてる玲奈ニマニマw


俺は特別口が達者では無い。

でも、本気で伝えたいことは本気で伝えるしかない!


『お願いします!

玲奈さんは…すごい娘です。

優しく、賢く、他人の事を1番に考えられる子です。

子供に夢を、大人に希望を与えられる社会に役立つ人になる人です。

もってる能力と持ち前の人当たりできっと多くの人を助けられる人になると信じています。お願いします!どうかお願いします!』


新二くんは黙って聞いていた…。

でも、ニッと笑うと、


新二『お願いするなら…頭が高く無い?

お願いの仕方あるだろ?』


俺は躊躇わない。

即座に赤い絨毯に膝を付いた。

新二くんの目を見ながら必死に絨毯に額を擦り付ける!

人生2度目の土下座!



『お願いします!

玲奈さんを…香椎玲奈さんを解放してあげて頂けませんでしょうか…!

お願いします!…お願いします…!』


新二くんは慌てて、


新二『ばっか!

玲奈さんが見たら俺嫌われちゃうだろうが!

今時土下座なんかしたってしょうがないっしょ?

わかんだろ!』


俺を引っ張って起こした…!

…思ってたよりマシ…。

こいつも外町みたいに人を土下座させて悦に入るようなドSな最低最悪な可能性を考えていたけど…。

玲奈さんに見つかって嫌われるの恐れてるだけかも知れないけど…

土下座見たいってタイプの男じゃ無いらしい…?


新二くんはイライラしながら、


新二『メリットデメリットの話と誠意だろ!』


『お金なら無いです。

すいません!うち貧乏なんで!』


新二『…まあお金が欲しい訳じゃないんだよ。

うち超金持ちだし。』


本当にこんなセリフを聞くことになるとは…!

まじ金持ち…。


新二『じゃあ?お前は何が出来るんだよ?

美人で可愛い。料理が出来て気さくで人当たりの良い多芸多才なJKを諦めさせるような何かお前持ってんのか?

お前は何が出来る?』



…。



『今は何者でもありません。

…自分が何が出来るか探している毎日です。

でも!でも!精一杯松方さんにお仕えします!

身命を賭して必ず役に立って見せます!』


新二くんは鼻で笑う。


新二『お前何言ってんの?

美人JKの玲奈さんを手放してまでお前を飼う意味がわからん。

JKと男子高校生ってだけで石ころとダイアモンドぐらいは価値に差があるわ!』


ガチャ!


玲奈『戻りましたー♪』

※表面ニコニコですがコメカミビキビキですw


香椎さんは俺が赤い絨毯の上で正座してる光景に息を呑む、

俺は戻ってきた玲奈さんにフォローを頼む。

目線でだけど伝われ!



玲奈『…承くんのお願い聞いて頂けませんでしょうか。』


すぐ察してくれた玲奈さんは同じく横に正座してすぐにも頭を下げる姿勢。

新二くんは慌てて、


新二『玲奈さんはそんな事しないで!』


玲奈『…立花くんは…こう見えても熱くまっすぐな男の子です。

私は何度も何度も助けて貰いました…。

今回も…承くんでダメなら諦めもつきます…!』


れ…香椎さん…!


玲奈さんは敢えて理由を言わずにただ頭を下げた。

土下座でも無く、ただ頭を下げる…。


新二くんは困った顔して頭をかいていた。

そして婚約破棄したくない、弁護士入れてくるだろうけど…って以前に聞いた圧やらごねるやら色々言い始めたけど玲奈さんの真剣な瞳に最後は…。



新二『…わかったけど…婚約破棄に合意した訳じゃない。

こいつ(俺)気に入らなきゃすぐ出禁にするし?

こいつがどんなに使えても翻意はしないと思うけどね?

それでいいの?パシリに使うよ?』


パシリ?パンとかお使いすんの?

いや、なんでもする。



『もし…万が一俺の働きに満足して…頂けたら香椎さんとの婚約破棄、圧などは…。』


一応念押しする。


新二『まあ無いと思うけどね?

もし俺を満足させたら考えてやっても良いよ。

でも生半可なことじゃ俺は絶対に婚約破棄しないからな?

わかってんの?』


『重々承知しています。

じゃ俺はパシリ?パシリって事で良いですか?』


玲奈『…パシリ…。』


玲奈さんがジッと新二くんを見つめる…。

新二くんは居心地悪そうで…さすが玲奈さん…違った香椎さん。



新二『…まあ?舎弟?弟分っていうか舎弟?』


ヤンキーマンガで見るやつ!

わかった!なるほど!俺の役割わかった!



『なんてお呼びすれば良いですか?

松方さん?新二さん?

舎弟…弟分なら…兄貴?兄さん?』


呼び方超大事!

親愛を抱きつつ敬意を払う呼び名…。

やっぱ兄貴…。


新二くんはゲンナリした顔で、


新二『兄貴とか兄さんとかゾッとするわ…。

好きに呼べよ?』


え?俺兄さん居ないからなんか憧れあるんだけど…。


『香椎さん?どう?』


香椎さんは形の良い顎に人差し指当てて、

うーんって唸ってすぐに、



玲奈『松方さんで良いんじゃ無い?

名前は年上で遠慮あるでしょ?

新二くんは前にあだ名付けられた事ないって言ってましたよね?』


新二くんは頷く。


新二『…好きにしろよ。』


『…まっちゃん…。』


新二『…!

やめろ面白い事言わなきゃいけないみたいだろ!』


…こうして、俺は週に何度か松方さんの家を訪ねてパシリみたいな舎弟の仕事をすることになったんだ。

…松ちゃんって良くない?

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