第397話 迷走!玲奈さん!

玲奈さんは真っ赤になりながら口にする言葉は俺の頭をショートさせる…。



『…承くん…が…確かめて…?

…私が…処女だってことを。』



なんという事でしょう…。

そんなナレーションが聞こえてきた気がした。

そっか、玲奈さんが言うなら…なんて訳にはいかないわけで。


だって、童貞の俺でもわかる。

きっとそうゆう事に至る時って雰囲気が違うはず。

玲奈さんは真面目で色々な負荷がかかって…いやかかり過ぎてオーバーフローしてんだろうと思った。

じゃなきゃ…世界一清楚できっとエロい事なんて考えもしない玲奈さんがそん事言うはずが…そこまで追い詰められて…。


歯を食いしばりながら、俺は目を瞑って玲奈さんの服のジッパーをあげる。

惜しい…惜しすぎる!

こんな機会二度と無いんだろうなぁ…。


『思い詰めないで?玲奈さん。』


『…私…魅力無い?』


悲しそうな顔しないで玲奈さん。


この狂おしい程の葛藤を表現出来たら!

俺の心の中は色々な感情が渦巻く!

…正直バッキバキですよ…俺。


女の子に恥かかせるなよ!

好きだから抱く!向こうが言い出した!

慶次だって惚れたら抱いちゃう!


…そんな情欲や衝動と裏腹に思い出すのは…


玲奈さんの泣いた顔、笑った顔、困った顔、怒った顔。

それはこれまで一緒に過ごしてきた香椎玲奈さんの顔たちで。

こんな弱ってるとこつけ込んで…玲奈さんの初めてを…。


『そんな事をしなくても…俺は玲奈さんの言葉なら信じてるし必要ない。』


『…そんなこと?』


ちょっと複雑そうな表情も美しい。


『…でも、こういうのよくない。

男はそうゆう欲があって…衝動的に制御が効かなくなる生き物…。

魅力的ななな女の子ならなおさらさら。

他の男に絶対そん事しちゃダメだよ?』


噛んじゃった…。


『…他の男の子にこんな事する思っているの?』


俯く玲奈さんが小さくそう呟くと…

室内が急に暗くなったような錯覚と…殺気が…


(俺死ぬかも…)


『…そうだよね…怒る資格なんか無い…。

…陰で婚約者居たなんて…。』



玲奈さんは一瞬キレかけて自責の念で膨れ上がった殺気がしゅんってしぼむ…危なかった…!

それより、長い付き合いの俺には気になってることがある。


『…まだなんかあるんでしょ?』


勘だけどそんな気がする。

うん…あのね…。


玲奈さんは続きを話し出す、

ここは法治国家日本。

大概の事は両者合意の上で成り立つし、片方だけの意思でどうにかなるわけでは無い。

…基本的には。

直接的では無く言葉を選んでいたけれども新二くんは言った。

婚約破棄は絶対に応じない。どんな手でも使って引き伸ばすしごねる。

香椎商事にだって利害度外視で圧をかけるし、県内最大の企業団体の力でなんでもするって。

…承くんにだって…色々圧かけるかもって匂わされた…。


法治国家でまして未成年だからね?

キチンと手続き踏めば…それこそ弁護士の範疇だね、婚約自体は解消できる。

ごねるから時間はかかるだろうし、多少お金はかかるかもだけど破棄は出来るはずだ…でも松方グループが敵対と圧は結構厄介で面倒臭い…。

まして承くんにまで…


新二くんは言葉を選んで言ってた。

頭良い方じゃ無いけど臆病って言うか、計算高いところがあるね…。

玲奈さん酷評!



(…なんで俺に圧?まあいいけど。)

※婚約時新二に好きな人がいるって玲奈が宣言してるからです。


俺は松下グループの大きさよくわかんないし(俺程度でも名前は知ってる)、別に殺し屋さんが来るとかじゃ無いんでしょ?


…でも玲奈さんの守りたい実家家業を人質に…なんて嫌な男だろうか?

俺の中で松方新二という男は最低最悪のクズ野郎でいい大人なのに女子高生と結婚しようとするとんでもない下衆なスケベおじさんって印象。夢の中で出てきた新二は最低だった!(夢です)

玲奈さんが魅力的すぎるから起こった悲劇とも思う。



金持って権力があるとことわりを無視していいのか?

こんな不条理ってある?

あんなにいつもいつも頑張ってる娘が。

人のためにって自分を投げ出せる女の子が何故こんな目に合わなきゃいけない?

しかも玲奈さんが大事に思ってる…家業で誇りで家族の象徴である香椎商事まで人質とって…。



玲奈さんは赤くなりながら、



『それでね…私の最初で…最後の男になる…なんて言われたの…。

…それでね?』


それでね多い!いやそれより!

俺は一瞬でキレて体を起こした!

瞬間!玲奈さんに引き倒された!

…うん、力強いよね…玲奈さん…。


玲奈さんは再び真っ赤になりながら…



『…だからね…私の…初めて…奪って?

私が処女じゃ無くなれば…執着しなくなるんじゃ…?』



『…可哀想に…こんなに追い詰められて…。』


『…ふぇ?』


『…いい?玲奈さん…

女の子が簡単にそんな事言っちゃいけない。』


…俺、最高に男前な事を言った!

ひゅー!俺カッコいい!

バッキバキになりながらも!理性が上回り正しいこと言えた!

血涙流しそうな程勿体無い事してる自覚はある!

流石に三度目は耐性がついた…!危なかった…!

…でもなんで玲奈さん…目が死んでるのかな?



少し間があったけど俺たちは話しを続ける。


どうしたらいいか?どうしたら…?

答えは出ない…。

当たり前だ、昔の学校イベントのトラブルと訳が違う。

大人が相手、しかも権力と財力がある大人。

中学生頃の理由無い万能感や意味の無い大人不信だった頃と違う。

高校生になり、アルバイトを始めた俺は大人がいかに大変か。

その大変な世界で力があるって事がどれだけすごいかうっすらわかる。


そもそも玲奈さんでどうにもならない事…俺に…

それでも頭は回転する、必死に必死に。

俺は玲奈さんが好き、死ぬほど好き!多少…いや無茶ならいくらでも出来る…!それでも無茶する方法すら浮かばない訳で…。


そんな中…。



ボソボソと寝そべりなが話していた俺たちふたり。

急に玲奈さんの顔がパッと輝いた。


少しニヤッと笑いながら、



『承くん!私良い事考えた!』


多分それ違ってる思う…。


『…玲奈さん?人が良い事考えた!って時は悪いこと考えているもんなんだよ?』


ふふー!玲奈さんは少しドヤ顔で俺に持ちかけてきた…



『承くん!

…駆け落ち…ってどう思う?』



…今日の玲奈さん飛ばしてる…。


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