第393話 カップルシートのアクシデント【side伊勢成実】
圧迫感ある壁にドアが連なる光景は何度見ても違和感ハンパない。
承もおおぅ…とか言いながらキョロキョロしてる。
部屋番号見てカードキー通す。
ピピ!ドアが開錠される!
部屋は狭い4畳半ほどのスペース。
奥に大きめモニター。
フッカフカなマットはシーツで覆われていて、枕が2個ある。
承狼狽えながら、
承『…ここは…その…?』
あたしはなにか誤解していることがすぐにわかった。
『ラブホじゃないよ!防音たって!限度あるしー!
ここはカップルがまったりデートする定番スポット!』
部屋によってはダーツ、ビリヤード、カラオケ、普通にインターネット出来る環境もある。
カップルシートだからって!その…えっちい事しちゃダメ!
監視されてるし!規約もあるの!
『今日はね?ここでゴロゴロデートしようと思って。』
承の不調、寝不足、体調不良を聞いて疲れる負担になるデートは考えられなかったから。
ここでなら?承の好きな漫画読んだりしながら個室で防音だからお話しも出来るし?ゆっくりリラックスして楽しみながら休めるんじゃん?って思って。
その辺を軽く説明する。
承『知らなかった…!』
承はカルチャーショックみたい(笑)
あたしは承を連れ出す。
ドリンクバー、漫画、お菓子や食べ物も買えるしチェックアウト時払えば良い。
承『俺カレより種類多い!
ソフトクリーム食べ放題?!』
『こどもかよ。』
驚愕する承が面白すぎて突っ込んじゃう!
承はスポーツ漫画を何点か持ち込んで、あたしはファッション誌と少女マンガを持ち込んでからドリンクバーで2種類とソフトクリームを山盛りにして部屋へ戻る。
承『それは掟破りじゃないの?!』
『は?良いんじゃない?』
承『俺も行って来る!』
ソフトクリームを山盛りにして持ってきた承はホクホク顔でチビチビ食べながらマンガを読み始める。
フカフカマットにシーツかけてあるのである意味大きなベッドでふたり寝そべってるようにも感じるわけ。
…さっきラブホじゃ無いって言ったけど…致しちゃうカップルの話は…よく聞く。
寝っ転がったり、座って背もたれに寄っかかったり1時間ほど過ぎた。
承はすっかり順応して1人で飲み物持ってきたり、本を入れ替えたりする様になった。
読みながらもダラダラ話ししてるし、時々話しが盛り上がって本を読むのやめたり。
防音だから静かで店内にかかってる低音量のクラシックが優しく響く。
すっかりリラックスした承は…
承『…ここに住みたい…マンガ…ドリンクバー…ソフトクリーム…カップラーメン…伊勢さんまで居るし…。』
『今日は成実って呼べ。』
承『成実さん?』
『なに?』
承『…俺眠くなってきた…。』
『寝れば良いんじゃない?』
今はふたりで背もたれにおっかかって本を読む。
寝れてなくってしんどいんだろうに…うなされてるって望ちゃん言ってたし。
デート中に寝たら腹立つけど…今回は仕方ないよね?むしろ少し寝たら?
承はゆっくり舟を漕ぐ様に…うっつらうつら。
本を持つ手は下がりきる。
あたしは本を畳んで傍らに置く。
毛布あるよ?かけてあげよう…
こつん。
あたしの肩に承の頭が当たる。
…本当にしんどそう。
あたしが癒してあげられたら良いのにな…。
肩を貸す位しか出来ないけど…。
承『くー…。』
少しずつ寝息を立てる承。
いつも頑張ってるよね?
香椎玲奈のことショックだったよね?
良いお兄さんしてるね?
いつだって労ってあげたい。
でもあたしと承の関係は…。
承の頭が少しズレた…
う?上手くズラして膝まくら…。
膝まくら…ってどうなのかな?
男の子は好きって聞くけど…あたしの膝まくらじゃ起きたらがっかりするかな?
承の頭がズレる!
膝に!肩から膝って落差大きすぎない?!
承起きちゃう!
ああああ?!
承『くぴー。』
承はリラックスした寝息を立ててる…。
隣り合って肩を貸した。あたしは肩から膝に承の頭を移動させようとして落差で起きちゃう!って思って途中で軌道修正を図った。
横向きから身を捩って承側を向いた状態で承の頭をキャッチ!
…胸で。
ぽよぉん!って胸が弾む!
承は幸せそうな寝顔で斜め45°からあたしの胸に顔を埋めてる…!
あ、あ、どうしたら?
胸まくら…姿勢はお互いに斜めってて不自然な体制…。
どうしよ?どうしよー!
男の子が…立花承があたしの胸に顔埋めてる!
斜め45はしんどいのであたしは脚を組み直し、ハンカチを腿の上に載せて、横座りで姿勢を変えつつ…承の頭をキープ。
キープって押さえるような感じだから承は胸の谷間にハマってる感じ…。
『…んっ…。』
胸に承の寝息がかかる…。
なんて恥ずかしい…。
いつか…男の子と…承と…その致したらこんなもんじゃ無いんだろう…。
ガバッと抱きすくめられて…さっきの寝起きみたいに…組み敷かれちゃって…
あたし…抵抗…。
妄想しちゃう!
でも妄想しながら承は綺麗にあたしの膝まくら。
承『…くぴー…くぴぴー♪』
本当に寝るとひーちゃんみたい。
あたしがこの数分どれだけドキドキしたか、妄想したか!
悔しくて鼻を摘む。
『…ん…ん…。』
寝苦しそうで解放。
承『ぷしゅー。くーぴー。』
『もう、しょうがないなぁ。』
なんかあたしも眠くなってきた…。
さっき食べたラーメンでおなかいっぱいだからだね。
ふわぁ。
時刻は2:30。静かでふたりっきり。
本当にふたりきりでこんな密室に居るのにリラックスしてる承は図太いな。
そう思いつつ寝顔から目が離せない。
眠いけど勿体無いから寝顔を見てる…。
様子が変わったのはそれから10分後…。
承『…うん…うーん…。』
うなされ出した…起こした方が良いのかな?
苦しそうな承を見てられない…起こそうって思った瞬間…。
承はうわ言のように…
承『…れいなさん…。』
承の瞑った目から涙が一筋溢れ落ちた。
いじらしくって、羨ましくて、可愛くて…
あたしは泣きそうになりながら…承のほっぺにキスをした。
ぱ。
長く押し付けていたから唇が離れるとき湿った音がした…。
唇に…する勇気は無かった…。
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