第387話 気遣いあんドーナッツ【side伊勢成実】
俺が俺らしく side立花承
景虎『悩み過ぎんなら考え無い方が良いって事も多いんよ。』
9時にバイトを退勤する時オーナーの景虎さんが俺を見ながら言った。
数日前、何があったん?話すと楽にもなるっけ言ってみ?の一言で俺はもうマーライオンの如く吐き出してそれを黙って聞いた景虎さんは、
『結局自分で消化するしか無いんだよな。』
ってポンポン肩叩いて笑ってくれた。
何なの?このイケおじ。
とても奥さんの尻に敷かれてるとは思えない。
景虎さんはアドバイスを押し付けて来ないし聞かなきゃ教えてはくれない。
まず自分で!ってモットーみたい。
そんな景虎さんが冒頭のセリフ…。
俺見てわかるほど?誤魔化せている!って確信していた…!
※わかります。
景虎さんは俺の肩ポンポン叩いて、
『色々思う事はあるんだろうけどさ?
好きなものは好きって言える気持ちは大事にした方が良いし。
迷って探し続ける日々が答えになるんだぜ?』
『…なんか良い言葉ですね。』
景虎さんは自分を学が無いチンピラヤンキーだったって言うけど俺にとっては憧れの大人であり尊敬しちゃうほどの漢で人生の師匠って思っちゃう。
いつも景虎さんの言葉は的確で俺にスッて入って来る。
もっとなんか言ってくれないかな?
景虎『…これ以上は
さっき流れてた。なつかしー。』
景虎さんはニヤニヤ笑いながら、店の外を指差す、
『承、お前を心配して青井も仙道も永遠ちゃん…ヌシちゃんは…まあいつも来るか。
伊勢ちゃんがほら待ってんぞ?』
景虎さんが指差す店外には心配そうに店内を覗き込む見知った派手な美人が居た。
『はい!じゃ上がります!』
景虎『承。自分の気持ち早くわかると良いな?
わかったら迷うなよ?』
『うっす!』
景虎さんはすごい。
☆ ☆ ☆
あんドーナッツ side伊勢成実
『よっすー!立花もそろそろあがりかと思ってさ?
帰り道ちょっと怖いし居るかなー?って思って寄った!』
まあそうなんだけどさ。
香椎玲奈の婚約者発覚事件は立花には衝撃的だったらしく立花はいつもと同じような振る舞いをしつつ細部がすっごいおかしい。
ぼーっとしてたり、真剣に考えこんでいたり涙目になってて情緒不安定なのね。
自転車で並走しながらいつものように話すんだけどさ、
一見普通なのに同じ話しを繰り返したりして心配になるよ。
今もさ?
立花『祖父母が旅行行ってるんだけど望も月曜から修学旅行でひーちゃんが情緒不安定で…。』
『それさっき聞いたしー!』
(立花も情緒不安定でしょー!)
あたしはため息をついた。
絶対これは良く無い。
失恋したら後遺症というかダメージは受けるもんだろうけどそろそろ一週間でしょ?
向き合わなきゃいけない感情だけど…しんどいなら少しでも和らげる?目を逸らす事も心を守るために必要でしょ?
でもね、気を使われるって気付くのもしんどいはずなんだよね。
…立花が昔言った言葉がある。
人と人って誤魔化しが効かないものじゃない?
って。
私もそう思う。
向かい合って目を見て話せば伝わる事がたくさんある。
それって誤魔かしの効かない人対人の部分。
ひょっとしたら世の中には天才的か詐欺師とか居て本当に騙せる人も多いのかもしれない…、
それでも人と人なんだもん。思いは伝わるし、嘘や誤魔かしってどこかわかるじゃないかな?
だったら私から立花に送るシグナルは明るく楽しみながら元気出して欲しいよってこと。
素直な気持ちで立花もどう?って思いで!
『あー!もう夜なのに!あんぱん食べたい!』
女の子がはしたないかな?
でも立花はうん!って頷いて、
立花『シェアしよっか?』
大きな河の側のコンビニに入りあんぱんを買う!
…あんぱん無かった…あんドーナッツで良いか…。
でもあんドーナッツの方がカロリー高い…。
…他どうしよう?2人分の飲み物買って…。
立花はハミチキを買ってた。
立花『これも食べよ?』
すぐ側の公園で2人で並んで座る。
暗い公園、なんかドキドキする…!
『ハミチキはシェア難しく無い?』
立花『え?2個買ったけど?』
小さい公園には遊具も無い。
ベンチと灯があるだけ。
バイトあがりの軽食…これがあたしを狂わせる…!
これ以上胸大きくなって欲しく無いし、太りたくは無い!
でもおいひー!
ふたりでハミチキをはむはむ食すと立花はむふー。って満足そうな吐息を漏らす。
夜9時半のハミチキ…悪魔的な美味しさだよっ!
そしてあんドーナッツを半分こ。
立花は端っこから、あたしも端っこから食べ始める。
食べ物の話題が1番邪気が無く盛り上がるし元気出る!
立花もすっかりニコニコで、
立花『真ん中のあんこのセンター部分最後に食べたい』
『わかる。』
立花『あんドーナッツうま!』
『うま!だよね!』
別に盛り上がる必要ない会話で盛り上がる要素もない会話。
だけども!バイト終わりのテンションと夜のテンション!
そして甘いものが沁みてテンションあがる!
立花『そもそもさ!あんドーナッツって狂気の産物だと思うんだよ!』
立花が力説する!
『わかる!甘い!旨い!カロリー高い!
あんぱんだって可愛い良い娘なのにさらに盛り盛りしちゃった?感じー!』
あんぱんが可愛い子ならあんドーナッツは盛り盛りの激かわギャルだと思う!
立花には伝わったみたい。
立花『だよね!魔改造みたいなもんでしょ!
あんぱんで成立してるのに?
油で揚げる…だと…?!』
『それに!さらに!粉砂糖をまぶすって言う狂気!
カロリーは更に倍プッシュ!』
『『あんドーナッツ考えた人は頭がおかしい…!』』
※夜のふたりの感想です。あるはあんドーナッツ大好きです。
深夜の公園、あんドーナッツで盛り上がるふたり!
色気は無いよ、でも立花が元気になって笑顔になってくれたら…!
それには?
それには…。
私は立花に向き合い単刀直入。
『明日ラーメンデートしよっか?』
思ったよりスッと出た。
おねがい!って気持ちが少しあざとい上目遣いおねがいになってしまった事に自分の女の部分を感じる…!
とわわんには…前もって話は通してある。
元気出してもらう為ラーメン誘うってだけ。
…でもさ?…香椎玲奈が居ないなら、立花の心が空っぽなら…
私…少しだけ…踏み込んでもいいのかな?だめかな?
『…行く。
…デート?デート?!』
行くって言ったあと立花はびっくりしてた。
『…彼氏居ない私と彼女居ない立花がデートしたってなんの…問題無いし…。』
恥ずかしい、恥ずかしいよぅ!
私は自分に言い聞かせる様に理屈を並べる!
立花は目を白黒しながら頷いた。
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