第386話 自称色仕掛け【side紅緒永遠】

承くんと玲奈の婚約者に出会って3日経った。

承くんは一見元気そうに見えるけど考え込んだりため息吐いたり目に見えて落ち込んでいる。

本人は隠し通しているつもりでいつもと変わらない振る舞いのつもりらしいの。可愛いよね♡


生きてるうちに出来る事って限られてしまう。

それなのに他の物にばかり気を取られてる玲奈が羨ましい半分、腹が立つって気持ち半分で見ていた私にとっては今回の事は正直自業自得だと思う。

自業自得だと思うけど玲奈の事だからきっとよく分からないしがらみを背負い込んで自分がなんとかすれば良いって思ったんだろう。


なんて本末転倒な女の子なんだろう。

過ぎたるは及ばざるが如しとはよく言ったものだよね。

優秀で有能で何でも出来る玲奈は愚かで何も出来ないように見える。



2番手の私が承くんの胸の真ん中に陣取る玲奈に勝つにはここしかない!

卑怯だろうと、弱ってるとこにつけ込んでるとしても私が勝つにはこの機会にねじ込まなきゃ!


私は毎日、猛攻をかける。



☆ ☆ ☆

放課後、俺カレ。


当然いつもの1番テーブルから承くんを召喚!

にっこり微笑みかけながら、


『承くん!いつもの!』


承くんは淡々と、


承『はい、ダブルハンバーグセットライス多めでデミグラスとおろし。セットの飲み物はアイスティー。

ポテトフライとクリームソーダ。』


うん、最近はコレだね!

ぱんぱん!隣を叩きながら、


『隣、失礼します♪って言うんだよ?』


景虎『ヌシちゃん、それキャバクラの作法だぞ?』


通りかかるオーナーの景虎さんに揶揄われちゃう。

さっき信くんも抱っこさせてもらった!

信くんも5ヶ月、大きくなってきた!


赤ちゃん見ると私だって女の子だから意識しちゃうよね。

そう言えば…ひーちゃんにもお願いされたし…!

まだそこにいる承くんに、


『承くん、ひーちゃんに赤ちゃん頼まれたんだよね♡』


承『ひぃ!』


承くんがビビってる!

私だって…シタこと無いもん!ビビってるのは一緒だよぉ!

どうしよう?承くんの承次郎のサイズどうなってる…!?



ふう、落ち着け?私。

上手く口説け?

いつも恥ずかしがるからいけないんだよ!

キラッキラの笑顔と明るさで!



『こう言うのはどうかな?

女子高生は幼妻!恥辱の家族計画!』



承『うん、全然頭に入って来ない!

保利くんの顔が見たくなった…!』


承くんは厨房に消えて行った…。

承くんが…男の子の方が好きだったらどうしよう?

とりあえず俺カレ今日も美味しい。



☆ ☆ ☆

『調教女子高生!恥辱の…!』

『強制相部屋!弱みを握られた女子高生…!』

『鬼の哭く街カサンドラ!』


私の必殺色仕掛けはほぼ不発に終わってしまった!

1番食いついたのが鬼の哭く街だったんだけど…。

男の子って毎日えっちい動画見てるんじゃないのかな?

何で食いつかないんだろ?

色仕掛けは今は無理みたいだよ。


☆ ☆ ☆


日々感じる。

承くんの中で玲奈は大きくまだ心は動かないんだろうって。


それを認めるのも悔しい。

あんな他の事にかまけてた玲奈に、

まして婚約者居たなんて衝撃を隠してた玲奈に勝てない。

承くんの心を掴んで離さない玲奈に嫉妬を感じる。


今こうしてチャンスって攻める自分にも何か嫌悪感がある。

私は矛盾しているんだ。

正々堂々勝って承くんを手に入れたい自分と今のままじゃ勝てないからこの好機になりふり構わず奪ってしまいたい自分。


理想は前者なんだけどそうは行かないって事はわかっているんだよね。

だからなりふり構わずに勝ちたい!って思っている。


…だって、もしも負けたら承くんが手に入らない。

承くんの赤ちゃんを産めない…。

そしてひとりで寂しく死んでいく…。


私はやはり手を緩める訳には行かないって思うんだよね。

勝てなきゃ何も始まらない。


来週は仕切り直して行こう。

ちょっと焦り過ぎてた。

追えば逃げる、自明の理。

今は承くんを元気づける事が先だった。


そんな事を思ってた夜になるみんが承くんが落ち込んでるから明後日の日曜日の休みラーメン誘ってみるわってロイン来た。

…なるみんも付き合い長いもんね、心配だよね。

いってらっしゃいって私は快く送り出す。


なるみんなら大丈夫だよね?

長い間ずっと一緒に居るのになにも無かったんだもん。


来週になればまた私が!

私はひとまずなるみんに承くんを元気づける事に賛成しておく!


…でも胸がざわめく。

あんなに魅力満載なるみんは今の玲奈を忘れたいはずの承くんにはどう映るのかな?

承くんが元気出なきゃ始まらないでしょ!って言い聞かせて私は考えない事にしたんだよね。








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