第384話 翌日
『おっはよー!』
いつもの朝のコンビニ。
…ここ辛い、昨日ここであった事を思い出すから。
青井と伊勢さんに朝のあいさつ!
GW楽しかったね!またいつもの日常だよね!
明るく元気に!
青井『おっす!テンション高いな?釣りキャンプ楽しかったなー!』
伊勢『あの後砂だらけで…海ってあんな楽しいのになんであんなに砂まみれに…!』
『あはは!!楽しかったね!』
話題は釣りキャンプ!ゴールデンウィーク楽しかったね!って話!
休みボケとか超心配!
俺たちは休み明けで充電充分!キャッキャ笑い合いながら自転車で東光高校へ向かう!
主に釣りキャンプの話を俺主導で話しながら!
いつもの道!
でっかい河の半ば頃だろうか。
伊勢さんが心底心配そうに、
伊勢『…ねぇ立花?
そろそろ何があったか話しして欲しいかも。』
え?
青井『…え?わかんないと思ってたん?
本当に?傷付くわー。』
え?鋭い伊勢さんを誤魔化す為にハイテンション立花でお送りしている朝8:15。
伊勢さんを誤魔化せないのは兎に角…青井まで?
『…ちょっと何言ってるかわからない…。』
伊勢、青井『わかるだろ!』
ハモって突っ込まれた…さとりなの?
※相手の思っている事がわかる毛むくじゃらな妖怪。
山で木こりの側に現れて木こりが思ってる事全てを言い当てられ『斧で殺すか…』ってとこまで読まれてもう無理!ってなって無視して木を切ってたら斧がすっぽ抜けてさとりに当たって退治出来たって逸話がある。
ひーちゃんは心の中で
ひーちゃ(ぼくはようかいのなかまだよ!ともだち!)
って心の声練習しましたw
…現実逃避に弟を思い出す…。
ふたりの心配そうな視線は俺を締め付ける。
…それでも…玲奈さんの婚約を他人に言って良いものか?
あの時、知って欲しく無いって思ってる顔だった。
俺は申し訳無く思いつつ、
『…言えない。』
信頼している青井と伊勢さんに何も言えない。
彼女らはどう思うだろう?
呆れたかな?友達なのにってがっかりするかな?
そっと並走する自転車2台を見る。
伊勢さんも青井も仕方ないって顔して、
伊勢『じゃ、言えるようになったら教えて?』
青井『だなー。マゴチ食った?美味かった?』
『…煮魚にしたら美味かった。』
伊勢『えー!あの後釣れたの?!』
伊勢さんは初日しか来てなかったからね、
宏介がヒラメ釣って目をバキバキにしてた話しで身を捩って笑う伊勢さんは胸が強調されて…!ダメだよ!
橋の向こう側、こないだの釣りキャンプで仙道やあっちゃんと合流した地点で、
伊勢『…言いたくなったら言えばいいし?』
パチンって伊勢さんはウィンクして行こっか?っていつもの陽気な笑顔で笑った。
☆ ☆ ☆
学校に着くと、
紅緒『承くん♪』
紅緒さんがニッコニコでやってくる。
成実『とわわん!』
紅緒『なるみん♪』
成実『…とわわんご機嫌だね?』
5月2週、ゴールデンウィークが終わって日常が戻ってきた。
…でも俺はフワフワ足が地につかないようなそんな気分で午前を過ごす。
相変わらず担任は保守的だし、紅緒さんは新しいことをやりたがる。
…俺はそれを中間でバランスを取る役目。
俺もそういう仕事がある方が良い。
手が空くと考え込んじゃう、喪失感と虚無感が容赦無く心を抉る。
それでも気合いは入らずぼんやりと過ごす。
☆ ☆ ☆
お昼、いつもの社会科教室。
紅緒『やっぱり先生が良かったよー!』
隣の準備室に居る社会科教師の去年の担任に愚痴をこぼす紅緒さん。
俺たちは仙道を含めて全員でご飯食べている。
…あっちゃんも来たらいいのにな。
あっちゃんも時々来るんだけどね。毎日とはいかない。
そう思いつつ思い浮かべるのは…玲奈さんの事ばかり。
紅緒『…えへへ、承くん♪』
…今日は紅緒さんが近い。
理由はわかるし、彼女なりに心配してくれてるかも知れないんだけど…。
…もう、玲奈さんには婚約者居るんだし…。
去年一度あったっけ…彼氏出来て諦めなきゃって…。
でも、今回は…。
皆んなが側に居てくれるから俺はそういう事を考える暇も無いほど笑ったり困ったり忙しかったり。
紅緒『ねー?明日はバイトでしょ?今日は休みじゃない?
遊びに行かない?』
『…行かない。なんか休み疲れなんかな?
今日は帰るわ。』
紅緒『えー?まあ仕方ないか…。』
諦めてくれた紅緒さんに安堵しつ、青井は柔道部仲間と俺カレ行くらしい。
仙道は釣りの話しを楽しそうにしていた、またやりたいって?
…良いんじゃ無い?今はちょっと無理だけど。
俺はぼんやり1日を過ごした。
15:40、終わりのHRの号令をかけて俺は帰り支度をする。
紅緒さんが今日は1日側に居た。
『じゃ、帰るわ。
また明日!』
青井『おー!また明日ー!』
紅緒『えー本当に帰っちゃうの?今日なら?特別に。
女子高生の甘い誘惑…恥辱の…』
『…いつも思うけど恥辱ってなに?』
真っ赤になった紅緒さんは破壊力あるんだけどワードのチョイスでまったく想像つかない世界なのでピンとこないのだ。
俺は誘いを断り今日はひとりで帰る。
いつもの道を何も考えずに。
☆ ☆ ☆
衝撃 side伊勢成実
紅緒『ちぇっ、承くん帰っちゃったかー。』
大型ショッピングモールのエイオンで私はとわわんとスイーツを食べてる。
対面に座るとわわんは色白で華奢で可愛くって同じ女の私から見てもすっごい美少女で。
…それに比べて私は気が強そうで胸ばっかり大きい威圧的なギャルなんだよなーって思っちゃう。
やっぱり男の子はとわわんみたいな守ってあげたくなるタイプや香椎玲奈みたいな気が利いて女子力高い女の子が好きなんだろうなぁって思う。
それにしても今日のとわわん?
なんかアグレッシブだったり少し神経質な素ぶり見せたり少し情緒不安定。
どうしたん?
…ずいぶん立花にピッタリくっついていたし?
話題が一周して、その事を聞こうと思ったらとわわんが急にね。
紅緒『…ここだけの話しだよ?
…玲奈にさ?婚約者が居たの!ね?なるみん知ってた?』
さっきまでの上機嫌から一転真剣な顔!
それより?内容が?婚約者?
とわわんの説明によると…
GW最終日、立花家へ遊びに行った。
それで帰り道、いつものコンビニで玲奈と太ったデブのおっさんが居て…。
そこで玲奈の婚約者だと名乗り、玲奈は俯いて震えていた…と。
『太ったデブのおっさん…意味被ってる…。』
私も動揺して、関係無いとこに突っ込んじゃった…。
紅緒『だからね、今の承くんは手負いの獣みたいなものでね。
手厚く優しく保護しなくちゃいけないんだ。
ぐいぐい行きすぎても逆にいやらしいし、傷心のはずだから今は好機なんだけど…。』
『ぐいぐい行きすぎじゃない?』
永遠は目をまんまるくして驚いてた。
…香椎玲奈が…。
私の胸に変な胸騒ぎが走る。
とっく諦めた好意だった。
立花は香椎玲奈が好き。
だったら…物分かりの良い女風のムーブキメて立花を応援してあげようって思ってた私は何処へ向かえば良いのかな?
紅緒『なるみん?おーい!なるみーん!』
『…あ、あぁごめん。』
その後もとわわんの計画や今後の攻勢を語ってたけど全然頭に入らない。
この想いは芽が出ないはずのものだった。
…それでも…
好機…なのかな?
それでも私の胸に浮かぶ絵は朝の痛々しい立花とケンカ別れした子供の頃の香椎玲奈の泣き顔がチラついて私は心安らかでは居られなかった…。
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