第382話 難航【side香椎玲奈】


新二『婚約破棄は断固拒否する!

玲奈さんを手放したりできない!お金に糸目付けないし、どこまでも争う覚悟だ!

君じゃなきゃ駄目なんだ!』


新二さんは涙目で訴える。

はぁ…困った、想定してた最悪の展開だよ…。

私はこんこんと今回の婚約は家同士の、商売の繋がりでそもそも未成年の私と10歳も離れた新二くんと結婚は無理があると説明する。


新二くんは政略結婚だとそれ位の年齢差は当たり前だし、結婚した方がお得だ!って言うんだよ?そういう問題じゃ無いんだよなあ。



『でも…最初からそういう取り決めでしょ?

お互いの欲しいモノが手に入るまでの…

極論だけど私の心を新二くんが獲るか、うちの会社が持ち直せるかって…お互いに納得済みで話しあって、私が好きな人に遠慮あるからって名称を…とか…。』

※200話暫定的婚約者候補もどき(仮)参照。



話しているうちに新二くんは冷静さを欠いてきた。

もう思うまま、吐き出していく。



新二『それはそれ!

あんなの方便だよ!絶対に玲奈さんを手放したりしない!

香椎家程度の資産家なんて松方グループならいくらでも圧かけられる!

夢?そんなの必要無いでしょ?!

好きな人?そんなの子供のおままごとみたいなもの!

うちには金と権力と社会的地位が揃ってる!

だからそんなの捨てて俺と毎日楽しく暮らせばいいんだよ!』



『私には夢も好きな人もどっちも人生を賭ける価値があると思ってるし、

その為に生きてるんだ。新二くんにはわからない?』


新二くんは私に縋るように、


新二『前から思ってたんだ…女にそこまで学歴要らない!

鼻につくんだよ!家訓だから天月レベルの娘から選べって言われただけで…!

玲奈さん以外の高学歴女なんて全員クソだったわ!』

※新二くんの感想です。

ある的には高学歴女子イイ!って思いますw



そんな風に思ってたんだね…?

※新二くんは4流私大卒です。寄付多めで。


新二『女の子は愛されて結婚した方が良いっていうだろ!

俺大事にするから!玲奈さんにとって最初で最後の男になるから!』



ゾッとする。

…この人と結婚するって本当の意味で考えた事無かった。

このままいくとその可能性がある…ってリスクで考えていた。

このまま行くと…新二くんと…そのえっちい事して…新二くんの子を産む?



新二『俺のママだって!

親父に望まれて結婚して!当時は彼氏が居たけど家業や一族の為親父と結婚して何不自由無く暮らして、一族も安泰なんだぜ?』


さっきよりゾッとした…。

松方さんの奥さん…パパママの先輩だけど…すっごい美人で評判の才媛だったらしいけど…数回お会いした感じ目はガラス玉みたいで意思が無い。

なんでもはいって返事するお人形みたいな人。


あれが何不自由無い?!

頭がクラクラする…。


もうダメだ…吐き気がして来た。


『…女の子は物でも無ければ、人形でも無い。

新二くん?嫌いになってしまうよ、そんな事言わないで?』


新二『嫌われたっていい。玲奈さんはいつかわかってくれるはず!

絶対幸せにするから!』


話はまったく交差しない…。

どうしよう?思ってた以上に我儘で…手に負えない…!


新二『その為にうちには金があるし権力がある、

絶対にどんな手使っても玲奈さんを手放さない!

絶対に…!』


『…そんな…。』


そこまで私に執着するなんて…。

今日はまだ、話しただけ…両親に相談して法的な措置でもなんでも…


もういつものコンビニ前に着いていた。

これ以上は話すこと無いし拗れるだけ。

法律の勉強だってしている。私の信じた法の力を正しく使うべきだよね!

今日はまず伝えただけで良しとしよう。


『また、来月お話ししましょうか。』


そう言って私は冷静に車を降りる…。

こんなとこ同級生や承くんに見つかったら死ねる。


ふう。ため息ついて車を降りると慌てて新二くんは追いかけてきて、私の手を掴む。

また?怒りが沸々…!





承『…。』

永遠『…。』



そこに居た承くんとバッチリ目が合う。

なんで?なんで承くんがここに居るの?

しかも永遠まで…。



本当は今日立花家にー誘われていた。

永遠が承くん家行くから玲奈も来なよ?って。

私は今日婚約破棄するから今回は断っていた。




新二『玲奈さん?友達かな?紹介してくれないかな?』




紅緒『だれ?玲奈のおじさん?』


…最悪だ…最悪のタイミングで…最悪の現状が知られてしまう。

血の気が引く…。承くんはポカンとしている…。


『永遠まで居るの?…後で説明するからね?今日はもう行って?』


私の懇願に承くんは、


『忙しいのかな?じゃ行くね?』


承くんは了承してくれたけど永遠は食いついてきた…。


紅緒『えー?紹介してよ?

私、玲奈の友達の紅緒って言います。

おじさんは玲奈の親戚の方ですか?』



新二さんはは顔を引き攣らせて呟く、

正直10歳離れてれば世代は違う。

でも!いまそこじゃ無い!制止しようとする私を気にせず、


新二『おじさん…めっちゃ失礼な子だな…。

俺は玲奈さんの婚約者。松方新二って言うんだよ?

玲奈さんの友達なんだ?よろしくね。』



承くんが理解出来ないって顔をする…!

永遠は根掘り葉掘り聞き始める。

新二さんは嬉しそうに婚約の話しをする。


ふたりは今どうでも良い。

承くんが…承くんの理解出来ないって眼差しを私は直視出来ない…!


承くん…!

違うの!喉まで出かかった言葉をとても発せない。

暫定的婚約者候補もどき(仮)などと名称変えても意味は一緒…ただの私の言い訳。


承くんに知られる前に全て片付けるつもりだった。

余計な心配させたく無かった。今ならわかる悪手だった。

初めから相談しておけば…後悔先に立たずとしか言い様が無い。


婚約者が居るって言ったら、この義理堅い武将みたいな男の子は決着するまで会う事すら難しくなっちゃう…そう思っちゃったんだね。。



それでも私は動けない。

承くんの目も見れない。

永遠と新二くんの話し声だけが響くけど内容は入ってこない。

何か言わなきゃ…何を言えば良い?

婚約者が居たる…事実だもん。


いつもと違い頭は回らない。


ずっと黙ってた承くんが、顔を上げた…!




あぁ。



承くんはにっこり笑ってた。

顔だけは。






承『…びっくりしちゃって声も出ませんでした。

…玲奈さん、松下さんご婚約おめでとうございます。

お邪魔してすいませんでした、失礼します。』


そう言い、永遠の手を引いて承くんは駅へ早足で歩いて行く…!



言葉は出ない。

それなら!態度で!



がし!って新二くんに掴まれた!

私は瞬間で振り払い、ダッシュで追いかけようと!


新二『婚約のこと話した!もう彼もわかったでしょ!』



私は目眩を起こして座り込んだ。

頭は動け!って指令を出すけど体は動かない。


新二『大丈夫?掴まって?』


『…。』


手を払いのけ新二くんを無視してスマホを取り出してお姉ちゃんにかける。

ワンコールで出た!



優奈『どうしたん?玲奈?』


『…お姉ちゃん…目眩起こして動けない…すぐそこのコンビニ。

迎え来て?』


優奈『は?!』


お姉ちゃんは2分で到着した。


新二くんに私はにっこり笑いかける、



『また、日を改めて…。』



絶対に、新二くんに泣き顔見せたく無い…!



優奈『玲奈?玲奈?動ける?救急車?!』


玲奈『恥ずかしいよぅ。

お姉ちゃんおんぶ。』


優奈『デュフフ…。』


お姉ちゃんが聞いたこと無い気色悪い声を出すけど今それどころじゃなくって…。



久しぶりに、お姉ちゃんにおんぶされて家へ戻る。

コンビニから家まで5分はかからない。



『お姉ちゃん…聞いて…?』


私は泣きながらお姉ちゃんの背中で今日起こったことを、出来るだけ私見を交えずに客観的に伝える。

手短に疎漏無くきっかり家へ入るまでに説明が終わった。


お姉ちゃんは自分のベッドに私を横にする。

羽織っていた上だけ脱がして。



優奈『…顔色悪いし、肌艶も良く無い…少しクマもある。

玲奈、数日無理してるでしょ?』


GW色々忙しかったしね…。

私は欲張りで何でも出来るし、何でも手に入ると思い上がっていたバカな女の子なんだよ。


優奈『…多分過労と強いストレスっぽいけど…祝日だから明日になって治らないようなら病院行こう?お姉ちゃんが送ってあげるから。』


『私、休んでる暇なんて無いよ!』


飛び起きようとする私をお姉ちゃんが抑える。


優奈『ほらまだ無理でしょ?これ飲んで少し寝なさい。』


…栄養ドリンクを渡されて私は一息で飲む!

お姉ちゃんはそれを優しい目で見守ってくれて、もう一度横になるように促しながら、


優奈『それで?さっきの客観的な話じゃなくって玲奈の主観での話し聞かせて?』


お姉ちゃんが優しい表情で私の手を片手で握りながら、私を撫でてくれる…。




『うっううぇぇぇ…あのね…あのね…。』


私は童女のようにお姉ちゃんに泣きながら話した。

婚約を破棄出来なかったこと、何が何でも私を手放さないって宣言されたこと。その場面を承くんと永遠に見つかったこと。

…承くんが『おめでとうございます』って言葉を…。



その言葉で目の前が真っ暗になった。

何よりそれがショックだったから。



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