第381話 婚約解消の申し出【side香椎玲奈】
GW最終日。
前々からタイミングを伺っていた婚約解消を申し出る。
今日はその大切な日なのね。
私はパパとママに相談してこのタイミングにした。
3月末の決算で松方グループは増益で好調だった事、
香椎商事も大幅な増益でもう松方グループの取引に依存しない事、
婚約も一年を超えると履行の意思ありって取られる事、
私のメンタル的にそろそろ婚約は破棄して…承くんに全力…ごほんごほん…自由に戻りたい事。
諸々の条件的に、申し出るならここだろうって事になった。
パパ『本当にすまなかった、玲奈。
何を言っても…。本当にすまなかった…。』
ママ『…玲奈ごめんね、ありがとう。
玲奈のおかげだよ。』
優奈『…。』
昨日の夜にパパ、ママ、お姉ちゃんが抱きしめてくれた。
こちらから申し出るからにはゴネられたり、慰謝料を請求される可能性も高いらしいけど多少の金額ならシッカリ払ってキッパリ婚約破棄したいって言ってくれた。
会社の取引も長い付き合いがあったし、足元見られて随分な要求もあった。
続ける気なら続けても良いし、コレを口実に取引を中止になるならそれも仕方無い。
そう言ってくれた。
すんなり、綺麗に行くとは思えないけどうまくいけばいいと思うな。
去年7月から新二くんのメンタルに関しては大体把握してケアもしてきた。
かなり信頼は得ているはずだし、大事にもされている。
新二くんはワガママで気分屋で飽きっぽくって強欲で捻くれてる世の中をナメてる子供部屋おじさんだけども寂しがりやでコンプレックスが強くて愛情に飢えている普通の男の人って部分も持っている。
婚約破棄で傷付けたくは無い。
彼はトラウマが多かったけどこの一年ほどでだいぶ緩和されて来たようにも見えるし。
そして!私が間にたって元同級生の鶴田さんと良い感じにもなっている。
そっちを応援しつつ今後は多少の年齢差のある友達付き合い位ならば続けよう。
そして、ランチに出かけた私たちは久しぶりに2人きりで会った。
またドレスコードのある高級店。
新二『これうまいな。』
言葉と裏腹に新二くんの表情は冴えない。
美食が高じて最近は何食べても感動は無いが新二くんの口癖なの。
…私や鶴田さんとご飯食べると美味しいって言う。
それは一緒に食べる人で違うんだよ?って言うと目をまんまるくしてたっけ。
新二『…今日は何か言いたい事あるの?』
新二くんは少し居心地悪そうに椅子の上でみじろぎする。
こっちを伺っているね。
『…聞いて欲しいお話があります。』
長引かせても仕方ない。
新二くんにとっては急な事かも知れないけど私にとっては既定路線なの。
出来るだけ新二くんを傷付けないように、コンプレックスを刺激しないように…。
関係を白紙に戻して欲しいって申し出は彼側からしたら不快な話しかもしれない。
私は続ける、
頭を下げながら、
『…新二くんと私の婚約を、破棄して頂きたいと思っています。』
新二くんは悲しそうな顔をしている。
…ごめんね、でも私には…!
新二『前に言ってた好きな人?夢の為?香椎商事さんが持ち直したから?』
『全部です。』
嘘は言いたく無い。
この約一年、多少思惑はあれど正直に接してきたつもり。
家業の為、ひいては社員さんや家族の為とは言え松方グループの力借りたのは確か。
でもそれは返したし元々いつでも破棄出来る条件だったしね。
でも、義理を欠くような事はしたく無いし、新二くんのトラウマを増やすような事もしたくない。
新二『…最初の約束通り婚約破棄なら取引は白紙になるよ?』
『…仕方ないと思います。
でも、家族の力で香椎商事は様々な取り扱い品目やお取引先も増えて取引して損な相手では無いはずです。』
パパの努力、ママの営業、お姉ちゃんの持ってきた外国との繋がりで香椎商事は大きくカラーを変えた。
嫌味や皮肉で無くうちとの取引は決して損じゃ無いはず!
新二『…破棄するからには慰謝料を請求するかも。』
新二くんは未練がましく言う。
『多少はしょうがないです。両親とも相談済みです。
でもこの一年会って話す機会も多かったしケンカ別れは嫌かな?って思ってるんだよ。』
最後はいつものように話す。新二くんは初対面の頃の歯に衣着せぬ物言いが良かったみたいだから、基本的に年上だからやや敬語程度で話していたの。
ランチは終わる。
食後のコーヒーを飲みながらお世話になったってお礼を言う。
コレでおしまいじゃ無くたまにならご飯とか行って?
鶴田さんとの進展教えてください♪
って話して、新二くんは、
『あぁ。』
『うん…。』
とか上の空の返事だった。
一応、両親も今日新二くんご両親を訪ねているはずって話した。
…これで一カ月に一度の面会が無くなる…これ承くん会う日にしたら!
年12回は多く会えるぞ!ひゃっほー!
私は内心るんるんだった。
顔には全く出さないで微笑みを浮かべてるけど。
また青いスポーツカーで送ってくれると言う。
まあこれで最後か…これ目立つしあんまり助手席居心地良く無いんだよね…。
そう思って何気ない話ししながらもう少しで近所って信号待ちの時、急に新二くんが私の手を握った…!
ぎゅうううう!!
新二『痛!いっっった!!』
『私握力48kg位ありますよ?』
何するの?正直コレまでの信頼を裏切られた気分だった。
18歳まで婚約は強制力無いし、同意が無ければ肉体的な接触、性交渉などは出来ないって取り決めだったから。
そうしたら新二くんは興奮状態で、
新二『…俺は婚約破棄に合意しない!』
いら!っとしたよ?
新二くんはいつもと同じなんだけど目だけギラギラさせて、
新二『だって、やっと見つけた俺の理解者!玲奈さんと別れたく無い!』
私は別れたいよ。
『…私にも夢や好きな人が居るので。』
駄々っ子に言う事聞かせるのは難しい。
何故なら自分のことだけで向こうが聞く耳を持って居ないから。
新二『そろそろそんな事言うんじゃ無いか?って思ってたんだ。
もしそうゆう話し来たら親父には拒否するように頼んである!』
『…仕方ないですよね、慰謝料はお払いします。
ケンカ別れはしたく無かったけど…。』
本当に残念、でも一年カウンセラーみたいに話しを聞いてコーチングしてきたけど真心通じなかったかぁ。
相手がある事だし仕方ない。私はそう結論付ける。
新二『婚約破棄は断固拒否する!
玲奈さんを手放したりできない!お金に糸目付けないし、どこまでも争う覚悟だ!
君じゃ無きゃダメなんだよ!』
『鶴田さんはどうするんです?』
私が必死に間を取り持った元同級生の美人シングルマザーさん。
新二くんは少し赤くなりながら、
新二『バツイチのアラサー子持ちだからね?
流石に正妻には出来ないよ…親父に怒られる。
玲奈さんが正妻で鶴田さんは愛人。』
新二くんは言い切った。
私は空いた口が塞がらなかった…!
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