第380話 添い寝妹。
俺はショッキング過ぎてそのまま家に帰る気分じゃなくって中学時代歩いた道を辿り中学校前まで着くとそのまま宏介を訪ねた。
そして21時まで宏介の家に居てとぼとぼ家へ帰る。
宏介や宏介家族に迷惑かけてしまった…。
反省しつつ家へ入る…。
もうこの時間だと表閉めてるから裏口からこっそり。
まあ家族に見つかっちゃうわけで。
祖父『遅くまで遊んできたね?』
祖母『ご飯にも帰って来ないから心配したよ。』
父『9時位って思うかもだけど人様の家だって生活リズムあるからな?』
母『宏介くんのママに会ったらごめんなさいって謝らなきゃだわ。』
バイトでもっと遅い時間に帰ってくるのに、こういうイレギュラーはやはり心配かけるらしい。
俺も迷惑かけたって自覚あるから素直に謝って自室へ戻る。
…もう、なんにもしたく無いし考えたくも無い。
ひーちゃんはもう寝ていた。
いつものように天使の如き可愛い寝顔。
部屋に戻ると、望がすぐに寄って来た。
そのホットパンツみたいな丈の短いパンツやめなよ?
俺が話しをしたく無いから望が避ける説教モードで話しかける。
でも望はお構いなしに俺のスペースのベッドに腰掛けて、
望『永遠ちゃん送って行ったきりで?
私とひーちゃんが買い物して家戻って来ても兄ちゃん帰って来てないって聞いたからどうしたん?って思ったよ。』
俺が紅緒さん送りに行くのと同時にのぞひーも学校や幼稚園で使う物を買いに母さんと出かけてて俺が居ないからどうした?って思ったらしい。
望はおどけて、
望『そうしたら!珍しく宏介くんからロイン来て!
お前の兄ちゃん預かった。って何事?!って思うじゃーん♪』
『あぁ、ちょっとね。』
望は一転真面目な顔で、
望『…そしたら、少ししたら…香椎先輩が来た。
あのクリスマスほどじゃ無いけどドレスみたいなヒラヒラなお姫様みたいな格好で。
アポも取らずに慌ててうち来るなんて香椎先輩は絶対にしない。』
『…。』
俺が黙ってると望は少し焦ったように、
望『なんかあったの?
…言いたく無いなら仕方無いよ。
ケンカでもしちゃった?あたしが間にはいるよ?
ふたりともきっとなんか誤解が…』
瞬間的に弱音を漏らしそうになった、でもそれは八つ当たりみたいな汚い感情の混じった自分で感じる嫌な声だった。
『ケンカはしてない。
…でも香椎さん来ても取り継がないで良い。』
自分の声だけど苛立ちを感じる声。
望が息をのむ。
望は敢えて気にしないってていで、
望『えー?だって香椎先輩だよ?
意地張るのやめなって、絶対になんかの間違いか誤解でしょ?
すぐ先輩に会いたくなっちゃうって!』
ふふー!って玲奈さんのモノマネをする望に俺はハッキリ言ってしまう。
『…香椎さんには婚約者が居たんだ。
だいぶ年上で金持ちで多分…弁護士?社会的ステータスも持ってる大人の男の人。』
望『ふーん…。
…え?ええ?!婚約?!
婚約者って結婚の約束をしている人って意味ー?!』
俺だけじゃ無いんだ…。
望はびっくりしてベッドから転げ落ちた…
ベッド乱すなよ…。
望『…まじで?嘘でしょ?
流石に…?』
疑う望に説明するんだけど…俺の心がだんだん荒んで来るのを感じる。
『紅緒さんを駅まで送る途中のコンビニで香椎さんと婚約者さんに会ったんだよ。
ハッキリそう名乗って、香椎さんは黙って俯いて目も合わせなかった。』
望『そんな…。』
『紅緒さんだって聞いてる。確認もした。
そう言う事らしい。』
望はまさか…そんな…?ぶつぶつ呟く。
俺だってそれずっとやってたからね。
やっと現実に戻ってきた気がする。
でもね、そうすると…心の中は真っ黒になっちゃう。
汚い、人に見せたく無い感情。
恨み言やなんであんな思わせぶりな態度を…!
もうその頃婚約してたんでしょ?
中学校の卒業式で俺が逃げたから?
でもあんまりじゃ無いか?!
喉まで出かかった汚れた奔流を押し留めているのは…目の前の妹だった。
望は大きな目にいっぱい涙を溜めて、布団に入り、
ポンポン。
自分の横に来いってジェスチャー。
いや…そこ俺のベッドなんですけど?
望はその頃にはハッキリポロポロ涙をこぼしながら、
俺を抱きしめて、
望『…兄ちゃん辛かったね?悲しかったね?
ショックで宏介くん家行ったんだね…。
兄ちゃんの事だから、きっと香椎先輩に怒り声も出さずにおめでとうとか言って立ち去ったんでしょ?』
なんでわかるの?
望『兄ちゃんは優しい。そんな裏切りみたいな事されたら怒って良いと思うよ。そのおじさんボッコにしても良かったんだよ。』
『…いや、良く無いだろ…。』
望『きっと兄ちゃんはあたしが香椎先輩大好きだから遠慮して悪口や恨み言も言えないんだよね?そんな兄ちゃん見せたくないんでしょ?』
『…。』
望『辛かったら泣いて良いし、愚痴言ったって良い。
妹だもん、聞くしかできないけど何でも聞くよ?』
『…ああ、ありがとう。』
…言えるか…。
俺が香椎さんと疎遠になっても望は香椎さんと繋がり続けるだろうし、だっさい兄を見せたく無い。
望は続ける、
望『だってさ、あたしは香椎先輩と兄ちゃんは好き同士なんだと思ってた。
疎いあたしでもそう思った。
兄ちゃんだって本当は怒りや嫉妬もあるでしょ?』
『…。』
言えない…。
望『だってそうでしょー!
うちの兄ちゃんをたぶらかして!清楚ぶったあのカマトト女襲撃してやろうか!って思うもん!
は?婚約者?ふざけんな!場合によっては兄ちゃん間男だよ?
そうゆうの兄ちゃん嫌いだって付き合いの長さで知ってるでしょ?
あのエロガッパ!』
…空虚なメンタルが元に戻りつつある今、そうゆう黒い粘度の高い嫌な感情がジワって出て来るのを感じてる。
でも、望にそれを出したく無い。
そんな事を思っていたら望がだんだんキレ始めてきた!
望がダークサイドに落ちそう!
横でキレられると不思議と人間って落ち着く物で…。
俺は望の髪を撫でながら、
『…玲奈さんは…そんな娘じゃない…
俺はそう思う…。』
すると、ニパって望が笑顔になった。
望『…なんだわかってんじゃん!
わかってるなら取り次ぐななんて言わずに、会って話しをした方が良いんじゃ無い?
ずっと好きだったんでしょ?婚約が本当だとしてもこのまま終わりなんて悲しすぎるよ…。』
そう言うと望は声をあげて泣き始めた。
…望が泣いたら…泣けないじゃ無いか…。
『…泣くなよ…。』
望『兄ちゃんが泣けないから…泣いてるのぉ…。』
しょうがない娘だな。
俺は望を撫で撫でしながらうとうとし始める。
色々あり過ぎた、疲れた…。
望は髪撫でられるとすぐに眠くなるタイプなんだけどむにゃむにゃもう寝落ち寸前。
もう目が開かない状態。
望『ひーちゃんほど…きゃわいくないけどぉ…あたしもにいちゃん…いやしてあげたいよぉ…。』
望もひーちゃんも俺には過ぎた妹弟だよ。
俺はどっちも可愛いよ。どっちも宝物だよ。
望を撫でながら気付けば眠ってしまった。
ベッドは狭くて兄妹でぴったりくっ付いて寝た俺は望の体温の高さと寝相の悪さに少し辟易しながらもぐっすり眠った。
ひとりだと考えちゃ寝れなかったかもしれない。
…でも翌日わかった。喪失感はこれからが本番だったんだ…。
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