第378話 GW最終日

紅緒『ひーちゃん!承くん!』


東光駅改札で紅緒さんが嬉しそうに向こうから来るのをひーちゃんが手を振って答える!


ひー『とわちゃん!とわちゃん!とわちゃーん!』


紅緒『ひーちゃん!会いたかったよ!』

ひー『とわちゃーん!』


ひし!と抱きつくふたり。

このふたり仲良しなんだよね…?

9時前にひーちゃん宛に電話とかしてくれるんだよ。

心臓が悪いって共通項がそうさせるのかすごく相性が良いって言うか気が合うみたい。自分宛の電話をひーちゃんは心待ちにしてるみたいだしね。


ひー『ぼく!きのう5さいなったの!』


紅緒『そうなんだ?!確かに前より凛々しい!』


ひー『えへへー!』


紅緒『承くん?なんで教えてくれないの?

ごめん、何も用意して無くって…途中のコンビニでなんか買ってあげるよ?』


ひー『ううん!だいじょうぶだよ!』


紅緒『もう!ひーちゃんは義弟おとうとみたいなものだもん!

お義姉ちゃんおねえちゃん祝いたいよ!』


なんか不穏当な響きを感じた…邪悪な企みを垣間見たような?


うふふ!あはは!

一緒に手を繋いで歩き始めるこのふたり。

大丈夫だよね?急に香椎さん出てこないよね?

俺はビクビクしながら周囲を警戒する。


ひーちゃんを真ん中に散歩しながらお家へ向かう。


俺 ひー 紅緒

こんな感じ。



紅緒『…いつかひーちゃんがお兄さんになって承兄ちゃんや永遠姉ちゃんと手を繋いでくれなくなる日が来るんだね…。』


…そんな日…来るかも。そうだよねひーちゃんなんて呼べなくなる時期が来て…兄貴となんか一緒に出かけられるか!とか言われたら…兄ちゃん泣いちゃうかも…!


紅緒『誕生日が何回か来ると…そうなるよね?

だから今の時期って貴重なんだよ、きっと。』


『確かに。』


紅緒さんにしてはまともな事を言う。

コンビニでひーちゃんにおやつを買ってくれた紅緒さんに礼を言う。

もちろんひーちゃんも。


ひー『きをつかわせてごめんね?』


紅緒『気にしなくっていいの!お義姉ちゃんおねえちゃんはひーちゃんだいすき!』


ひー『ぼくもだいすき!』


このコントいつまでやるんだろう?

まあ仲良いのは微笑ましい。

でもこのコンビニ…ひょっこり香椎さん出てこないよね?

家すぐそこだけど…。


紅緒『玲奈用事があるって断ってきたもん。

あいつ余裕すぎなの。私だったら承くんが可愛い女の子とふたりっきりになっちゃう!って即キャンでこっち来るけどな!』


『でもこのゴールデンウィークではさ。

釣りキャンプに差し入れしてくれたし、望のスランプ治してくれたし、ひーちゃんに誕生日クッキーくれたよ?』


紅緒さんはギョッとして、


紅緒『なに?!玲奈も来たの?!

しかも望ちゃんスランプに、ひーちゃん誕生日クッキー?

油断ならない…!』


紅緒さんは何様視点なのやら…?

でもいつも香椎さんは俺と俺たち妹弟と関わりが多い。

毎回感心しちゃう。ほんといつもお世話になってるんだよ。


話題はひーちゃんがずっとアピールしてる5歳!って話し。


紅緒『ひーちゃんが大きくなって兄ちゃん姉ちゃん離れしたら承くんたちの方が絶対凹むよね…?』


『べっこべこに凹むわ…。』


ひー『いつまでもはなれないよ?』


ひーちゃんは不思議そうに聞き返す。

…でもいつか離れる日がくるし、ひーの世界が構築されていってそっちに忙しくなって…そんな日は必ず来る…。

寂しいけど当たり前のこと。


紅緒『だから!この瞬間を!楽しまなきゃだね!』


俺は頷く。

俺が1番紅緒さんの学んだ事はこういった、

『今の大事さ』

だと思う。


しんどい時期があり、先が見えない真っ暗な日々を送った紅緒さんにとって『今』って言う時間はまさに憧れていた『最高の普通』

だから紅緒さんはいつも全力。

それが彼女の毎日を輝かせているんだってわかる。

紅緒さんが真面目な顔で、



紅緒『…もし…もしもさ?ひーちゃんが手を繋いでくれなくなったらさ?』


うん?俺もひーちゃんも不思議な顔で聞いている。


紅緒『その頃は代わりに2人の子どもが真ん中で手を繋いでいるかもね?

呼び方も『パパ!』『ママ!』になっちゃって?』


紅緒さんはイタズラっぽく微笑んだ。

その笑顔に少しだけドキッとする。

こういう風にしっとり来られると怒れないし、本来の可憐な紅緒さんが出てきて面食らう…!ダメだって!俺は玲奈さん好きなの!

しかしその言葉を理解した男が…!



ひー『まって!とわちゃん!

とわちゃんがにいちゃんのあかちゃんうんでくれるのー?!』


あっ!!!しまった!!

ひーちゃんはおめめキラキラ!紅緒さんはおめめギラギラ!

にたぁって笑うとわんこ!


紅緒『うん、産むよ!

何人がいいかな?承くんと相談だけど…永遠ちゃんはふたりがいいかな?』


ひー『おねがい!おとうとがいいの!

ぼくめんどうみるし、にいちゃんやねえちゃんにしてもらったようにかわいがるからー!』


ひし!っと抱き合うふたり!

やめて!


度々出てくる小学校横の川にかかる歩道橋の上で抱き合うふたり…!


紅緒『…じゃ…今日は不純異性交遊…。

実録!恥辱の孕ませ女子高生シリーズ…いた!』


チョップしちゃった…ひーちゃんの前で不穏当な発言は即レッドカードだぞ?


『紅緒さんイエローカードな?2枚で退場。』


サッカールールはキャプテン⚪︎つば⚪︎読んでたはずだから大丈夫だろ?


紅緒『イイエロカード…♡』


俺がチラッと目線を送ると大袈裟な外人FWみたいに私は何もしてないデスって大袈裟なジェスチャーをした。


本当にとわんこは油断ならない。



☆ ☆ ☆

昼前に家に着く。

祖父母に挨拶した紅緒さんは茶の間でくつろぐ。

もう少ししたら何か作ってくれるらしい…申し訳ないからって言っても、


紅緒『良いの良いの!好きでやってる☆』

パチンとウインクするのよ…。

申し訳無いよ…でものぞひーは食べ物に弱いし…。

※承も弱いですw


望『たっだいまー!永遠ちゃん来てるー?』


望は香椎さんに飴ムチ食らってから部活無い日も自主練するようになった。

芹ちゃんたちに付き合って貰ってるらしい。丁度帰って来たんだね。


紅緒『来てる来てるー!イェーイ!』


ハイタッチして盛り上がるふたり。

望は食べ物くれる人好きだよね…?


望『永遠ちゃん!今日何?なにを作ってくれるの?』


紅緒『今日はホットケーキ☆』


ひー『ホットケーキ!やった!』

望『お!良いね?』

※ひーちゃん5歳になったのでこれからはカタカナ使いますw


…なんでホットケーキって焼きたてあんなに美味しそうな香りするんだろ?

焼きたてあんなにフカフカなんだろう?


なんか焼き方と何入れるとコクが…とか説明してくれたけど全然覚えていない。

気付けば3人して夢中で食べちゃって…。


『あ、ごめん!俺食べてばっかりで…!』

望『むぐむぐ、うん、うま♪メープルシロップビシャがけー♪』


横で猛獣はむっしゃむっしゃ食ってる。

紅緒さんは優しくしっとり微笑んだ。


紅緒『夢中で食べてくれる三兄弟の顔見てると嬉しくなっちゃう♪

きっと玲奈も同じ気持ちなんだろうな?って思った。』


そう言いながら、キッチンで油も使用してた紅緒さんは串を手渡してくれた。


紅緒『甘いモノだけじゃ満足しない食いしん坊さんでしょ?

はい、アメリカンドッグ♪』


望『永遠ちゃん好き♡』


紅緒『ふふ♪紅緒永遠に清き1票を?』


望を抱き込もうとするな。

でも、揚げたてアメリカンドッグうま!

マスタードとケチャップで美味しく頂く!


紅緒『これは安い魚肉ソーセージの方が美味しいのよね?

こないだのフランクフルトの時思い出して作ってあげようって思ってたの♪』


ひー『おいしいね!とわちゃんありがと!』


紅緒『いえいえ♪おそまつ様!』


紅緒さんのホットケーキとその生地使ったアメリカンドッグめっちゃ美味くて幸せモードで午後から4人でゴロゴロしながら遊んだ。

立花家名物のレトロゲームはお客に好評w


4人でおやつ摘みながら色々話して笑い転げて時間はあっと言う間に過ぎていく。

夕方になり、そろそろ紅緒さんは家に帰る。


ひー『またきてね!やくそくだよ!』


紅緒『また来るよぅ!ひーちゃん!』


握手を交わし別れを惜しむふたりは姉弟みたい。


望『…本物の姉に勝る愛など無い…!』


望はもうちょっと弟離れするべきだろ。

※おま言う。


ひーちゃんと望は幼稚園や学校で使う物を買いに行くため母さんとこれから少しお出かけ。ここでばいばい。


望『永遠ちゃんまったねー!』

ひー『ばいばい!ばいばーい!』


後ろ髪引かれるような思いなのか何度も後ろ振り返る紅緒さん。


紅緒『…私兄弟居ないから…承くんが羨ましいな。』


『また来ればいいじゃん。』


たわいも無い事を話しながら紅緒さんペースで歩く。

小学校の横を通り、歩道橋を渡り、コンビニで曲がって駅へ向かって歩くいつものコース。

もう1人で行き帰り出来そうだけどやっぱ心配。送り迎えはしてあげたい。


コンビニを向こうに見て、歩道橋を渡り終えた頃、


紅緒『去年、まだそこまで承くんと親しく無かった頃…

ゴールデンウィークに何処か誘ってくれても良くない?って思ってたの。

まあ今年も何処にも誘って貰えなかったのけれども。』


『いや?女の子に釣りキャンプはちょっと?』


紅緒『わかるよ!でもあの頃は承くんスマホ持って無かったし、私もまだクールキャラ気取ってた…。

一年でこんなに仲良くなったし、理解は深くなった。

…来年の今頃はどうなっているのかな?』


クスって紅緒さんが俺の方を見ながら笑う。

そうだね、あの頃と関係性は結構違う…でも、俺は…。


紅緒『わかってるって。頭硬いね?

ま、そこが良いとこなんだけど…承次郎みたいで。』


しょうじろうって誰やねん。

いつしかコンビニ前に到着していた。

ここで曲がって新川駅まであと10分かかるかな?






















玲奈『…!?』



曲がり角を曲がると玲奈さんが居た…?

いつぞや見たようなドレスのようなお姫様みたいな格好で。

うっすらお化粧して、ドレス着た玲奈さんは…目を奪われる引力を持ったとんでもない美人さん!


どうしたの?綺麗なドレスだね?

俺は声をかけようとしたところで横に人が居るのをやっと認識した。



…?


手を繋いで?



え?


??『玲奈さん?友達かな?紹介してくれないかな?』


玲奈さんの手を握っていた男は…30代半ば位の…

太ったあまり人相の良く無い男の人だった。

親戚のおじさん?玲奈さんや香椎家の面々にはとても似ていないが…?

青いスポーツカーみたいな超高そうな車を横に停めて。



紅緒『だれ?玲奈のおじさん?』


とわんこが俺の思ってた事を口にする。

…人の口から聞くとやっぱり失礼で口にしなくて良かったって安堵する。


玲奈さんは真っ青。

顔色悪いし、焦り気味で。


玲奈『永遠まで居るの?…後で説明するからね?今日はもう行って?』


『忙しいのかな?じゃ行くね?』


なんか形にならない不安と恐怖を感じながらも玲奈さんが行けと言うなら行く従順な俺。

でも横の躾けなっていないとわんこはそんなん無視して。


紅緒『えー?紹介してよ?

私、玲奈の友達の紅緒って言います。

おじさんは玲奈の親戚の方ですか?』



おじさんは顔を引き攣らせて、


??『おじさん…めっちゃ失礼な子だな…。

俺は玲奈さんの婚約者。松方新二って言うんだよ?

玲奈さんの友達なんだ?よろしくね。』


おじさんは愛想笑いを浮かべた。



…。



…。



…。








『…ちょっと何言ってるかわからない…。』





…婚約者?




婚約者ってなんだろう?

俺日本語がわからなくなっちゃった…。



でも、顔色悪い玲奈さんがおじさんと手を繋いだまま一言も発しないことに意味はわからないながらもその言葉は嘘では無いって事だけわかった。

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