第377話 ひーちゃん5歳。

釣りキャンプから戻った俺は昼寝して俺カレへ出勤。

翌日は朝から俺カレバイトで昼過ぎに家に戻る。


ひー『誕生日♪誕生日♪』

望『祭日にするべきだよ!』


『今日はこどもの日って立派な祭日でしょ?』


ご機嫌な時にやるひーちゃんと望の俺の周囲を回りながら踊るやつ!

これなんか奥地の人食い族がやりそうな感じでこれやられると落ち着かないんだよね。不思議な踊り…MP減るわ。


…昨日夜バイトで今日は朝からバイトで気付かなかったけど…?


『望?今日は明るいな?』


望は湿度の高い眼差しで俺を見ながら、


望『おかげさまで?香椎先輩が昨日昼頃テニス部来て試合でボコられ、その後ケーキご馳走になって飴ムチ堪能してきた。

あ、今日ひーちゃん誕生日って言ったらひーちゃんにクッキーくれた!』


香椎さんが…釣りキャンプで望の話しをしたから見に行ってくれたんだ…。

しかもひーちゃんにクッキーまで…本当に香椎さんってすごい。

…でもジャージは返して欲しい。着て帰っちゃったけど返すの忘れてるのかな?

※ジャージは香椎玲奈が繰り返し堪能しています。


☆ ☆ ☆


『『『ひーちゃん5歳おめでとう!』』』


夕飯時食卓ではひーちゃんバースデーが祝われる。

朝から興奮状態だった幼児のテンションはまさにピーク!


父『はい、ひーちゃん欲しがってたミニカーの緊急基地だよ!』


ひー『しゅごい!いいの?!』


祖父『はい、ジジとババから!』


ひー『しゅごいよ!りゅっくとおんなじくるまのながぐつ!』

※車の柄の長靴です。


望『じゃ兄ちゃんと姉ちゃんから絵本だよ!』


ひー『しゅごいよぅ!兄ちゃんと姉ちゃんもプレゼントあるの?!』


むふー!ってご満悦ひーちゃんは皆にペコリと頭を下げて、


ひー『ありがとうごじゃいます。

もっとおにいさんになっていいこになるよ!』


そう言って父さんから順番に家族のほっぺにちゅっ!ってキスして回る。


望『ひーちゃん!ひーちゃん!ひーちゃぁん♪』


望だけひーをぎゅーって抱きしめてぶちゅーって唇にしてた。

ひーちゃんはなすがままだった…。

一通り周り終わったひーちゃんは喜色満面の笑みで、


ひー『うれしくてうれしくてたまらないよ!

…でもぼくおかえしできない…。』


しょんぼりひーちゃんに父さんが、


父『じゃあ!父さんひーちゃんの歌聴きたい!』


祖母『私も聴きたい。』


ひーちゃんは顔をパッと輝かせ、


ひー『おうた?わかったうたうよぉ!』


ひーちゃんは幼稚園で習った歌を披露してくれた。

てんとう虫の歌、鯉のぼりの歌、こないだのパプリカ。


ひーちゃんリサイタルを聞く家族の目は優しくひーちゃんを見守る。

5歳の誕生日…俺の時どんなだったろう?

よく思い出せないけどきっと同じように嬉しく楽しい時間だったに違いない。

いつかひーちゃんが大人になり、5歳の誕生日の事なんて忘れちゃったなんて言い出す日に備えて兄は動画を撮影する。


ほら、お前こんなに小さくて可愛いくて一生懸命歌ってたんだぞ?

そんな事を大人になって言い合える兄弟でありたいね?


そう思いながら夜はふけていく



☆ ☆ ☆

ひー『きょうはにいちゃんたちとねる!』


キャンプやバイトが夜だったから久しぶりに俺はひーちゃんと寝る。

望は嬉しそうに布団を部屋中央に持ち込んで敷く。

俺も隣に並べるけど。



ひー『だめ?』


おねがい!って上目遣いでひーちゃんがおねだりする。

…こないだのリュックもそうなのだがひーちゃんは好きなもの、嬉しかったものを布団に持ち込む癖がある。

…今日はミニカーの緊急基地(トレーラーが変形してミニカーを沢山収納出来る)、長靴,絵本…。


絵本はまだしも…。

長靴…ゴム臭い…。緊急基地…デカい。


望『…ひーちゃん?緊急基地と長靴は枕元でよくなくない?』


困り顔の望がひーちゃんに切り出す。


ひー『や!いっしょがいいの!』


こうなると聞かないんだよね。

普段わがまま言わないから…我慢しようって事になった。


絵本は夢見れるように枕の下に入れよう?

問題は緊急基地と長靴…。


望がそーっと長靴を足元に蹴り出す。


ひー『ねえちゃん!だめ!』


望『だって…長靴邪魔でひーちゃん抱きしめて寝れないよぉ。』


ひー『きょうはながぐちゅだいて!』


噛む幼児かわええ…。

俺に至っては緊急基地なわけで…。

こいつゴツゴツしてかさばるなぁ。



望『…兄ちゃん…ゴム臭いよ、緊張基地と替えて?』


周りにあれば納得するので望と交換する。

流石に箱から出してるんだけどデッカいトレーラーだから邪魔なのよ。



ひーちゃんは満足そうに眠っている。

楽しい誕生日だったね?

ここで布団の外に出してもひーちゃんが気付けばすぐ戻す。

諦めて俺も望も眠りにつく…。



夜中。


望『…うーん…うーん。』


うるさいなぁ…

夜中望のうめき声で目を覚ます。


暖かくなってきた望の寝巻きは丈の短い部屋着で。

手足がめっちゃ出てるけど…兄はもうちょっと露出度下げた方が良いと思うんだよ。

ま、部屋着はいいんだよ。

望は寝相が悪いんだけど…緊急基地を枕にして寝てる!

こんなごっついプラスチックの塊で車高高いトレーラー枕にしてればうなされるわな。

真っ白いおなかのおへそを押したくなったけど黙って布団かけた。仕舞っておきなさい。

その気配に起きたのか、


ひー『にーちゃん…おしっこ…。』


俺は慌ててひーちゃんを抱っこして一階のトイレへ緊急出動した。


おしっこしたらひーちゃん目が覚めた。


部屋に戻ると。


ひー『ねーちゃん!きんきゅうきちつぶさないでー!』


ひーは破損が怖かったのか望の枕になってる緊急基地をスライドさせて思いっきり頭の下から抜いた。

※トレーラー型なので走らせるように。


望『ひゃん!』


枕を抜かれて!髪の毛が挟まって!望は悲鳴を上げる!


ひー『きんきゅうきち…だいじょうぶ?』


望『ねえちゃんのほうがダメージでかいよ…。

…緊急基地に追われる夢みたよぉ…。』


なんか悪いことしたんか?

望は寝ぼけてるような感じで俺の問いかけに答える事は無かった。


翌朝、


ひー『きのうはたのしかったな。ケーキもおいしかった。』


良かったね?でもひーちゃんは…



ひー『でもほんとうにほしいものはもらえなかった…。』


望『え?そうなの?』


家族は顔を見合わせる。


ひー『ぼくおとうとがほしい。

でもおとうとじゃなくてっもあかちゃんいたらいいよね!

ねえにいちゃん!おねがい!』


『ふもっふ!』


俺は味噌汁を吹き出した。


ひーちゃんはおねがいってぽーず!

望もおかしくてたまらない!って笑い転げてる!


望『だれ?だれが?だれが兄ちゃんの赤ちゃん産んでくれるの?』


ひー『かしちゃんにおねがいしたらだめ?』


『ダメだろ!』


ひー『えー…。』


不満そうなひーちゃんに、


祖父『…わかった。じいちゃんが作ってやる。』


祖母『まあ。』


なんで毎回祖父が名乗り出るんだろう?

持ちネタなのかな?

立花家の食卓は笑いが絶えない!




そんなわけでひーちゃん5歳になりました!

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