第375話 家に帰るまで

『きたっっ!!』


玲奈『承くんがんばれ!』


玲奈さんが横に居るだけで!

玲奈さんにがんばれ!って言われるだけで!

俺なんでも出来る気がする!

ほら!玲奈さんが隣に居れば、スズキさんだって!!



ばしゃあぁ!


玲奈『…マゴチさんだね?』


『マゴチさんでした。』


前回と同じ位のサイズのマゴチさん。

うん、嬉しいよ?

でも、スズキさんにお会いしてみたかったよ…!


しかし魚に驚きはしゃぐ玲奈さんは最高に可愛くって何度でもドッキドキする。

…将来ひーちゃんが恋したら心臓大丈夫かな?

俺はそんバカな事を頭の端で考えながらマゴチさんをぶら下げてクーラーボックスへ向かった。




☆ ☆ ☆

日もすっかり登り、釣りも当たりの気配が無くなりそろそろ帰る事も視野に入れる時間になった。

玲奈さんは小幡さんと一緒にこの後出かける事にしたそうな。


俺たちはこの後、大河の橋まで戻って。河川敷公園にあっちゃんと仙道は自転車止めて迎えの青井母車で青井家へ向かう。

俺たちは昨日同様、青井家へ自転車で直行して青井家で荷物バラしてゴミとか処理してから青井家で魚を調理してもらい、お昼頂いて解散。


まだ少し時間あるし?

一個テント片付けて…。


青井『な?ビーチバレーしねえ?』


ビーチボール持って来ていた青井が皆んなにせがむ。


千佳『やりたい!身体動かしたい!

玲奈もやろ?』


玲奈『うん!

あ、でも私は服が…。』


小幡さんはキャミに薄手の長袖上着にジーンズの短パンみたいな格好で。


千佳『脚出ちゃうしキャミ出したく無いから…航?Tシャツ貸して?』


薄手の上着をしゅるりと脱いで、綺麗なお脚があらわに…!


青井『仙道、田中…見ろよ…めっちゃ俺の彼女さん美しい…。脚すっごい綺麗なのよ…。』


惚気る青井に仙道は照れながら頷き、


仙道『…確かに…すっげえ美脚…。』


青井『は?見るなよ!俺のだぞ?』


田中『見て欲しいのかい?見て欲しくないのかい?どっちなんだい?!』


田中くんが筋肉芸人さんのように突っ込む。


見えたけど…玲奈さんだって負けないよ?

太ももから膝へのラインとか。


千佳『…よっし!』


小幡さんはガタイの良い青井のTシャツ着るとブカブカで裾を縛るスタイル!

これならキャミもほぼ隠れるし、短パンもデカTシャツでカバー出来る!

何より彼Tシャツスタイルが可愛くない女の子なんているわけない!

特に青井にはクリティカル!

デレッデレ青井が出来上がった。


小幡さんは玲奈さんと勝負したい、だから玲奈もやろ?って煽り続ける。

玲奈さんもアクティブ女子なのでビーチバレーやりたそうなんだけど…。

玲奈さんの格好はほぼ白に近い水色の半袖ワンピース。スカート部分はふわっとさせた初夏のお嬢様スタイル。

めっちゃ似合ってて可愛らしい。清楚な玲奈さんにピッタリな可憐さと爽やかさを際立たせる優美な服装…これでビーチバレーは絶対無理。


玲奈『…着替え持って無いし?

誰か持ってるかな?』


玲奈さんは呟く。

…俺の?


『俺…長袖ジャージ1着あるけど…昨日着ちゃったんだよ。

…昨日も暑いし、寝汗もかいたし。他いない?

着てないジャージやウェア?』


俺のジャージは使用済み、汗かいちゃったって説明中…

気のせいかもだけど?一瞬玲奈さんの目が一瞬1.5倍位大きく開いたような気がする…気のせいだよね?

※カッ!って目を見開きました。


田中『…一応着て無いウェアあるけど…?

サイズも立花くんよりは僕の方が近いけど…?』


田中くんが一応って感じで申し出てくれた。

わかる!玲奈さんに自分の服着せるって気が乗らない!

なんか申し訳なくなるのよ!



玲奈さんはつーんって顔で、



玲奈『…着てないなら汚さなくてよくない?

…私はいいよ?承くんのジャージで。』


『え?だから!もう着たやつ!

汗かいてるし、匂いするかもだし。』


玲奈さんは頬を赤くして、目を逸らしながら



玲奈『だから!それが良いって言ってるでしょ!

良いから貸して!ビーチバレーしたいの!』


俺は慌てる、だって!憧れの女の子に着せるようなもんじゃ無いでしょー!

だいたい!俺前から思ってたの!


『でもさ?結構中3位からさ、俺の服着る機会あるじゃ無い?

…毎回匂い気にしているから…俺も申し訳ないし、貸すの嫌だよ…。』


言ってしまった。

気になっていたんだよね、毎回玲奈さん俺の服着ると匂い嗅いでるんだよ…。

気を付けているつもりだよ?でも動けば汗かくし、こうゆうのって本人わからないものじゃない。

玲奈さんはガーン!って顔して、


玲奈『ビーチバレーやりたいな…。承くんとバレーやりたいな…。』


『田中くんに借りれば?』


玲奈『ふう、じゃ貸して?』


田中『え?あ、はい。いいの?』


田中くんは俺に確認する。

いや、使用済みジャージ女の子に着せる方がどうかと…?

でも初めて思った、他の男の服着る玲奈さん見るの嫌…かも。


玲奈さんは俺をチラッと見て田中くんジャージを持って、一つ残したテントに入って行った。

今、昨日俺が寝てたテントで玲奈さんが着替えてる…!

いや!ダメ!玲奈さんをそんな妄想すんな!




色即是空、空即是色。俺は煩悩に負けない…!

※「色即是空」…世の中に永久に不変のものはなく、どんなものでも流動的に変化するという意味。

「空即是色」…流動的に変動することによっていろんな物体に生まれ変わることができるという意味。



別に田中くんのジャージに着替えただけ!


玲奈『お待たせー。』


玲奈さんは大きめのジャージを折って七分そでみたいに上下ともして来て白い腕とすねが露出している…。

大きめな上は裾をしぼって可愛く着ている、男子ジャージってこんな可愛くなる?

そして、胸にはadiósの文字…。


『俺のジャージじゃないか!』


玲奈『ふふー!間違っちゃった♪

無造作に放置されてた!』


片目瞑って、首を傾げる仕草…そしてビーチバレーに向けて急速に気合い入れ始めて髪をポニーテールに括る姿…ダメ、もう致死量。


玲奈さんはによによ笑いながらビーチバレーするんだから汚れている方が良い位でしょ?って言うとビーチバレーが始まった。

チームはテントごとに分けて、

青井、小幡、田中vs東条、香椎、仙道になった。

俺ジャンケンで負けて審判。


田中くん、仙道以外負けず嫌いが集まったビーチバレーは混戦模様。


千佳『それ!』


玲奈『厚樹くんっ!』


厚樹『smash!!』


アメコミヒーローみたいなあっちゃんに笑っちゃうw

やっべ、めっちゃ面白そう!

しばらくして、田中仙道が音をあげる。

優奈さんは楽しそうに観戦してる。


白熱した良いところであっちゃんが笑いながら、


厚樹『承、交代!代わりに入って?トイレ。』


『ああ、うん?』


勝負事で途中交代なんてあっちゃんらしくない…。

田中仙道組もドロップアウト。急遽2人制になったけど青井と小幡さんは獰猛な笑みを浮かべる。

香椎さんが俺とハイタッチしながら、


玲奈『承くん?負けても良いなんて?』


『死んでも思うな?

これ玲奈さんのセリフでしょ?』


玲奈『だって!負けたくないでしょ?いくよ!』


『はいはい!』


マラソン大会だったね?この言葉。

俺のお月様はいつも俺に無茶を言うしワガママだって言ってくれる。

そんな香椎玲奈が好きなんだ。



優奈さんが審判に入って、試合は再開!

意外と俺と香椎さんも連携良いのよ!

熱いラリーの応酬!

そして激戦を僅差で制した!


悔しそうな小幡さんとドヤ顔玲奈さんが戯れてるの見て、俺も青井も自分服着ている玲奈と千佳にメロメロ。


優奈さんが来て揶揄う、


優奈『アレでしょ?彼シャツみたいなやつ?承くんが着せたん?』


俺が着せたわけじゃない!けど…俺のadiósこんな可愛かったっけ?とは思う。望が着てるadiósもこんなに可愛くは無い…

結局玲奈さんツボなだけなんだ。今も昔も。


こうしてゴールデンウィーク釣りキャンプは終わった。

楽しかったなぁ。俺きっとこのゴールデンウィーク忘れない!


玲奈さんたちを送り出し俺たちも帰途につく。




☆ ☆ ☆

厚樹『俺さ?今日はこのまま帰るわ?』


全力で遊んだあっちゃんは河川敷公園で青井母を待たずに今日は帰るって言い出した。

…確かに?今日はちょっと元気無い…全力で釣りして遊んで語り合って疲れたんかな?ビーチバレーも途中で交代したし。



『また学校で!』


厚樹『あぁ。また。』


青井は預かったスズキ切り身にして冷凍して近日持っていくから待ち合わせしよ?って確認してた。

※寄生虫対策。


河川敷公園に仙道は自転車置いて、青井家へ。


キャンプ道具と釣り道具を洗ったり掃除したりしながら交代でシャワー浴びて、全部終わる頃には12時。


青井の母さんが昨日釣ったモノからアジフライにしてくれて、青井が昨日釣り上げたスズキは一度冷凍したものを切り身にして匂い消しのスパイスをふんだんに使ったフライにしてくれた。


青井『美味い!揚げたて!』

田中『アジフライ美味しい!』

仙道『自分で釣ったのって思うとすごい!』

『まじうま!』


俺たちはフライをむっしゃむっしゃ食べながら白飯喰いまくり。

お腹いっぱい食べて楽しかったキャンプもこれにて終了。


ここで解散、仙道は河川敷公園に車で送って貰ってそこからすぐに家がある。

田中くんも俺もここから自転車で数分。

じゃ!またな!


俺はマゴチ2匹を氷漬けにしてもらい家に帰る。



ひー『にいちゃあ!!』


帰るとひーちゃんが抱きついてきた。

寂しかったらしい。愛い奴…。

マゴチ見てびっくりして飛び上がる弟の頭を撫でて俺はしばし昼寝する。

はしゃぎすぎてもう限界。

夕方から俺カレバイト入ってる。

俺は心地よい疲れと満腹感に包まれあっという間に眠気に襲われる。


良い日だったな、明日はひーちゃん誕生日。

明後日は紅緒さんが家に来る。

ゴールデンウィークは残りわずか、楽しいなあ。

俺はしばし意識を手放した。




☆ ☆ ☆

帰り道、千佳が玲奈に問いかける。


千佳『今日さ?人前だけど立花くんって呼ばないで承くんって呼んでたね?』


玲奈『みんな承くんの仲間だし?良いかなって。』


運転しながら姉も聞く、


優奈『承くんも玲奈さんって呼んでたね?人前で?』


玲奈『うんっ!』


えへへ。玲奈ははにかみながらをふたりに見えないようにくんくんくんくん。

にまにましながら、


玲奈『じゃ、一回家寄って行こうか千佳?』


千佳『折角休みなのに玲奈はホントよくやるね?』


ふふー!玲奈はオフを返上して動き出す。

千佳は呆れながらそれに付き合う女の子だった。

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