第372話 青春ビーチ
時刻は18:30。
女子が来た上に宏介まで加えて!
もう楽しいしか無い釣りキャンプ!
小幡さんはメガネをきらりと輝かせて、
千佳『…男子だらけの会に宏介くんを咥えて…。』
青井は爽やかに微笑みながら、
青井『ごめん、千佳は病気だから気にすんな?』
宏介『…わかってる。変わらないなぁ。』
もうちょっと釣りをする俺、宏介、あっちゃん。
焚き火台でキャンプファイヤーの準備を始める青井、田中くん、仙道、保利くん。
釣りに紅緒さん、キャンプファイヤーに小幡さん、伊勢さんに別れて19:30位まで遊ぶ事に。
※伊勢さんは釣り餌のイソメが怖い為です。
田中仙道組は午後もアジを4匹釣って満足げ…。
ズズキチームは青井だけスズキを釣った。
青井の釣果を見た以上!俺も釣りたいよぉ!
※望風に。
紅緒『ねえねえ、いっぱい釣れたの?』
『…。』
とわんこ…。
こいつデリカシー無いのよ…。
紅緒『釣れるトコ見たいな♪』
『…簡単には釣れないの。』
紅緒『ルアーってのだよね?餌の方が釣れるんじゃ無いの?
これ餌?
…ぎゃーーーーーー!!!!』
イソメ見て絶叫するとわんこ…!
こいつ釣りに連れて行っちゃいけないタイプの女子じゃない?
あっちゃんが顔引き攣らせて、
厚樹『…魚逃げるからね?イチャつくならあっちでやって?』
宏介『…静かに…。』
宏介まで…。
でもそうなの、釣り中は静かに。
『紅緒さん、釣り中は魚逃げるから…。』
紅緒『うん!お口チャック!』
口にチャックする仕草でニコニコしながら俺の横にそっと座った。
…俺は黙って少しずつ場所を移動する…。
気づいてとわんこやってくる。
少し移動する…。
厄介な貧乏神のボンビーを連れてる時、他プレイヤーにすれ違うとそっちにボンビーは着いて行く。
紅緒『宏介くん、このルアーって小魚に似せてるの?』
宏介『…そうだね。』
宏介を間に挟むと宏介の横にあるルアー入れに食いつくとわんこ。
紅緒『宏介くん、このルアーは…ねずみ?!ぴゃあ!!』
厚樹『宏介?紅緒さん?』
宏介『…ごめん。』
紅緒『ごめんね。』
紅緒さんは多分釣りに向かない。
☆ ☆ ☆
19:30釣りを切り上げた俺たちはキャンプへ戻る。
釣れない…。
辺りは先ほどから真っ暗!
テーブルには女子チームが作って来てくれた豚カツ、つくね、じゃがいもとひき肉の炒めもの、アスパラベーコン、ミニトマトなどが大量に!
千佳『だって航が荷物減らす為にインスタント食品三昧!って喜んでるから!』
伊勢『そうだよ!身体に良く無いよ!』
紅緒『食は健康の基本だよ!』
青井『いやだって今日だけだし…野菜ジュース持参してるし?』
女子3人にお小言頂戴して渡されたおにぎりを頬張りながらおかずを掻っ込む!なんでアウトドアで食う飯ってこんなに美味いのか!
伊勢『美味しい?』
『美味い!』
紅緒『豚カツ私が揚げたんだよ!』
宏介『…美味しいね。』
保利『うん!美味しい!』
伊勢、紅緒『でしょー!』
キャッキャわいわい!にぎやか!
計10人も居る高校生の集まり!
拾ってきた流木や枝で焚き火台でキャンプファイヤー。
持参したLEDランタン2個にテント内照明に買った100均の小さいLEDライト3個も点灯させてキャンプ地は結構明るい!
千佳『カップ焼きそば…久しぶりに食べたわ…美味しいわね?』
伊勢『夜にジャンクフードはダメ!ダメだよ!』
紅緒『シャバの味がするね…。』
荷物になるって言って夜ご飯に持参したカップ焼きそばを3人娘は食べていてめっちゃ美味そう。
もうちょっとだけ食べたいかも…。
紅緒『おっきいフランクフルトあるよ?さっと焼いてそのまま食べれるし、一応ケチャップとマスタードの小袋用意あるよ?』
『『『食べる!!』』』
持参フライパンで表面に軽く焦げ目つく程度炒めて…さっとケチャップ、マスタードを…ゴクリ。紅緒さんが焼き上がるたび皆んなに手渡す。
横で小幡さんが優雅にメガネ直しながら、
千佳『…紅緒さん?良いチョイスよね?串付きで手も汚れないし、食べやすいし、残っても加工食品だからすぐ悪くならないし…。』
炒めて良い色のフランクフルトを小幡さんは手でいいって断って伊勢さんが受け取る。
千佳『なにより!高校生の男子がフランクフルトにかぶりつく絵柄!
創作意欲わくわぁ♡』
その言葉に思わず手を止める俺たち。
青井さぁ…お前の彼女さぁ…。
でもね、俺の目の前の伊勢さんと目があっちゃって…
伊勢さんは真っ赤になって咥えかけのフランクフルトをすごい勢いで噛みちぎった!
仙道と田中くんは痛そうな顔してた…お前らもう通じ合ってるの?
20:00頃保利くんのママが迎えに来た。
21:00頃紅緒ママが迎えに来てくれた。
小幡さん送り方々アジ4匹とスズキを青井宅へ届けてくれるそう。助かる!
紅緒伊勢組は明日朝から用事あるらしい。
小幡『まあ?貴方たち心配だから?明日朝も来るかも知れないわね?』
そう言い残して小幡さんたちは帰って行った、
小幡さんも面倒見の良いしっかりした綺麗なお嬢さんだよね。
…本当にあの感性さえ無ければ…。
そんな事思ってると青井と目が合った。
青井『だがそれがいい!!』
『…合ってる。』
青井『なんかわかった!立花の言いたい事!』
それしか無いだろ!
☆ ☆ ☆
22:00、辺りは真っ暗闇。
でもキャンプ地はランタンと焚き火で明るい。
スピーカーからはジャズが流れてる…。
なんか不思議な感覚。
望やひーちゃんはどうしてるかな?
…望はまだ凹んでるのかな?
重いのに持参したコーラを飲みながらパーティー開けしたポテチをつまみながら話す。
過去のこと、今のこと、未来のこと。
話題は尽きないし、この雰囲気が何でも語っちゃう。
青井は消防士になる夢を。
宏介はバスケ部の事を。
田中くんはいつか撮りたい映像作品のことを。
仙道は漠然とした大学受験を。
あっちゃんはバイト先のことを。
…俺は家族のことを。
それぞれテーマなんて無いただの語り。
『…俺は家族や大事な人を守れるような漢になりたいなぁ…。』
皆んな黙って頷いてくれた。
…漠然とし過ぎてコメントし辛いだけかも知れないけどね。
いつしか夜は更けていく。
静かに焚き火の音だけパチパチ響く。
椅子に座って、ビーチチェアに座って、敷物に座ってみんな焚き火を囲んで飽きる事無く語り合った。
俺、今日を忘れない。
言いかけて宏介と目が合う。
油断は出来ない、また黒歴史を作るトコだったわ…。
話題は尽きないし、楽しくて仕方ない。
でも明日もあるし?宏介は明日朝に一度家に寄って支度して部活出るって。
名残惜しいけど今日はここまで!
時刻は1:00。明日に備えてもう寝よう!
テント2個に分かれて眠る。
あっちは旧3組トリオ。
こっちは俺、あっちゃん、仙道の東光勢。
焚き火を消してランタン消して、トイレ行って。
皆んなそれぞれ横になる。
あっちのテントはまだ騒がしい。こっちもああでも無い,こうでも無い語りは尽きない。
2:00。
仙道『すー。すー。』
仙道が寝落ちした。
意外にも静かに眠る男であった。
もう寝よう?何回もそのセリフを言い合うけど興奮で眠れない。
あっちのテントも静かになった。
こっちもテント内LED 消してさ?消せば寝ちゃうと思うんだ。
電気を消すと波の音、仙道の寝息、向こうのテントから青井のいびきが聞こえる…。
暗いと視覚が遮断されるからだろうなぁ、聴覚が鋭くなる感覚。
あっちゃんがぼそりと呟いた。
厚樹『…承。
承ってさ…紅緒さんと付き合ってるんだろ…?』
心外だなぁ。
『付き合って無い。』
ガバっ!!て横のあっちゃんが飛び起きた!!
厚樹『まじで?!』
『うん、マジ。』
あっちゃんは困ったように、俺が毎日放課後あっちゃん教室へ通ってた頃に紅緒さんが来て彼女って名乗った事を教えてくれた。
あの野郎。
厚樹『まあいいわ。それでさ?』
あっちゃんはまた横になりながら語り出す。
転校先の女の子にモテたけどくっそみたいな奴しか居なくて香椎さんみたいに皆んなの為に頑張れる娘は居なかったこと。
俺の帰郷での細かな気遣い配慮、企画、もてなし、どれをとっても香椎さんらしい優しくて暖かいでも計算され尽くした最高の会だった事。
自転車、小学校に入れたり、卒業証書、くじ引き、若葉さんへの配慮全てが完璧であんな良い娘は居ないと言い切った。
(聞きたく無い…これは…!)
予感じゃない、俺の中の警報がさっきからうるさいほど鳴ってる!
あっちゃんは断ってLEDを小さい光量で点灯させた。
身を起こし、俺に向き直る。
俺を見つめるあっちゃんの視線は真剣でとても冗談でしょ?なんて口を挟めない。
仙道の寝息も聞こえない緊迫した状況。
※起きてます。でもとても会話に入れない状況です。
厚樹『…俺、先日の再会で…一目見てもう胸が騒いだ。
一緒に小学校まで歩くだけでドキドキが止まんなかった。』
聞きたく無い!言わないであっちゃん!
あっちゃんは男前で、本気出したらきっと俺なんか…。
あっちゃんと競うって事が無理だし、あっちゃんを敵になんて考えられない!
だから…先は…!
厚樹『バーベキューの時も側に居て話してるだけで本当に幸せで、嬉しくて、胸が苦しくなって…。
承、俺香椎さんが、香椎玲奈が好きなんだ…!』
あっちゃんは苦しそうにでも誇らしげに香椎玲奈への気持ちを口にした。
男ながら惚れ惚れする自信と優しさに満ちた表情。
俺が女の子ならあっちゃん一択…。
さっき思ったネガティブな気持ちで心はいっぱいだった。
…俺の口から出た言葉は…
『…俺も好き。
玲奈さんが、香椎玲奈が好き。
それだけは誰にも負けない…!』
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