第366話 新学年はでこぼこ

二年生になり数日が経った。

1年生の頃と違い高校生活に多少慣れていたからスムーズに色々決まっていく。

委員や係、部活など大体一年時やっている物を継続して選ぶ人も多く比較的スムーズに決まり一年時の津南や稲田さんみたいな不穏分子も居なくてクラスは穏やか。

紅緒さんは去年と同じく、ひとりひとりと話す時間を作り会話してお互いを知り合うスタイルでクラス内の支持を得ていく。

美人で危なっかし紅緒さんはあっという間にクラスの人気者としてクラスをまとめる。俺は去年同様それを補佐したりフォローって役回り。

…唯一難点があるとすると、


担任『…それでいいのか?皆意見は無いのか?』


担任は前例主義というか保守的で紅緒さんが新しいことを提案したり、動き回るのを好まない。新学年の体力測定に参加したい!って紅緒さんの希望を却下したり体育見学だから器具運んだり記録付けたりするのを率先してやってる紅緒さん見学だけしてるよう指示したり、何かクラス内でイベントしたがる紅緒さんの提案を却下したり。

その日また却下された紅緒さんは担任をジト目で見ながら、


紅緒『…ちぇんじ。』


担任『…はあ?』


『…はは、とわんこハウス!』


一瞬危機もあったがちょっと紅緒さんと担任は合わないみたい。

…俺も合わないんだけど紅緒さんと合わなすぎて困る。


放課後、社会科教室。


紅緒『なんなのー!なんでもかんでも却下してー!』


『すてい、とわんこステイ!』


紅緒『がるるる。』


『よーしよしよし、よーしよし。』


紅緒『…承くん適当じゃない?』


『そん事ない。』


とにかく紅緒さんはなんでも掣肘されてる状態で苛立っていた。

クラスまとまっているし、特別トラブルも無い。

それだけに紅緒永遠はをやりたい。

それを担任はよしとしていない。

紅緒さんは普通の日々はかけがいの無いものだって知っている。

でも折角だからそれにプラスしたいだけ、それをわかって欲しいんだと思った。

俺は紅緒さんを宥めながら一度担任と話しをしてみようと思い担任にアポを取ったんだ。



☆ ☆ ☆

担任『なあ、立花。お前から紅緒に上手く言えないのか?』


『と?言いますと?』


担任は前にも言ったかもしれないが細身で神経質そうな中年の数学教師。

…正直俺も合わないと思うんだよね…?


担任『なんで紅緒はいちいち動き回って新しい事をしようとする?

わざわざリスクおかして動く?

心臓悪いんだから大人しく勉強だけしてれば良く無いか?』


俺は少し苛立ちながら、


『勉強はしてますし、成績だって学年トップを譲った事無いですし?

じゃなくても良いのでは?』


担任はため息つきながら、


担任『…普通の学校生活すれば良いじゃないか?

去年だって球技大会翌日休んだりしてるし、月1は検診で休むか遅刻するほど病弱なんだ。体育出れないんだから身体動かしたがるとかは家で誰か見守ってる時にやればいいだろう?立花そう言ってくれんか?』


(事無かれ主義なんかな?去年の担任は寛容でなんでもさせてくれたのに…。)


比べても仕方ない事だけど少しがっかりはする。

俺の目の色が見えたのか。


担任『…でもな?何かあってからでは遅いんだ。

本当に責任を取れるわけじゃ無い。紅緒に何かあれば責任取りようが無いんだ。後からやっぱり認めなきゃ良かった、あんな事しなければ良かったじゃ済まない事も多いんだ。

…立花そこだけは考えて紅緒見ててくれ。』


…そこだけは一理あるって思った。

心臓の爆弾が破裂してからじゃもう遅い。

予防策…余計な事させないって言うのはわかる…。

俺は心情的に去年からの学校生活を共にしてる紅緒さんに寄った考えで動いている。担任は責任問題と紅緒さん何かあったら困るって論理で動いている。

…紅緒さんの気持と体のリスクは相反する部分が多分にある…。


ただ紅緒さんの希望を叶えるだけで無く、リスクを身体の負担を考慮…。

担任は合わないし、保身は見え隠れしている。

でも何かあってからじゃ遅いっていうのはもっともな事で俺はそこも含めてなんとか上手く紅緒さん、クラス、担任を含む学校の三者をバランスを保って運営していこうって思ったんだ。


☆ ☆ ☆

最近のあっちゃん。


新学年になり、あっちゃんは少し変わった。

あの帰郷からあっちゃんは髪を少し染めてもう少し髪を短くしてすっごい爽やかになった。去年のクラスメイトが一見わからないほど目立つ男前!

体育とかは適当で目立つのはまだ抵抗あるみたいなんだけどその男前で目立つの嫌!って無理あるでしょ!


あ、そうそう!あっちゃんバイト始めたんだよ!

前々から


厚樹『…お金無いんだよね。』


とか言ってたんだけど、


『うちも無い。バイトすれば?

俺カレ!俺カレどう?バスケしやすいし?保利くん居るし?

賄い美味いし!どうかな?』


厚樹『…承うざい。』


ひどく無い?

知り合いと一緒は恥ずかしいとか言ってエイオン付近のコーヒーショップでバイト始めたんだ。

週3行くと嫌がられるからギリギリの週2行くんだけど、スタッフの女子大生とかお客さんがあっちゃんに色目使ってる気がする…。

あっちゃんはスタッフにも客にも興味ねーって言ってるけど接客で笑顔で明るく話すあっちゃんはイイと思う。


仙道も近所だから一緒に来てその光景を見て、


仙道『髪を切っただけでイケメン…世の中は不公平で満ちている…。』


まあ、あっちゃんは俺の太陽だからね?って言うと仙道がすごい目で俺を気の毒そうに見る。

…仙道だけじゃ無いあっちゃんの話をすると皆んな生ぬるい目で俺を見るんだけどなんでだろう?


☆ ☆ ☆


色々変わりつつも一年生の頃と違い高校生活自体には慣れて来て居て。

俺たちは少しずつ大人に近づきながら高校生活をエンジョイしていた。

バカをやりつつ、真面目に勉強しつつ日々過ごす。


そんな4月も下旬、もうじきゴールデンウィークって頃。

いつもの社会科教室で青井が言った、




青井『なあ?提案あるんだけどさ?

皆んなで大人の釣りしねえ?』


仙道がゴクリと喉を鳴らした…!

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