閑話 お兄さんになったら!
立花家の末っ子ひーちゃんも幼稚園2年目!
春休み頃から興奮していたんだね。
『もうすぐ!ぼく!おにいさんになるんだよ?』
望『すごいなー。』
承『ひーちゃんはいいお兄さんになりそうだなぁ。』
『えへへー!』
兄ちゃんも姉ちゃんも良いお兄ちゃんになるって保証してくれた。
入園式の日、ひーちゃんは小さい子たちがパパやママにまたは両方に手を引かれて入って来るのをわくわくしながら見守る。
ひーちゃんは横のニナちゃんに、
『ぼくたちもあんなかんじだったね?』
ニナちゃんは瞳をキラキラさせて、
ニナ『ふふ♪そうね?あなた♡』
『…おままごとしてないよ。』
ニナちゃんはおままごとのプロです。
いつも自分の理想を演じ切る乙女なのです。
そのニナちゃんは入園してくる子どもより若い夫婦に自分とひーちゃんを投影していました。
緊張してる子、キョロキョロしてる子、泣きそうな子と色んな子どもたちを向かい側からみたひーちゃんはやっぱりお兄さんになりたいなって思います。
でもね?
なかなかお母さんはうんと言ってくれなくて…。
朝の光景を思い出します。
☆ ☆ ☆
朝、立花家食卓
『おかあさん!ぼくおとうとがほしい!ねえ、おねがい!』
ひーちゃんにしては珍しくわがままおねだりです。
しかも要求が可愛くて立花家の食卓はほんわかムード。
ひとりひーちゃんは要求を通す為に条件交渉を試みます。
『おてつだいもいっぱいするし!ぼくいっぱいめんどうもみるし!
ねぇ、おかあしゃんおにぇがい!』
ひーちゃん渾身のおねだりは後半噛んでて姉は口元拭きながら、
望『かわええ…っと、涎出たっ。』
承『きったねぇ。』
母『あのね?ひーちゃん?もうお母さん歳だし?3人も居るし?
お金かかるし?』
ひーちゃんを宥めようとお母さんは割と真面目な理由を告げます。
『おかあさんはまだわかくてきれいだもん!さんにんでもこんなにたのしいんだよ?よにんならもっとたのしいよ?
おかねなら…なんとかする。』
どうやってなんとかするのでしょうか?
珍しく聞き分け無いひーちゃん。
そんなひーちゃんに今まで黙ってた爺ちゃんが声をかけます。
じい『…じゃあ爺ちゃんが作ってやる。』
ばあ『…まあ。』
…!!!!
立花家、朝の食卓に衝撃が走ります。
父さんと兄は笑い転げ、母さんは何とも言えない表情。
姉は吹き出し、祖母は嫌な顔して姉の前を拭きます。
ひーちゃんは喜び、そして首を傾げます。
『…じいちゃんにあかちゃん…それおとうと?』
父『…父さんの弟になるよ。ひーにとっては…おじさん?』
『おじさんじゃダメなの!おとうとがほしいのー!』
☆ ☆ ☆
朝のやりとりを思い出してひーちゃんは思います。
『きっとぼくがこどもだからダメなんだ…もっとおにいさんだってところみせるんだ。そしたらおとうとうまれるかもしれないよ。』
ひーちゃんは新入園して来た子ども達の面倒をちゃんと見る事でお兄さんアピールを試みます。
入園式翌日、今日から普通に幼稚園は始まります。
ひーちゃんも二年目ですっかり慣れた!
でも、新入生は慣れないわけで。
1日の途中で自由時間があります。
3学年好きに庭で遊んで良い時間。
それぞれグループを形成してテリトリーを主張します。
グループによって様々で、年上なほど発言力が強いのが特徴です。
でも、先生がきっちり監視しているので恐怖政治や独裁者は収監される掟です。
ひーちゃんはその子に出会います。
ニナちゃんのおままごとを躱し、潜んだ遊具の影に潜んでいた子。
大人しくて無表情、顔立ちは可愛いけど口をへの字に曲げて目つきの悪い子。
ひーちゃんは名札の色で、このおかっぱ頭の子が昨日入園してきた子だってわかります。男の子かな?
『こんにちわ!』
『…。…ちわ。』
声が小さいけど一応返事してくれました。
名札を見ると、…ゆうきって書いてありました。
『ゆうきくん?ゆうきくんはここでなにしてるの?』
ゆうき『…べつに。』
エリカ様みたいなことを言う後輩にひーちゃんはお兄さん心をくすぐられます。
『ここぼくのだいすきなかくれがなの!ゆうきくんもみつけたんだね?』
ゆうき『…ゆうきでいいよ。』
ゆうきと呼ぶ事にしました。
遊具の影でニナちゃんの影に怯えながらひーちゃんが話してゆうきくんがボソボソ答える時間が過ぎました。
『ゆうき…いいなまえだね?』
ゆうき『…。』
ゆうきはコクンと頷く、
ゆうき…きっと勇気だ!カッコイイ!
『かっこいいなまえでにあうね!すてき!』
ゆうきは照れ照れです。
翌日もその翌日も自由時間はゆうきはそこに居ました。
ひーちゃんの兄心がむくむく育っていきます。
一緒に居ながら少し話しながら幼稚園の秘密を伝えます。
もうじき桜が咲くよ?桑の木に夏に実がなるんだよ?お芋掘り楽しいんだよ?
遠足!お遊戯会!お遊戯運動会!お絵描き会!ひーちゃんはイベントを楽しそうに語り、ゆうきは小さいリアクションながら楽しそうでした。
そんなとき、
『ぼく、ゆうきみたいなおとうとほしいな。』
ゆうき『…おにいちゃん。』
『え?え?!もういっかい!』
ゆうき『ひーにいちゃん…。』
ひーちゃんには兄の理想像があります。
☆ ☆ ☆
実兄の承くんです。
承くんは結構熱くるしいことをサラッと言っちゃう子です。
地震や災害のニュースを見て怖い時ひーちゃんも姉の望も兄ちゃんにピトッとくっ付きます。すると兄ちゃんは、
承『なにがあっても望もひーも兄ちゃんが絶対守るから。』
そう頷くと姉もひーちゃんも安心するのでした。
☆ ☆ ☆
ひーにいちゃんって言ってくれたゆうきの思いに応える為には?
『なにがあってもぼくがまもるよ!』
ゆうきは真っ赤になってもじもじしちゃいます。
もうわかるよね?
その翌日はゆうきくんが友達に引っ張られて鬼ごっこしていたので安心して本来のひーちゃんテリトリーである砂場へ帰りました。
その翌日は雨で自由時間はありませんでした、その翌日も。
翌週、月曜日はひーちゃんの心臓の定期検査。
火曜日ひーちゃんはワクワクしながら幼稚園に向かいます。
登園時ウキウキひーちゃんです!
どん!!横から何かがぶつかってきました!
??『…なんでいなかったの!』
ひーちゃんに抱きつくのは久しぶりのゆうきだった。
ゆうきママ『あらぁ、うちのゆうきがお世話になっていますー?』
母『いえいえ?新入園のお子さんかな?可愛いですね?』
ゆうきママ『うちの娘、人見知りで緊張しいでー。
でもひーちゃん?ひーちゃんが毎日話しかけてくれてうちの娘喜んでー!
仲良くしてくださいー!』
娘?ひーちゃんはギョッとして抱きつくゆうきをまじまじ見るよ!
ゆうきは前髪を分けておでこを出してリボンを着けて今日は可愛い!
ゆうき『…ひーにいちゃん♪』
『…ちょっとおもってたのとちがう…。』
ひーちゃんは動揺しています。
ぼくが欲しいのはおとうと…男の子…。
ゆうきはよく見れば…女の子だった…。
母『ゆうきちゃんってどんな字を書くの?』
ゆうきママ『優姫です、優しい姫って書きます。
ひーちゃんよろしくねー?優姫ね?先週から、
『プロポーズされた、今日から可愛くする!』って聞かなくって!』
母『ひー?何って言ったの?』
それには優姫が答えた。頬を赤らめながら上目遣いでひーちゃんをしっかりロックオン!しながら、
優姫『ひーにいちゃんは、
『ぜったいにゆうきになにがあってもずっとまもる!』っておとこらしくいってくれたよ?』
言ってない!断じてそんな事は言って無い!
ひーちゃんは必死に首を振るけど、ひーちゃんの左手はガッチリ優姫に掴まれている。
ガシ!!
右手を見るとニナちゃんでした…。
ニナちゃんはニッコリ笑っていたけど目はカケラも笑って居ませんでした。
ニナ『くわしくおしえて?ひーにいちゃん?』
ひーちゃんは呟きました。
『…にいちゃん…いまたすけてほしい…。』
☆ ☆ ☆
いよいよ承くんの運命の年が始まる前にひーちゃん1話挟ませていただきました。
こっちも新しい人物一覧を用意するので数日更新が不安定です。
長引くようだと閑話入れるかも知れません。
承くんにとって運命の一年になる予定です、長くなりましたがお付き合い頂ければ幸いです。
ある
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