第360話 片付け【side香椎玲奈】
千佳『玲奈!大体終わったわよ!』
流石に千佳はわかってる。ゴミの分別から公園の清掃までほぼ終わらせてくれていた。
ここから5分の我が家へゴミも大体運んでくれたし、買って来たゴミ袋に残りを入れるだけ。持ち込んだ袋は全部使い終わったみたい。
小石『…青井がせっせと小幡さんの指示に従ってニコニコしながらテキパキ動くからすげぇ速さで終わった…。』
承『へぇー。さすが小幡さん。』
宏介『…狂犬とは?』
男子チームが話している側で、
千佳『航♪ありがと♪』
青井『力仕事や汚れ仕事を千佳になんてさせない!』
千佳『もう!甘やかしてー♪』
青井『ふふふ!』
小石『あまーい!』
何これ?コントかな?
承くんや宏介くんは赤くなってふたりから目を逸らしているよ。
…このふたりいつもこうだよ?
入りきらなかったゴミを私の買ってきたゴミ袋に入れてすぐそこの私の家前に持って行く。そんなに量は無い。
千佳は小石くんをゴミ運搬係に任命しそのまま解散を命じる。…戻って来そう…。
千佳と青井くんは周辺散らかして無いか確認して周ってそのまま帰るか散歩デートなんだって。
バーベキューしたここの掃除はもうほぼ終わっている。
ここには私、承くん、宏介くんの3人だけ。
そうだ!
『ね?おふたり?さっき居なかった時に差し入れが余り過ぎてクジ引いて持って帰って貰う福引会を開催したのね?
厚樹くんには帰り際景品を渡したんだけどね。あとクジ2枚あるの。2枚ともけっこう良い景品が残ってるよ?』
承『えー!』
宏介『…。』
『じゃん?「ぽてち九種セット」と「一回だけ玲奈手作りお弁当券」です!
ではどうぞ!』
※これ欲しさに男子が盛り上がりました!当然玲奈が承に作りたいだけです。
宏介くんはくじを引かずにぽてちセットを受け取ろうとした。
承『宏介!クジ!クジ引いてから!』
宏介『…やれやれ。』
さては…宏介くん、千佳のずるに気づいているな?!
宏介くんはぽてち九種セットを引いた。
皆んなが差し入れたメーカーも味もバラバラなぽてちを適当に寄せ集めただけなんだけど結構色んな種類出てるんだね…?
宏介『…あー。俺そろそろ帰らなきゃ。』
承『えー?もう帰っちゃうのかよ?』
宏介『…承またな、そういえば紅緒さんがまたダブルデート企んでるぞ?』
承『とわんこのヤツ…!』
宏介『…じゃ香椎さん、承を好きに使って良いから。また。』
宏介くんもぽてち持って帰って行った。
『ね?こっちから帰ろう?』
私が笑いかけると承くんは少し赤くなりながら、
承『でも小石戻って来るんじゃ?』
(だからでしょ!)
『もう解散は伝えてあるし、まっすぐ私の家行ったら鉢合っちゃうし。』
承『別に鉢あっても…。』
『今日が楽しかったから遠回りして帰りたい気分なの!』
承『!
そうだね、あっちゃんに会えたから楽しかったでしょ?』
(ダメだ…これはなんとかしないと…。)
私のライバル永遠より宏介くんや厚樹くんの可能性が高い…!
☆ ☆ ☆
河川敷遊歩道を自転車引きながら歩き少し話す。
承くんも明日から始業式らしい。うちもなんだよ。
『あっという間に高校一年生が終わったよ。玲奈さんは?』
『うん、あっという間。』
この一年…色々あったよね?
良い事まずい事さまざま。
承くんは真面目な顔で、
『去年の今頃はこんな風に玲奈さんと話せることはもう無いって思ってた。』
私は頷く。
夕日に照らされる承くんの横顔。
…やっぱり少し大人っぽくなったよね。
『…。私もそう思って居たよ…。
卒業式での…こと。
もう私から…去って行って…。』
『…でも、また会えた。
会えて繋がった…。』
『…うん。』
…さっきからドキドキが止まらない…。
これ良い雰囲気じゃ無い?承くんが立ち止まる!
私も足を止めて承くんを見る、視線がぶつかる!
『…手紙にも書いたけど、俺、俺…。』
(きゃー!!きゃー!!)
あ?まず…!
『くしゃん。』
良いとこでくしゃみ出たー!
私の乙女力堪えて!
承くんは優しく微笑むと、
シュッと自分の上着を脱いで私の肩に羽織らせてくれる。
(これはこれでいい!)
『陽が落ちてきて、河川敷だから風が冷たくなって来たね?』
承くんの視線は優しい。
流れを引き戻そう!
私はうるうるおめめで前より身長差のついた承くんを見つめて先を促す、
『…それで?』
(きゃー!!きゃー!!)
承くんが一瞬動揺したけど、強い視線!
『俺、玲奈s『こっちに居たのかよー!!』』
(小石!くん!なぜ!いつも!)
※修学旅行や体育祭の二人三脚のことです。
…小石くんが合流して来ちゃった…そう来ると思って回り道したのにぃ!
小石『立花?お前お邪魔だぞ?俺と香椎さんの間に割って入るな?空気読めよ?』
※今日のおまいう。
『…明日から2年生だね?』
承『そうだね?どんな1年になるのかな?
平和で楽しい1年になると良いね?』
私は頷きながら、
『きっと忘れられない1年になる気がするなぁ。』
承『そうだね、そう思うよ。』
小石『ね?俺無視しないで?』
『…冗談だよ。』
私の家までふたりに送って貰った。
今度はふたりで…!
こうして私の高校一年生時代は終わりを告げる。
☆ ☆ ☆
家に帰って、外で一日中過ごしたからシャワー浴びて!
バーベキューいっぱい食べたから夕飯は少なめで、軽くストレッチして。
私の就寝時間が来る…!
常夜灯で薄くオレンジの室内。
『ふふふ♪承くん♪』
私はベッド上の抱き枕に広げたウインドブレーカーにそっと覆いかぶさる!
そしてキュッと抱きしめて、
頬擦り!グリグリ!からの…!
くんくん、くんくんくん!
…?
承くんの…ウインドブレーカー…バーベキューの匂いしかしない…。
スモーキーで焼いた玉ねぎの香りしかしないよぉ…。
部位を変えても襟口から仄か…これじゃ…。
承くん匂い検定一級の私でもこれじゃ楽しめないよ…。
私は口実を付けて返品交換を要求する口実を考えながら眠りについた。
いよいよ高校2年生になるんだね…。
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