第359話 仕事は完璧に!【side香椎玲奈】

承『…行っちゃった。』


駅改札を抜けてホームへ降りる階段に消えていく厚樹くんを見送る私たち。

承くんはしょんぼりしている。


厚樹くんを見送り、少し泣いちゃったのか潤んだ瞳の若葉さんはすっごい可愛い。

…承くん大人のお姉さんに弱そうだから心配になっちゃうよ。



若葉『承くん、玲奈ちゃん、宏介くんたちも今日はありがとう。

今日は本当に楽しくて嬉しかったよ。』

※小石くんだけ省略する若葉さん。


若葉さんがシュルリって音を立ててお姉ちゃんの上着を脱いで私に返す。

別に上着脱いだって下にシャツ着てるから露出が増えるわけじゃ無いけど…。

お姉ちゃんもだけど脱ぐって仕草にセクシー要素が強い…大人のお姉さん恐るべし。


…承くんは目を逸らしている。さっきの教育が効いてるね…。

小石くんは凝視していた、どうかと思うな。


若葉『脱いだままでごめんね、優奈ちゃんによろしくね。

じゃあまたね。』


後片付けとかは残った皆んながしているし、もう大丈夫です!って言ってある。

若葉さんはニコニコしながら手を振って立ち去る…。


これでこの場には私、承くん、宏介くん、小石くんの4人。


小石『じゃ、後片付けしに公園戻ろうよ香椎さん。』


『…うん、そうだね。』


厚樹くんが乗ってたうちの自転車は鍵かけて明日にでも取りに来よう。

千佳が片付けの仕切りしてくれて青井くんはそっち行ってる。

駅前スーパーで指定のゴミ袋だけ購入して公園に戻ろう。

先に戻っていて?私がそう3人に言うと、


小石『立花と宏介先帰ってて!俺と香椎さんでゴミ袋買って帰るわ。』


(え?要らないんだけど…)


すると宏介くんが無表情に、


宏介『…小石テーブルに飲みかけや食べかけあるから戻って来いって女王が言ってる。』


千佳!ナイス!

小石くん面倒なんだよね。


宏介くんは続けて、


宏介『…俺、小石と後片付けに戻る。承、ゴミ袋以外も買うかもだからお前荷物持ち。』


承くんは宏介くんの指示に頷く。

気を使って貰っちゃった?


宏介くんがすれ違い様に、


宏介『…承が話したがってるんだよ。

香椎さん聞いてやって?』


宏介くんはグズる小石くんを宥めながら一足早く河川敷公園へ戻ってくれた。



承『じゃ?ゴミ袋?』


『…ああ!うん!

そうだねゴミ袋。あとは…』


河川敷公園にゴミを放置出来ない!

食器は全部紙皿や紙コップ、竹くしなど燃えるゴミ。

ペットボトルをまとめる袋も要るし、まあゴミ袋だけで良さそう。

千佳が居るからある程度片付けは終わっているかも知れない。

ゴミ袋を購入して歩き出す。

…そういえば全然今日話せて無いぞ?私はわざとらしく、


『あー、今日は大変だったなー。』

※棒読み


承くんは慌てて、


承『今日は本当にありがとう香椎さん!

こんなに素敵なイベントになるなんて思わなかった!』


承くんは頬を紅潮させて今日の感動を指折り数えてくれる。


小学校でサプライズでしょ?

中に入れるよう手配してくれたり、

河川敷公園でバーベキューの用意してくれた。

卒業証書まで!


承『…あっちゃん今日何度か泣いてた…本当に良かった。

あっちゃんが…』


また始まった!最近こればっかり!


私の視線に気付いた承くんは慌てて、


『普段やってきた事がこう言う機会に現れる。

本当に良いクラス委員長だったから、皆んな香椎さんの為にって集まってくれたんだね。』


『厚樹くんが人気者だったからでもあるよ。

じゃなきゃ四年も前に転校した子の為になんか集まらない。

最低でもその厚樹くんの為に必死に駆け回る親友が居たから始まった企画でしょ?』


承『それでもさ?最初の俺の企画じゃ…香椎さんはすごい、本当にすごいよ。

語彙が無いのが悔やまれる。』


私は笑いながら、


『立花くんが企画したのを練りなおしただけ。ここしばらくずーっとあっちゃんの為に?でしょ?』


『…本当に申し訳ない。』


私は前に厚樹くんとの再会で我を忘れて私との約束をすっぽかされた事をチクチクしちゃう。


『…でも嬉しかったなぁ、みんなあっちゃんの為に集まってくれて。

もちろんあっちゃんの為だけじゃなくって香椎さんの企画と同窓会をまとめちゃうってイベント性に香椎さんの力が強いんだけど。

それでもあんなに喜んでくれて。

香椎さんがあっちゃんの為に、ずっと前に転校した級友にあそこまでしてくれて。』


私は少しだけ呆れながら、


『君が頼んだからだよ?立花くんが私に望んだからあそこまでしたの。

…私のなんでも言う事きく権まで使って。』


思い出したらちょっとむ!って思っちゃう。


承『完璧な仕事恐れ入ります。想像以上のお仕事でした!

☆5付けます。また機会があればお願いします。』


『この度はご依頼ありがとうございました。

またのご利用をお待ちしております。』


承くんの会釈に私は大袈裟な一礼で返す。


『『あはははははは!』』


公園方向からやってくる同級生たちが清掃も終わり解散した事を告げられる。

またね!手を振って同級生たちと何件かすれ違う。



『そうだ!保利くん!

ね?立花くん、いつから保利くんは?』


私は前に俺カレで再会した保利くんの事聞きたかった!

承くんは不思議な顔して、


『…うん、俺カレのバイト頼んだんだよ。

今日もあっちゃんちの近所だから誘って連れて来たけど…。』


私中学時代全然保利くんに会えなくて。何度か訪問したのに。

中学卒業後の春休みを最後に尋ねるのはやめた…その彼が俺カレで挨拶してきた時の驚きようったら!

なんで?なんで?承くんがポツポツ話してくれる。

香椎さんと一緒に家訪問したし、修学旅行で同じ班だったし…俺カレで午前出来そうな知り合いが…、ずっと引きこもりじゃ居れない…

最後に出たのは、


承『…香椎さんが気にしていたから。

ずっと心痛めてたの知ってたからなんとかしたいなって思った…。』


ちょっと恥ずかしそうに承くんは言ってる。

そっか。私のこと考えて保利くん気にしてたんだね?


承くんは赤くなりながら、


承『俺もクラス委員長のつもりだったんだよ。

クビになったけど。クラス委員長補佐を拝命してから。』


ふふー!そうなんだ?

もうじき公園着いちゃうね?

河川敷公園から引き上げてくる同級生と会う率が高すぎて手を繋ぐどころか名前で呼ぶ隙すらないんだよね。


河川敷公園を見下ろす土手まで着いた。

下にはまだ残ってる同級生も居る。

周りを気にしつつ承くんが言った。

恥ずかしそうに、でもハッキリ。



承『…いつも苗字で読んで訂正されるのは俺なんだけど…。

今日初めてわかった。

…ずっと立花くんって呼ばれるとなんか寂しいね?。』



『…やっとわかったの??』


私たちは笑い合いながら土手を下って、手を振る千佳や青井くんたちと合流したの!





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