第357話  Soul of Rebirth【side東条厚樹】

河川敷公園で俺はまた皆んなと夢中になって遊んでいる…。バスケすっげぇ楽しい…!


今日は1日、自分の鼓動がうるさい。

決めた時からここに来るのを待ち焦がれていた…。


承のパス!絶好!青井の上から叩き込む!

ダンクが決まると疲れ吹き飛ぶほどの快感と満足感!

承と小石とハイタッチ!

…宏介と青井、木村は悔しそう!


同級生たちも歓声を上げて盛り上がる…!


そう、俺はこうゆうのが大好きな子供だった!

遊びやスポーツを全力で楽しみ、夢中で駆け抜けた日々を送っていたんだ…!



☆ ☆ ☆

両親の離婚で引っ越して、転校先で馴染めずにいた日々があった。

荒れて明日が見えなくなっていた中学時代。

壁の中に居るような閉塞感となんとかしなきゃって苛立つ毎日。


高校生になっても今の自分と過去の自分の乖離に苛立ちを感じていて。

どこかで、


『今の俺は本当の俺じゃ無い』


そう思うようになっていた。


そんな日々に東光高校で承を見つけた。ここに居たんか?

多分、承は幸せそうで。

青井や伊勢さんとか見知らぬ美人と一緒に笑い合っている姿をイベントのたびに見つけた。

あの頃の自分と今の自分が違いすぎてとても話しかける気にならなくて新川小の同級生に見つかるのを防ぐように伊達メガネとかかけるようになって…。


ある日小石に見つかった。

…小石はびっくりした後、俺の変わりように段々横柄な態度になって?シメてやろうかと思ったけど目立ちたく無いからやめた。


小石『立花知ってんの?』


『知らないでしょ?』


口止めも出来た、でもしなかった。

今ならわかる、見つけて欲しかったのかもしれない。


…でも承は来なくて。

俺なんか忘れちゃったか…そう思ってた頃にやっと小石経由で知ったんだろう、随分あわてて承が俺を探しにやってきて。


…いざ会ったら…暑苦しくってちょっと面倒になった…。

いや、ほんと。

あいつ俺のことなんか神聖視して無い?

昔はともかく今はただの陰キャで、クラスに居るのか居ないのかわからない根暗男子なんだぜ。


…だけど承は毎日のように来た。

うざい半分、ちょっと嬉しい半分。

俺会いに来て俺が話さないから自分の近況数年ぶん語って満足して帰っていくの。


ある日むかついた俺は自分ち連れてって、俺の暗黒期の話しをした。

意外にも口を挟まず大人しく聞いてた。

これだけ話せばもう『あの頃の厚樹』じゃないってわかったろう、もう来るなよ?絶対だぞ?

って言うと、満面の笑みで



承『わかってる!フリでしょ?』


そう言って、次の日来た。

俺はがっかりするやら嬉しいやら。

…もうその頃にはわかっていたんだな。



俺は自分からは行かないけど承はバイトの日以外はだいたい来る。

…あまりに来すぎたんかな?

承は恥ずかしいのか否定してたけど連れの女の子がある日俺の所に来て言った、


紅緒『…男同士って生産性無いと思うな?

承くんとはどういう関係?』


と聞かれた。


『…。なんだろ?』


昔なら『親友!』って答えた。

再会したばかりの頃なら、『昔の知人』って答えただろう。


紅緒『…私、承くんの彼女の紅緒永遠って言います。

厚樹くんだよね?彼は最近君のことばかり。

承くんを独り占めしないでね?』


そう念押ししてじゃね!って笑いながら歩いて行った。

彼女出来たんだ?すごい綺麗な色白の目力美人。

彼女居るなら俺なんて構っているなよ…。承に呆れた。


承は押し付けないよ!って姿勢を押し付けてくる。

…でも昔から知っている。真っ直ぐすぎる歪みを持つ融通効かない漢。

結局俺は承とまた仲良くなる。


俺カレでメシ食べたり、バイト後のバスケやったり気づけば一緒に居る時間はに増えた。

だから自分のクラスで承を襲撃するって話を聞いた時びっくりするほど腹が立ったし、荒事に慣れてた俺は色々準備して当日後ろからひとりずつ仕留めて回った。

…承に幸せな生活を送ってたんだろ?みたいな事言ったけど、

最後に承はゴミクズとタイマンを選んだのは驚いた。

きっと色々あったんだなって思った。

勝ったし、青井ともタイマン張って勝って仲良くなったって聞いてびっくりした。

そんなキャラじゃ無かったし。

しかも理由が、俺んちで読んだヤンキーマンガだって(笑)


そのお礼になんでも言ってって言われた俺の願いはすぐに出た。


『俺、新川町に帰りたい…。

いや?帰るって住みたいってんじゃなくって…。

…一度俺の故郷、少年時代を過ごした新川町へ帰って自分を探したい…。

…そしてあの日を最後に会って無い父さんと姉ちゃんに会いたい…。』



俺頼みを聞いてくれた承は今日の手配をしてくれた。

懐かしい駅に着くと、承や宏介や皆んなに香椎さんまで来てくれた。


小学校を周り、家族に再会する。

そこには確かに俺がいた。

遊びもスポーツも全力で楽しみ夢中に駆け回る俺の姿を昨日の事の様に思い出す。

熱い記憶を辿った、そして古い傷がうずいた。

それでも前に進みたい。そう思えた。


無くしたカケラはそこらに散らばっていて、それはキラキラしながら俺を導いた。

そんな事を思った事は絶対に人に言えない。

…でもきっと承は笑わないで肯定するのだろう。


俺の魂はここにあった。

わかったなら、もう前に進むだけ。


今も学校で目立つ気は無いし、今の立ち位置で良いと思っている。

でも、友達たちと。

承たちと一緒にまた毎日を夢中で熱く過ごしたい。

そう思えたんだ。

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