第355話 そしてバーベキュー

宏介のフォローもあり、この後のバーベキュー大会に保利くんも参加を決定した。

何する事もないので出して貰ったお茶を飲みながらああだこうだと3人で話しをする。俺カレの話しとか。

保利くんも同窓会へ行く事を保利くんママに伝えると、


ママ『よしひろ!行ってらっしゃい!女の子お持ち帰りして来てもいいのよ!』


宏介が小さく、そういう会じゃないって呟いてた、


保利『…でもバイトして外出るようになって外出る私服を買うようになった。…引きこもってたらって思うと最近怖いんだ…。』


『出るの勇気必要だったでしょ?』


保利『うん、そして今日も怖い。』


俺たち居るし、俺たちグループは基本はじっこで目立たない集団だから…。

そんなところで12:30あっちゃんから来てって電話来た。

じゃ、保利くん少ししたら出ると思うから支度して待ってて?また連絡する!

そう伝えて俺と宏介は神崎家へ戻る。



厚樹『…気をつかわせちゃったな。』


いやいや?俺たち保利くんち遊びに行ってたからさ?

あっちゃんパパもあっちゃんお姉さんも優しい嬉しい表情で微笑んでいる。

厚樹をありがとう!いえいえ!みたいなやりとりがあった後お姉さんが、



若葉『…承くん…大きくなったね?お姉さん覚えてる?』

※厚樹と誤字しました。訂正済み(笑)


そう言いながら涙でうるうるの瞳で顔を近づけて若葉さんが俺を覗き込む。

あっちゃん男前だけどこの家美男美女揃いなんだよな…


あっちゃん両親も、お姉さんもみんな顔立ち整っている。

その若葉さんは俺を感慨深そうに眺めて、俺と自分の背を比べる。


若葉『…あんなに小さかったのに…もう私よりずっと大きいね?

厚樹より大きいでしょ?』


厚樹『うるさい。』


若葉『懐かしいな、覚えてる…?宏介くんも?』


若葉さんは懐かしそうに俺があっちゃんちへ遊びに来た時の話をしてくれる。

そうだった!そんな事あった!若葉さんは笑いながら俺の頭を撫でてくれる。

…もう子供じゃない…けど…なんか懐かしい感覚だった。


話は楽しく尽きない、笑い懐かしみずーっと話して居られそう。

若葉さんも離れがたいのか、



若葉『…ねぇ?お姉ちゃんもバーベキュー出ちゃダメ?

やっと会えた厚樹ともうちょっと側に居たいし、承くん達とも話したい!』


厚樹『…同窓会だし…。』


あっちゃんも離れがたい感じ…。

バイトの基本!


『すぐ上司に確認します。』


香椎さんから即okが出た。

是非どうぞ?との事。ただ思ったより人多くて騒がしいって伝えて?と。


香椎『うん、今追加の料理作りながら会場班に敷物とか紙コップとか諸々の指示出しながらすごい余った差し入れの当たるクジ引き企画の準備中!』


香椎玲奈は忙しい…。性分なんだろうけどこういう場面が似合う女の子なんだね。


俺たちは保利くんと合流して自転車で移動して河川敷公園へ向かう。

若葉さんは車で河川敷公園へ向かったんだ。



☆ ☆ ☆


宏介『…何これ?』


そう、河川敷公園のバーベキューコーナーの一角から隣接する公園の半分くらい大体見知った顔、顔、顔。

朝のサプライズで来てくれた20人にバーベキューから参加組をプラスって程度だと思って居たんだけど…?

これ80人位は来てない?


もちろん所用がある子も居るだろう、完くんのように越境して進学する者も多い、佐方くんのように高校進学を機に引っ越しとかもあるはず、だけどそういうケースの子以外ほぼ居る感じ。


せいぜい40人とか50人…それでも大規模だなあって思うけど80オーバー?


玲奈『正確には82人だね…厚樹くんお姉さん入れれば83人。』


あ、香椎さん!

香椎さんが大きくないのに通る声で、


玲奈『今日の主賓!厚樹くん来たよー!』


おおおお?!

厚樹くん主役だから借りていくね?香椎さんはパチンってウインクしてあっちゃんを連れていく、


玲奈『じゃ、厚樹くんはこっちへどうぞ♪』


厚樹『…うん。』


あっちゃん照れて赤くなってる!

香椎さんに間近で笑いかけられて心穏やかに居られる男子なんてそうはいまい!


河川敷公園に集まる同級生たち…。

中学校から転校して来た子も居るから全員知り合いでは無いけれど80人のうち75人は知ってるわけで。


それぞれ会費1000円に何か差し入れを持って来て!って周知してたので手土産が山をなしている…。

香椎さんのお願いってこうなる…。

香椎さんが悪女だったら大変なことになるよね。


紙コップ飲み物が行き渡り香椎さんが乾杯の音頭を取る、


玲奈『厚樹くん!新川町におかえりー♪

そしてみんな久しぶりー!』


『『『『おかえりー!お久しぶりー!』』』』


近くに居る人と紙コップで乾杯する!

今日は田中くんだった。北翔では大活躍みたいだね?

田中くんは映像作品が作りたくて仕方ない。

去年夏に1人の少女の記録を撮ってすごい反響だったけど破棄してしまった…。

次は良いの撮れると良いね?


このテーブルは俺、宏介、青井、田中、伊勢といつものメンバー。

…そこにこっそり保利くん。

東光組+北翔組って感じに進路が別れた。

…木多さんは外町会いたく無いから今回は取りやめた。

外町既読スルーで欠席している。


青井、伊勢さんはかつての級友に会いにテーブルを移動しては戻る。

宏介も昔の部活仲間と話したりしている。

…俺にはいつメン以外にはマッチョ達しか居ないw


『野球は筋肉!』

『筋力こそパワー!』

『タンパク質が俺を呼んでる!』


変わらなくて安心する。

完くんは全寮制の宿舎で野球漬けの日々来れなかった。

また夏休みにあえるだろうか?


基本田中くんとつるんで食べながら話す、保利くんも交えて。

田中くんも保利くんも大人しいし。基本俺と宏介静かだからこのテーブルは静か。時々バーベキューコーナー行って焼いて食って話して。

…佐方くんは関西に行ってて今日の話したら来たがってたって。

みんな大きくなって、自分の世界がある。

…伊勢さんや青井も俺より広い交友と夢と自分を持ってて。

俺はあの日の少年のままなんだなって思っちゃう。


向こうの主賓テーブルに今日の主賓のあっちゃんと、幹事の香椎さん。

あっちゃんのイメチェンであっちゃんが格上と立ち位置を理解してなおかつ香椎さんの側にいる為に小石はあっちゃんの東光高校一の仲間!厚樹くんと話したきゃ俺を通せ!みたいな感じ。


お前こないだまで外町にそれやってたろ?


小石『俺が厚樹くんを見つけた!

すぐにわかったね!一目見れば1発でわかる!』


…小石のやつ…お前あっちゃんが陰キャになったって下に見てたくせに…!

あっちゃんを囲むのは俺の敵にも回った陽キャ男子たち。

女子は香椎さん派閥の香椎さん、小幡さん、一条さん、二村さんと言った学年屈指の有能美人が囲んでてヒエラルキーというか、一軍、二軍って言葉は言い得て妙だと思った。



まあ、これ位が1番楽だよね。

僻みや拗ねてるわけじゃ無くそう思う。

…さっきから香椎さんと目が合うけど…香椎さんは今日そっちでしょ?

級友たちの前で香椎さんは絶対特定の誰かと仲良し!みたいな事はしないはず。


田中『それでね、宏介くんには…。』


『ラブコメ主役の貫禄!』


宏介を取り巻く女の子たちの話を興味深く聞いてると。


もにゅん。


な?なん?


若葉『承くん、さっきは話せなかったけど承くんが厚樹を見つけてくれて厚樹と体当たりで向き合ってくれたんでしょ?さっき厚樹から聞いたよ?』


後ろから若葉さんが体当たり!なんか!当たっちゃいいけないものが…!

若葉さんは潤んだ瞳で俺をまっすぐに見つめる…!

そうだった!お姉さん距離近い感じだったっけ?


若葉『厚樹は主役で忙しそうだし、連絡先も交換出来たら。

今は遠くからで良いから見てたいよ。

…折角だから?今日は承くんといっぱい話したいかな?厚樹と別れたあとどんな中学、高校生活を送ってた?』


若葉さんはイタズラっぽく笑うと大人のお姉さん!って風情で髪をかきあげて笑う…。

テーブルに戻った伊勢さんがそれを見て、



伊勢『私のかき上げと違う…。』

伊勢さんはかき上げよりかき揚げ好きでしょって思ったけど絶対怒られるから黙ってた。



若葉『ふふ♪くちゅん!』


大人微笑からの可愛いタイプのくしゃみ!

あっちゃんお姉さんは恐ろしいスペックの持ち主だった。

河川敷公園は遮るもの無いから風が強め。


今日は良い天気で気温高めだけど…風冷たい。

若葉さんは甘えるように、


若葉『…承くん♪上着貸して♪』


女子大生の破壊力!俺は抵抗したけど、


若葉『良いじゃない?良いでしょー♪』


あっさりお気に入りの春物ウインドブレイカーを脱がされた。

…バイト代で買ったスポーツブランドの…。


若葉『あ!風通さない!すご!承くんこれあったかい!』



ニコニコする若葉さんは4歳上と思えないほどあどけないはしゃぎようで咎められない。

本当は再会した弟のあっちゃんと話したいだろうし、側に居たいだろうに。

若葉さんはあっちゃんを嬉しそうに目を細めて俺たちのテーブルから眺めている。


若葉『せっかくだから、楽しもう?美味しいね?』


『はい。』


?『…それなら…良かったよ…?』


『ひいぃっ!』



変なとこから声が出る!

怖!寒い気配と威圧感がする!


後ろには香椎さん…優しく品のある笑顔…なのに…

なんでこんなに怖いの?


香椎さんは若葉さんのウインドブレイカーと俺を何度か交互に見て暗い瞳で一言呟いた。



玲奈『…そっかぁ…。』


俺なんかやらかしたらしい…。

俺は香椎さんが肩パンしやすいように従順に肩を差し出した…。

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