第354話 再会それぞれ

あっちゃんの心配は杞憂だった。

神崎家の前で自転車を止めて降りる3人。

あっちゃんは緊張している…。


家の前で懐かしそうに深呼吸しているあっちゃんの表情は硬く、悲壮感すら漂う。


ガチャ!!

玄関の扉が開き、人が飛び出す!


厚樹父『厚樹!厚樹!大きくなったな!』

姉『厚樹!厚樹!あつきー!!』


玄関から飛び出したふたりはあっちゃんのお父さんとお姉ちゃんだった。

お父さんはやはりあっちゃんに似て(逆か?)男前のちょい悪っぽいイケおじ。

顎だけちょっとひげ生やす格好良いおじさま。

俺の記憶だとオシャレで、友達を大事にしてた単車好きでゲーム、マンガ好きの…あぁこれあっちゃんだわ。

あっちゃんママがあっちゃんにパパの面影見るわそりゃ。こうして見るとソックリだもん。そのイケおじは声も出さずに涙をポロポロ流してギュッとあっちゃんを抱きしめている。


そしてもう片方。

これまたやはりあっちゃんのお姉さん。

…たしか若葉さん…って言ったっけ?

…綺麗なお姉さんになったなぁ。子供の頃ドキドキしたはずだよって美人。

その美人が号泣してあっちゃんを胸にかき抱いていて…。もう土砂崩れ!って感じの泣きながら嗚咽を漏らして大変。

若葉さんはバレエをしていた。あっちゃんより4歳上のお姉さん。

一回バレエの発表会へ連れて行って貰ってその美しさとしなやかさにドキドキした覚えある。緊張してたから厚樹と一緒に来てくれて嬉しいってハグして貰ったっけ?今は女子大生位なのかな?

スレンダーな体型がわかるパンツルックに明るい色のブラウスを着ていて大人のお姉さん!って風情。

10分ほど抱き合う神崎家を見ながらやはり自分に当てはめる。

もし…両親が離婚…望とも光とも離れ離れになっちゃったら…。

考えたく無い。離婚なんてどこにでもある話し、そうはわかっていてもこんなに身近にある別離の可能性が背筋を寒くする。



厚樹姉『…ふぇ、ごめんね、お構いもせず…。お家へどうぞ?』


宏介『…どうぞお構いなく…。』


感動の再会に水を差したくない俺たちは端っこで大人しくみていた。

ふたりの大人が泣いて抱きつく様にびっくりあっちゃん。

でもふたりの泣き顔を認識した瞬間あっちゃんの涙腺も大変な事になっているわけで。


家族の家族の再会ってこんなに良いものなんだなって思いながら俺と宏介は顔を見合わせる。

…俺も無性に家族の顔が見たくなってきた…。



☆ ☆ ☆

落ち着いた神崎親子に案内されて俺たちも久しぶりの神崎家にお邪魔する。


厚樹姉『今日はありがと、ゆっくりしていってね!』


積もる話もあるだろう、他人が居ない方がいい事も多いって宏介の言葉に俺は同意する。

俺たちちょっと午後のバーベキューのお使いがあるんで?お茶を一杯だけ頂きすぐに家を出た。


俺は宏介と自転車引きながら話すよ、


『再会出来てよかった。』


宏介『…そうだな、承が熱意を持って厚樹に接し続けた結果でしょ。』


『そうかな?なるべくしてなったんじゃない?俺が居なくてもあんなに会いたがってたんだから誤差はあれどきっと再会はしてたでしょ?』


宏介と笑い合いながら、近くのスーパーへ向かう。

大容量のペットボトルのお茶を何本か購入しておいて?一回香椎邸へ向かう?

一応一回香椎さんにロイン入れたんだけど…。


『え?もう?人が集まりまくって河川敷公園に?』


料理班が人余り、会場設置班にも人が多く流れた結果あっという間に準備が完成して同級生たちが大集合!まだ11時だよ?

そいつらがもう会場に集まった様子をSNSやらロインやらで人が人を呼び、まだバーベキューは始まってないけどすっかり大イベントになった第一回新川中同窓会。



あっちゃんは自分でも河川敷公園行けそうだが…。

今飲み物買うなら香椎さん指示貰って直前の方が良い。

少し時間潰す必要があるな…近場で時間潰す…俺ん家帰るか?色々考えたけど…?


あ!良い事考えた!




☆ ☆ ☆

保利『え?なんで居るの?』


『保利くんおっすおっす!』

宏介『…お久しぶり…。』


北エリアで最寄りの知人宅って言うと?

そう!元不登校の現俺カレアルバイトMr.amシフトこと保利くん宅!


保利ママ『まぁまぁ!立花くんいらっしゃい!』


宏介は俺にだけ聞こえるように、


宏介『…歓迎されてる?信頼されてるね?』


俺はギョッとした顔で、


『とんでもない!怖い目にあったんだよ!』


その時のことを説明する。

で、家にあげて貰って保利くん部屋に通して貰ったわけ。


保利『貰ったわけじゃないでしょ?』


俺はかくかくしかじかで?

こないだ話したあっちゃん帰郷会で今神崎家に寄ったとこって説明をした。

宏介も久しぶりって挨拶してた。


保利『それはわかった。なんで俺んちに?今日はバイト休みだけど。』


知ってる。でも気づいてしまったんだからしょうがない。


『うんうん、わかるわかるよ。』


保利『?

じゃあなぜ?』



『今日はさ、あっちゃんが帰郷しためでたい日!

俺お願いして香椎さんにあっちゃん帰郷会の幹事補佐お願いしたの。俺幹事のつもりだったの。』


保利『うん。』


『でも、気づけばあっちゃん帰郷会は厚樹くんおかえりプロジェクトに格上げされてその代表は香椎さんになっていて気づけば立場は逆転してたわけ。』


保利『…香椎さんパネェ…。』


『したらさ?俺も何かしなきゃいけない、そうだ!保利くんを連れて行こう!と思った次第です。』


保利『…いやだ、いやだよ。』


『そこをなんとか!』


俺はせっかくあっちゃんも帰って来たんだから保利くんだって同窓会出ても良いと思うんだよ。卒業証書持ってるでしょ?

来年東光へ行くとしても、俺カレでバイトしてるんだとしてもどこかで同級生に会う可能性はあるわけで。

だったらここで一回!一回会っておけば…!

今なら俺たちも居るし、あっちゃんが主役だから悪目立ちしないし!

俺はメリットを羅列する。


保利『それはわかるよ、けど…。』


保利くんは抵抗があるみたい。

でも俺は俺や仲間達がフォローできるうちにみんなと再会して欲しい。

勝手な押し付けかも知れないし、ハードル高いかも知れない。

それでも!

俺の意図を察した宏介もフォローしてくれる。


宏介『…俺たちのグループに紛れてさ?承、青井、伊勢さんたち東光勢も居るし俺や田中くんも居るし。…香椎さんだって君を気にしていたし。

承も言ったけど今日は厚樹が主役だし。絶対に悪目立ちはさせない。』


何人か俺たちの仲良い人達に話ししておくし端っこで俺たちとバーベキュー食べて聞かれたら保利くんだよって改めて紹介するし。


宏介が穏やかに説明すると保利くんは考えこんだ。

最後は思いを伝えるだけ、


『もちろん嫌なら断って。

でもさ?俺保利くんとバーベキューしたいんだよね?』


そう言うと保利くんはため息つきながら、


保利『…君に引っ張り出して貰ったから外出れたんだ…。

わかったよ。絶対悪目立ちさせないでね?』


『絶対に悪目立ちさせるなよ?って事は…?』


…宏介にめっちゃ叱られた。

保利くんはすっごい笑ってて漫才みたいだね?ってウケてた。

…そうだね、相方にするなら宏介しか居ないよね。



こうして保利くんも第一回新川中同窓会バーベキュー大会への参加が決定した。よし!保利くん!こっそり俺たちのグループと一緒に端っこでバーベキュー食べようよ!

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