第349話 初東光駅【side香椎玲奈】

私ね!3学期は頑張ったんだよ?

天月でついに学年一位も奪取したし、テニスも県内のみの大会だけどシングルスで制したし。

新二さんと鶴田さんとの橋渡し?つなぎを何度も務めてね。

新二さんは鶴田さんをはっきり意識しているし、鶴田さんも昔と変わったんだね?って新二くんにコメントするようになってたまに私抜きでも会ってるし!

…そろそろ切り出せる!そろそろこの歪な関係を終わらせて…!


そして私は思うんだよね…大概のラブコメって大体高校2年生位が舞台やピークだと思うんだよ。

先輩後輩出せるとか、学校慣れつつまだ時間ある状態とか。

なんか17歳っていう16でも18でも無い大人でも子供でもっていうお年頃!

私は来年に諸々の勝負をかけるべく日々勉強、部活、家のこと全てに努力惜しまないっ!




…ところがだ。

永遠かかってきた通話で私は耳を疑う、


『…こないだのダブルデートで!きゃっ♡』


はあ?はああ?


『初耳なんだけど?』


スマホの向こう永遠はあわてて、


『いらんこと言っちゃった…。違うの!これは違うの!

宏介くんと愛莉ちゃんの為なの!』


愛莉ちゃんて誰?

それより!さっきの!ダブルデートって単語が聞き逃せないでしょ!

私の追求に、自分で言い出した淑女協定に則り、

『なんか進展があれば言う、嘘はダメ。』

私は情報開示を要求するよ!

永遠は言いたく無い事言わなくて良いってことになってるもん!って渋るけど、


『とわ、デートの話ししたいんでしょ?楽しかった?』


『うん!楽しかった!

…怒らない?』



(げきおこだよぉ?でも情報収集が先決!)


前回、バレンタイン互いのバレンタインデートの話し交換に私の家でお泊まり会をしたのね。

だから今回は永遠の家でお泊まり会しよ!って提案受けたけど忙しいからそれでは永遠の家で半日位おしゃべりしちゃお?って事になった。

…一度も降りた事無い東光駅、近くで東光高校を見てみたかったって理由もある。


春休みも後半、3月も終わりに近づく。

部活を終えて、シャワー浴びて友達とランチ食べて別れた後にいつもの電車に乗って私は普段のひとつ手前の東光駅に降り立つ。


(いつも通るし、電車から見てる光景とは違うなぁ。)


しかし思っていた以上に何も無い駅…。

駅前に店舗無いって…。

これでも新幹線も通るようなターミナル駅から2駅だよ?

不思議な光景だった。



『玲奈!おっすおっす!』


『永遠!』


…やっぱり綺麗な娘だ。

私服のパンツスタイルも脚長さと細さを際立たせてる。でもアウターで女性らしさとちょっと尖った感?少し前なら甘辛みたいなのを合わせてる。

それに綺麗な長い黒髪が揺れてて、大層な美少女っぷりだよ。


『永遠、そういう服も着るんだね?似合ってる、すごくスタイル際立つね?』


『あはは…全部なるみんチョイスだよ…。なるみん服屋さんでバイトしてからすごいんだよ!』


伊勢さん…伊勢さんも大人になってるんだよね。違う高校の女の子の口から小さい頃から知ってる元々友達だった子の近況を知らされる複雑な気持ちを永遠は微塵も汲み取らずに、


『ふう、疲れた…、久々にこんな歩いたー!』


私は慌てる、


『え?永遠の家近いんじゃ無いの?』


『…普通の人にはね?』


永遠はなんとも言えない顔をした。

なんなの?なんか特殊なのかな?すっごい坂とか?道が曲がりくねってて近いのに回り道とか?


気づけば周りの人たちが私と永遠をすっごい見ている…。

こんな綺麗な永遠も天月の制服着た私も人目を引いちゃう。

私は永遠を追い立て紅緒家へ向かう事にした…。




☆ ☆ ☆

駅を出て、すぐに見えるは東光高校。

私は近くで見たい!ってお願いする。

永遠は嬉しそうに、


『外からだけど案内するよ!良い学校だよ!

私は大好き!』


永遠は誇らしげに笑った。


あの仮説校舎の一階の右側が私と承くんの1ー4!あの四階の真ん中!社会科教室でね?いつも承くんとあそこで一緒!告白もあそこでしたの!

文化祭の後夜祭でね?キャンプファイヤーの照り返しが…!

永遠は本当に楽しそう…嬉しそうに誇らしげに東光高校とエピソードを熱く語る。

私だって母校大好き!でも永遠ほど熱く愛を語れるだろうか?

その思い出にも、『承くん!承くん!』って。

私は少し…ううん、かなり羨ましく思った。

承くんと同じ学校で同じイベントを共有して特別な日と記憶に残らないような普通の日々を共に過ごせたら…。

それを目の前の綺麗な娘はわかっている。それがかけがえのない日々だってしっかりわかって過ごせている。それがこの少女の最大の強みだと私は思う。

当たり前の日々もスペシャルな1日も永遠にはすべからく貴重な一日って概念が永遠の1日を輝かせて余す事無く楽しめる秘訣なのだろう。


目の前のニコニコした美少女から学ぶことは多い。


そんな事を思いながら東光高校を外観一周しながらの永遠ツアーはツアーガイドがバテて半周の校門前で終わった。


『…疲れ…。』


『ふー。もう家行こうよ?家まで行ける?』


永遠は指をさす。

うん?そこの大きい家?


『あれが我が家…。』


『すぐそこ!!』


私は突っ込まざるをえなかった!

この娘自転車通学してるって言って無かった?

この校門前から見えるよ?普通に?



こうして私は立派な日本家屋の紅緒邸にお邪魔したのであった。隣接して東光組って言う会社がある。

永遠の家の家業だね?

皆んな永遠に声をかけてて愛されてるんだなぁって思った。


おじさまたち、

『永遠ちゃんワガママ言うなよ?』

『お嬢がまた友達を!』

『おじさん嬉しい…。』

『妹をよろしくお願いします!』』


永遠は、

『パパ心配しすぎ!』

『友達は多いよ!今は!』

『もー!おじさまったら!』

『兄貴は雰囲気出し過ぎ!』


ニコニコ軽口を返している…。

パパ?兄貴?おじさま?


…一族多いのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る