第347話 バイト終わりの【side伊勢成実】

店長『なるみー?彼氏ずっと見てんじゃん?付き合いたてでしょー?』


『違いますー。』


…店長が揶揄ってくるし!

春休み初日、あたしのバイトする服屋さんは結構大忙し!

エイオンのお客様感謝デーと春休みに入り高校生位の子が多い為人通りも多く賑やか。

こういう日は当然うちも大忙し!

来店客が多ければ当然活気が出るし、いっぱい人が見てればお店って入りやすくなる。

あたしが出来ることは基本的にレジ打ちと接客位だけど接客はうまいって言われる。

夢中になってお客様が望むものとあたしが良いと思うもの、予算とタイミングそれをすり合わせながら洋服を選ぶお手伝いをする。


言い始めたらキリがないけど良い事もあるし腹が立つ事もあるわけで。

でもあたしは洋服が大好きでこのお店のチョイスやセンスが大好きでさらにスタッフさんが好きで入り浸ってるうちにここでバイトを始めた。


最近やっとパンツの丈を詰める為の採寸とまち針で留めるのもやらせてもらっている。

夢中であっという間に働く日もあれば長くダラダラする日もあって、それは結局お客様次第なんだけど今日は忙しかった!


もう少しであがりの9時(21:00)で立花が店の見える通路に設置されたソファで飽きずにうちのお店を見ている事をね?店長に揶揄われたわけ。


店長は40ちょっとのお姉さん。

ママくらいなんだけどお姉さんって言えって業務命令が出ているし実際若いと思う。

センスが良い、イキイキしたチャーミングな店長。

店員さんはもうちょっと若い3人でうち1人が産休であたしが採用されたんだ。

時々赤ちゃん連れてきてくれるこのお姉さんの大ファンであたしはこのお店好きになったんだよね。

ちょうど今日来ててね?


お姉さん『なるみちゃん!カレピ紹介してよー?』


店員『そうそう!このダイナマイトバディを好きにしてる不届き者紹介してー!』


『そんなんじゃないですよ!』


あたしは否定する。だって!立花はそんなんじゃ…。

お姉さんはうんうん頷いて、


お姉さん『うんうん、みんな最初はそう言う!

でもね?男と女だよ?どこでどうなるかわからんのよ?』


店員『あー。あんたずっと友人枠だった男友達と一気にくっ付いたもんね。』


お姉さん『そうそう、ある日思うの!あ、こいつは私わかってるし私もこいつわかってる。尊敬できて信頼している…これ旦那にしても良いんじゃない?

…トゥクン…!

って!』


お客さん居ないから店長含めて大笑いしてるうちのスタッフ。

そっかぁ、お姉さんの旦那さんってずっと男友達だったんだ?

…うーん、なんとも?


店長が締めるように、


店長『なるみはまだ若い!色んな選択肢がある。

恋が成就しても叶わなくてもね?それは貴女の糧になる!

貴女の倍生きてるお姉さんから言わせて貰うとね?

叶わないって諦めた恋より当たって砕けた恋の方が何倍も心に残るし成長に繋がったし一生忘れられないモノが残るんだよ?』


店長の一言一言があたしに刺さる。

…あたしってわかりやすいのかな?


店員はあははって笑いながら、


店長『なるみは物分かりが良くて良い娘なんだけどそれで損してるんじゃないか?ってお姉さんは心配。

…たまに待ってるよね?あの彼?最低でもあの彼はなるみと帰りたい、その為なら待つのは平気だし、貴女の帰り道を心配してくれてるってことでしょ?』



『『『きゃー!!』』』


盛り上がるうちのスタッフ…。


店長『じゃ、今日はもう上がりでいいよ?9時でタイムカード切っとく!

まだエイオンも開いてるし?ちょっとぶらぶらして帰れば良いじゃ無い?』


店員『…なるみちゃんの倍って店長サバ読みすぎ!32な訳ないっしょ?』

お姉さん『え?なるみちゃんのカレお迎えにたまに来てたの?詳しく!』

店員『そうそう!目が合うとペコって会釈するの!爽やか目のカレ!』


お姉さんたちに揶揄われてあたしは真っ赤になって立花の所へ向かう。

立花はアレ?って顔で、


『伊勢さん?早くない?』


あたしは何事も無かったように、


『今日は産休中のお姉さんも遊びに来てて?落ち着いたから上がりで良いっていわれた。少し早く上がれた。』


『そう。じゃ外で待ってるね?』


『うん!』


あたしは店員だから社員通用口から退出しなければならない。

出口で警備員さんにバッグの中チェックと社員証を提示して退出。


待たせないように最短距離で出てきたけどもう立花は待ってて。


『おかえり!』


『…ただいま?』


なんか恋人みたい…。

そう意識すると頬の熱は引くどころか加熱する一方!

暗い屋外で良かった。真っ赤になってるのは恥ずかしいから見られたく無いよ。立花はどうしよ?って顔で、


『…まだ20:30だね?どっか寄る?』


『…ちょっとおなかへった…。』


でも油断しちゃダメ!去年!運動しなくなってややふくよかになった時期があるっしょ!もう9時近い。…望ちゃんと走ったっけなぁ…。

210話ダイエットシスターズ参照。



立花『なんか食べてく?』


立花は微笑みながら提案してくれる。

ラーメン、マッケ、ケムタ、ハンバーグ、カレー、カツ丼。

DK(男子高校生)チョイスっしょ!


『ハンバーグやカレーなら俺カレ行くし!』


立花は昼過ぎまで俺カレでバイトして?夕方過ぎまで厚樹くん家に居たんでしょ?そろそろ帰りたいよね…?


『帰ろうか?』


立花はニヤッと笑って、


『ううん、伊勢さんかなりおなか減った顔してる!』


恥ずかしいよ…そんな顔してた?

ちょっと減っただけ!ちょっと!

…もう少し痩せたいって思いはいつもある。

でもなかなか…!


『決して太って無いけどなぁ?女の子って気にすぎだよね。』


男の子にはわかんないんだろうなぁ。

…例えば香椎玲奈なんてあんなほっそいのに、胸とかお尻とかしっかり曲線を描いている。アレは羨ましい。

結局トップとアンダーの差なの!


『立花にはわかんないと思うよ?』


『違いない。…じゃ?うどんは?

まだ少し肌寒いし?トッピングで調整できるし?』


『うどんにする。』



一緒に帰るだけだと思ってたあたしに立花の誘惑!

この時間に食べるごはん美味しいの!

帰り道考えると暖かいうどんは最高だ!

あたしは頷いて立花と肩を並べて早足でフードコートへ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る