閑話 うそはいけない

枕元のスマホを見ると2:30。

日付は4月1日なんか酷い夢を見た気がする…。


横になる俺の胸元に何か乗ってて?圧迫されて息苦しいしすんごい邪魔。

俺は手を伸ばして胸の上の太ももに隣の枕元のキンキンに冷えたスマホをペタンとくっつける。


望『…ひゃうん!』


俺の胸元に乗ってたのは望の脚だった。ツネってやろうかと思ったけど先日さ?


☆ ☆ ☆

俺布団sideに来てる望の脚をどかそうとして目を覚ました望。


望『お兄ちゃん!私たち血の繋がった兄妹なんだよ?!

…ダメ、ダメだよぉ…!』


自分をかき抱くように雰囲気を出し始めるクソガキに俺はイラッとした。

寝相が悪いから仕方ないって言い訳してたけど、


望『妹の太もも触っちゃうなんて!兄ちゃんのエロガッパ!』


一日中ディスられて俺はイラッ☆としたんだ…。


☆ ☆ ☆

望は飛び起きて俺に猛抗議!

国境侵犯とセクハラで主張は真っ向対立。


『こないだのエロガッパ扱いとか、冗談でも何度もやられると不快。

いい加減にしろよ?』


望『兄ちゃんは冗談がわからないねぇ。そんな余裕無いとモテないよー?』


望は女の子らしく口が達者。こいつ少し黙れば良いのに…。


ひー『くぴー。くぴぃー。』


その頃ひーちゃんは俺と望の敷布団の隙間に挟まって気持ち良さそうに寝ていたんだよ。



☆ ☆ ☆

4月1日朝。なんか昨日悪い夢を見たせいか寝起きが悪い。

夢の内容は忘れちゃったけど悪夢だったような気がする。

中途半端に2時頃起きたせいかもしれない…。



望『おはよー!ひーちゃん♪』


ひー『ねーちゃんおはよう…。』


望は今日寝起きが良いみたいだ。

ひーちゃんは逆にまだ少し寝ぼけているのかな?


テレビ『今日は4月1日、エイプリルフールですね?』


朝の番組の声をひーちゃんは繰り返す。


ひー『えいぷりるふーる?』


まだ春休みの真っ最中。

望は部活、俺はバイト、ひーちゃんは友達の家へ遊びに行く予定。

望はひーちゃんを抱っこしながら、



望『今日はね?嘘ついても良い日なんだよ?』


ひー『…うそはよくないよ?』


そうだよね?まあ遊びなんだけどもね。

望はもう一度繰り返して説明する。


望『今日だけは酷い悪い嘘じゃなきゃついてもいいの!』


ひー『ふーん。』


あまり気乗りしないようにひーちゃんはリアクション小さめ。

まあ子どもだからついていい嘘との境目が難しい。


その場はそれで終わった。


立花家夕食時、


ひー『それでね?ニナちゃんがほんとにけっこんしようね?とか、ひーちゃんしょうがっこういくようになったらおよめさんなってあげるね?ってうそついてたよ。』


望『…どうもあの子油断ならないよね?』


『幼稚園児の言う事でしょ。』


エイプリフールでひーちゃんの女の子友達のニナちゃんは随分攻めたようだけどひーちゃんは今日は嘘なんだって受け流していた。

でもちょうど良い嘘ってなんだろね?


食後に望がニヤニヤしながらひーちゃんをからかうつもりで言った。


望『…姉ちゃんひーちゃんきらい!』


ひー『…。』


あ?のぞみ!それダメな嘘!


ひー『…ほんと?ほんとにきらいなの?

…ぼくのこときらいになっちゃったの?』


ひーちゃんのくりくりおめめダムは瞬間で決壊した。

唇をきゅってすぼめて、声も出さずに音も立てずに涙を流し始めるひーちゃんに慌て出す望。


…望がひーちゃんを泣かすことはたまにある。

望がひーちゃんを赤ちゃん扱いして怒ったひーちゃんが最後に泣き出すことや構いすぎてケンカすること。

でもこうゆう泣かし方は見た事ない。


ひー『ふ、ふえ、ふえぇぇぇ、』


望『ひー、ひーちゃん…これはうそ!うそなのー!エイプリルフール!

ひーちゃん!ごめんて!』


慌てる望と泣き出しひーちゃん。

ひーちゃんは俺のとこに這ってきて、


ひー『ふえぇぇぇぇ、にいちゃあ、にいちゃあ!うぇぇん!』


俺にしがみつき泣きじゃくるひーを必死に宥め抱きしめたいけどひーちゃんから拒否される望。

ひーちゃんはぐずると語尾がフニャってなってにいちゃん→にいちゃあになっちゃう。


望『…兄ちゃん…兄ちゃん、ひーちゃんがひーちゃん…。』


望も泣きそうです。

なんなの?この状況?


ひーちゃんはすっかりしょげてしまいずっと俺の側でぐずりながら俺にしがみついている。

…それを柱の影から覗いてる望。


まだ9時なんだけど…このまま拗らせても良くないと兄判断する。


『ひー、早いけどねんねする?今日は兄ちゃんと寝る?』


半分くらい両親と、もう半分は布団2枚で兄妹弟で寝てるひーちゃんに提案する。


ひー『…。』

ひーちゃんはこくんと頷く。



『じゃ、布団くっ付けて…。』


ひー『いや!ねえちゃあきらい!』


望『ぴゃ!』


ひーちゃんの否定の言葉に変な悲鳴をあげる望。


『ひー?今日母さんと寝る?』


ひー『…にいちゃあとねる…。にいちゃあベッドであまえてねる。』


ベッドにふたりはちょっと窮屈だけど…仕方ない。

じゃ、おトイレ行って、母さんに歯磨き見てもらえ?俺はひーちゃんを送り出す。


望『ひーちゃんが…あたしのひーちゃんが…。』


『だっけ冗談もほどほどにしとけってあれほど…。』


望『これが原因でひーちゃんがグレたらあたしのせいだ。

どうしよう?ひーちゃんが不良になって…モヒカン…。』


『お前は何を言ってるんだ?』


何にせよのぞひーがこのままだ俺もしんどい。


『兄ちゃんがフォローしてやるから?上手く仲直りしろ?』


望『あたし兄ちゃん大好きー!』


現金な猛獣だよね?

ひーちゃんが戻ってきて、俺のベッドに入ってきた。


ひー『にいちゃん、なんかおはなしして?』


日課のお話タイム。

いつもは日本の昔話しを中心に童話とか武将の話しとかしているんだけどね。


『むかーし、むかしある所にこわーいお化けが居ました。』


ひー『やめて?それやめて?』


『後ろに居るお化けの話しで何もしないけど誰も居ないと後ろにずっといるお化け話しだよ?聞いたらもう…後ろに!』


ひー『やー!やめて!』


望『兄ちゃん!ひーちゃん怖がってる!

ひーちゃんこっち側おいで!姉ちゃんがお化けの話しじゃない楽しい話しするよ!』


望がひーちゃんを迎えに来る。

ひーちゃんは怖かったのか、



ひー『…ねえちゃあ。ほんとはきらいじゃないよ。

だいすきだよ、ごめんね…。』


望『…ひーちゃん…ひーちゃん!

ねえちゃんがごめんだよ!ひーちゃん!ひーちゃん!

ひーちゃんだいすき!だいすき!だいすきー!』


ひーちゃんは望に抱きしめられてキツツキキッスの餌食になっていた。


…これで大丈夫。

良かったー。兄は今日は1人で寝ようかな?


望『ひーちゃん、後ろのお化けが出ないように兄ちゃんも一緒に寝てさ?

ひーちゃんをサンドイッチにした方が安心して寝れるんじゃない?』


ひーちゃんは頷いた。

望は嬉しそうに、


望『やっぱり3人だよね?みんな仲良し!

エイプリルフールなんて我が家必要無かった!』


…お前が勝手に自爆しただけだけどな。

ひーちゃんはうとうとしながら呟く。ハッキリはしなかったけど、


嫌いって言うより仲良しが良いね?

大好きって言い合った方が嬉しいね?


そうだね。

変な嘘ならつかない方が絶対にいい。

例えそれがジョークであったとしても。

のぞひーが反動ですっごい仲良し姉弟してて可愛い光景に俺は微笑みが止まらない。優しい世界って言うのかな?

常夜灯で薄っすら見える大好きって言い合う妹と弟を飽きずに眺めていた。



ぴろん!



あ、ロイン来た。

スマホの通達から内容を見てみると…?





紅緒永遠   妊娠しました!承くんの子だよ!


するわけが無ぇ!

最低なエイプリルフールの嘘でしょ?

台無し!なんで俺ら位の歳になると汚れるんだろう?

俺はとわんこのロインを既読無視したんだよ。



そんな我が家のエイプリルフールの話し!



☆ ☆ ☆

そういう訳でエイプリルフールの話しでした。

承に守る!って言われて真っ赤になったまま成実さんが放置プレイ中ですw

明日はそちらからスタートです。

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