第345話 1年4組の解散
紅緒邸に着くともうとっくに打ち上げは始まっていてさ?
とわんこはぷんぷんしながらもクラスメイトに囲まれて幸せそうで。
遅れた俺たちにご立腹。
紅緒『承くん!青井くん!おそーい!』
『…男には色々あんのよ…?』
青井『…まったくだ。』
ギャル『それ女子のせりふー!』
青井は横で頷き、周りは笑いに包まれる。
仙道が駆け寄るけど目で制して大丈夫!って目配せした。
青井『よお、
青井の挨拶に吹き出しそうになる俺!
伊勢さんも俺たちに気付いて…、
伊勢『立花も青井も遅い!何してたん?』
青井『…四天王の役目を果たしてたんだよ、新川中の金色の番長さま。』
『ぷふー!!』
伊勢『は?四天王ってなに?また男子だけの遊び?』
伊勢さんは腰に手を当てて怒るよ!ってポーズ。
君さっきクラスメイトにピー!されちゃうとこだったんだよ?
俺と青井はさっきまでのヴァイオレンス→ほんわか優しい世界に笑いが止まらない。
俺たちが笑ってるのが意味わからないけど嬉しいのか紅緒さんも伊勢さんも笑い出してそれ見たクラスメイトも釣られて紅緒邸は笑い声がこだましたんだ。
空腹の俺と青井はカレーおかわりして食べまくって紅緒さんは嬉しそう。
周りは何組かに別れてトークで盛り上がっている。
…トータルで見れば良いクラスだったよね。
しばらくして落ち着いた頃に紅緒さんは俺の額のたんこぶに気づいた。
紅緒『承くん!どうしたの!額!たんこぶ!』
伊勢さんも横でびっくりしていた。
東光組は土木業も行っているから生傷も多いらしく薬箱が充実している。
紅緒さんは消毒液でささっと拭いてから湿布を貼ってくれた。
…おでこに。
その絵が面白いらしく皆んな大笑い!俺も鏡で見て大笑い!
紅緒さんだけもじもじしながら上目遣いで、
紅緒『私の部屋で看護してあげようか?
…ナース服すぐ用意するよ?
新人ナース紅緒永遠…恥辱の…』
『…恥辱ってなんなの?何が恥辱なの?』
とわんこの知識は多分エロ動画やえっちい漫画とかが元なんだろうけど明らかに偏っている。紅緒さんの煽り文句にやられた事は無いけど真っ赤になってもじもじするのは大変可愛く見えるので止めて欲しい…。
恥辱って単語は日常生活で使うこと無いよね?
大丈夫、昨日見た胸元いっぱい貼られた湿布を思い出せばえっちい事よりよりばあちゃんを思い出しちゃう。
そして、5時。
いよいよ解散って頃、紅緒さんは泣きながらひとりひとりに握手してお礼を言って回った。
出席したメンバーは皆んな紅緒さんの心が通じている子達。
…殴りあうより、握手して語り合ったほうが良い。
俺はそう思った。
紅緒『もうこのクラスが解散なんてさみしいよぉ…!』
ぽろぽろ涙を流す紅緒さんを囲んで皆んな口々に、
『また一緒のクラスになれると良いね?』
『クラス別れても同じ学年でしょ!』
『また学校でね?』
『紅緒さん!楽しかったね!』
『ありがとう、永遠ちゃん!』
紅緒『…みんな泣かさないでよぉ…。』
紅緒さんは最後まで泣きながら笑っていたんだ。
☆ ☆ ☆
仙道には打ち上げ中に事情を話した。
仙道は驚き怯えながらも自分が一緒に居なかったことを詫びたけど俺たちが紅緒さんたちのとこに居て!ってお願いしたこと、なにより仙道が紅緒さん伊勢さんについてるから安心できた事を話しむしろ俺が礼を言った。
仙道『…俺が四天王…!』
そして青井の話しにめっちゃ食いついていた。
一応しばらくは気を付けて欲しい旨説明した。
紅緒さんにネチネチ遅刻を追求されたけど伊勢さんがフォローしてくれた。
そろそろ俺たちも帰ることにする。
紅緒『忘れられない1日だったよぉ。』
俺もだよ…口には出さずに同意する。
これで春休み!とわんこは俺のバイトのシフト持ってるからバイトの日は俺カレ来るって。
俺たちが最後だね。
見送る紅緒さんは寂しそうで寂しそうで。
青井『しょんぼりわんこだな。』
皆で笑った。
お別れ直前、紅緒さんは俺にそっと耳打ちする。
紅緒『この高校に入学する時不安もあった、でも期待が大きすぎて我ながら夢見がちだなぁって思ってたんだよ。
…でもね、想像してた…ううん、想像よりももっともっと楽しい一年だったよ!2年生になったら…。』
俺は話してる紅緒さんのこの透明感ある微笑みが本当に嫌。
儚くも美しいその表情に持っていかれそうになる。
わかった、わかった!来年はもっと楽しくしようよ?
そう言うと紅緒さんは喜色満面の顔で大きく頷いた。
別れ際、しょんぼりわんこは俺たちが見えなくなるまでずーっと手を振っていた。
仙道は紅緒邸出たとこで別れて俺、青井伊勢さんのいつものチームで自転車で帰る。
伊勢『…じゃ、そろそろ話しして貰っても良いよね?』
伊勢さんを今回は誤魔化せない。
…俺は津南たちとの一件を話しする。
話が長いので大河を渡り、河川敷公園で話す事になった。
青井『あ、千佳呼んでる。』
『じゃ、あとは俺が…青井今日さんきゅ!』
青井『言いっこなしでしょ?おとっつぁん?』
時代劇か!
青井はすぐそこの小幡さん家前へいそいそと出発した。
時刻は6時。
俺は津南との出来事の残りを話した。
伊勢『…神崎くん…今は東条くんか。
居てくれて良かったー!たんこぶそれだったんだ…。』
ベンチにふたりで座ってる状態で伊勢さんは心配そうに俺のおでこにそっと手を当てる…。
思いのほか距離が近い!
俺が赤くなったのを見て伊勢さんもバッ!て音がするほど急いで離れた!
でもやっぱり心配そうに俺のおでこを撫でて、
伊勢『無理や無茶しちゃダメだよ…。6人なんて怖すぎる…。』
伊勢さんに津南の暴言は話していない、まして性的な暴力まで示唆されたなんて言われてショックを受けない娘なんて居ないでしょ?
…いくらスマホで自供を録画したってそれが抑止力になるとは限らないわけで。
伊勢さんは高校近くのエイオンの服屋でバイトしている。
春休みだってバイトあるはず。前から夜から怖い!って言ってて俺と同じ日バイトだと俺カレで待って一緒に帰る事もあったんだよね。
俺は出来るだけ自然に、怖がらせない様に提案する。
『だからさ?津南は俺と伊勢さん、紅緒さんが仲良しなの知ってるじゃない?
逆恨みして万が一ふたりを狙う事も考えられるでしょ。
春休みのバイトってもうシフト出てる?シフト合う時や帰り俺が送り迎えしたいけどどうかな?何かあれば俺が守るよ。』
伊勢『うんうん。
…守る?!私を?ふぇえ?!』
伊勢さんは真っ赤になって驚き固まった。
俺が守るよってダサいセリフだったかな?
聞くに耐えないセリフを言ってしまった…冷静になった俺の羞恥心が俺を責め立ててもう帰りたくなってきた…!
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