第344話 悪ノリあっちゃん

厚樹『紅緒さん?を守る四天王…。その中で承は最弱…。』


 津南『…立花が最弱…?』


 あっちゃんに毎日話しに行った時なんでも片っ端から話をしたんだ。その時に俺周りの交友関係全部話してたから知ってるんだね。まあ伊勢さんは同じ小学校だし、紅緒さんは俺と歩いてるの見た事あったし。


 厚樹『四天王…それは紅緒さん?を守る役目…仙道?あいつだってめちゃくちゃ強い…!』


 それでも人名怪しいのか疑問符付けて話すあっちゃん、自信持って言い切って!


 津南『へへ…あのヒョロメガネがそんな訳ない…。』


 厚樹『仙道?はあんな感じに見えてもとんでもない漢…


 この世に邪悪がはびこるとき、必ずや現れるといわれる希望の闘士

 その拳は空を裂き、蹴りは大地を割るという!』


 うん?それ聞いた事ある。

 それなんて聖闘⚪︎セイント


 あっちゃんは調子の乗って仙道を持ち上げ始めた。

 仙道見た事あったっけ?

 水木しげ⚪︎先生タッチの色白ヒョロメガネだぞ?運動全くダメ!

 でも懐かしいこの悪ノリ…昔のあっちゃんぽい。

 こうゆう悪ノリや冗談で休み時間のたびに笑い転げていたっけなぁ。


 津南が顔真っ青にして、


 津南『…じゃあ伊勢!伊勢をピー!してやるよ!あっのえっろい身体メチャクチャに!』


 もうSATSUGAIしちゃおうよ?

 こいつ生かすメリット無いでしょ?

 自分の大事な親友と言っていい女の子の尊厳を汚す発言を俺は許せない!


 あっちゃんが一際真剣な顔した。

 これ、1番のオチを言う時の顔だ。

 少し怯えを見せながら、



 厚樹『…やめた方が良い…伊勢さんは四天王でも別格…。』


ぷふー!ってなりそうになるのを俺も青井も口の中で頬の肉を噛んで止めると俺も青井も同じ表情なわけで…。


津南『…なんだよ…なんでそんな表情なんだよ…伊勢なんて巨乳ギャルだろ?唯の…。』


あっちゃんは悪ノリを極めた顔で、


厚樹『新川中の伝説的番長…金色の伊勢!

東光入学式の日…登校するなり生徒指導室へ連行された伝説の金髪のヤンキーの話しくらい聞いたことがあるだろう?』


津南『金髪…そういや入学式の日…金髪だった…生徒指導室へ連行もされていた?』


俺もノッっちゃえ!


『ふふ、俺など四天王最弱…四天王になれたのが不思議な位よ…。』


これ!最初に負けた四天王が言われる奴!

青井も真面目な顔で、


青井『伊勢と仙道は四天王でも別格…桁が違う…あいつらとだけは戦いたく無い…!』


青井雰囲気出すなぁ。

さて、津南はビビりながらも少し余裕が出てきて周りを見渡してる。

あっちゃんの指示通り津南を逃がす…大丈夫?


津南は俺が視線を外した隙にダッシュで逃げ出す!

俺はさっきの打ち合わせ通り、


『津南!コイツらがどうなってもいいのか!』


ギョッとした顔で縛られた4人は津南を見る!

山目くんも驚きを隠せない。


津南『知らねえよ!くそが!覚えてろよー!』


逃げる津南を全力であっちゃんが追いかける!

津南だって早いはず!でもこのタイマンでボロボロ。

あっちゃんはと言うと最近始めたバスケで見せる昔と変わらないどころか成長期に入った爆発的なフィジカルの持ち主で津南を後ろから飛び蹴りであっさり仕留めて引きずって戻ってきた…。


津南が仲間を見捨てたって事を津南の仲間達に見せつけなきゃいけないらしい…。



あっちゃんはニコニコしながら、


厚樹『このご時世だからさ?一応自演みたいだけど証拠残さなきゃでさ?』


俺の太陽はこの荒事を少し楽しんでる素ぶりすらある。

俺はもうしんどくなってきた…。


あっちゃんの指示で津南を厳重に縛って。

元々縛ってた4人を1人1人尋問始める。それを録画撮る…。

俺が憧れたスマホってこうゆう使い方したかった訳じゃ…。


山目くんから始まって。


『1年7組、山目です…住所は…で電話番号は…です…。

立花くんと青井くんを6人で襲撃して返り討ちにあいました…、

すいませんでした。』


こんな感じで全員分。

手慣れた様子のあっちゃんが頼もしくも怖い。

でも俺を助けに来てくれたんだなぁ。って俺は嬉しくなっちゃう。


青井『調べて嘘があったら…わかるよな?

お前こないだ相撲でもうこうゆうのしないって誓ったじゃん?

立花が言わなきゃ…。』


青井が一人一人に脅しをかけて順番に解放する。

スマホは預かる。さっき聞いたのでわかるから後で学校の靴箱戻しとくから!

1人が泣きながら偽名で嘘吐いたって白状した。


青井は山目くんと話してる。

山目は津南に引っ込み思案な少年期引っ張ってもらって…だから津南は見捨てられないと…。


(…あっちゃんが津南みたいな奴だったら…俺も…)


俺は山目くんに津南は主犯だから厳しく行くけど大丈夫だから!って言って山目くんを解放した。



後は厳重に縛られた津南だけ。津南にだけは聞こえ無いように小さく、


『…ほんっとあっちゃんありがとう、明日時間ある?』


さっき話してた紅緒さんたちとの打ち上げあって何も無かった体で出席することをあっちゃんに話す。


厚樹『承明日バイト?』


聞き返されて俺は頷く、


『バイト終わりならいつでも?本当に今日はピンチだった。

あっちゃんのおかげ。何で言って欲しい。俺にできる事なら何でも…!』


青井も横で頷く、


あっちゃんは少し考え込んで照れながら、


厚樹『まぁ…まぁなんのかんの昔からの…だしよ…。

でも?なんでも?なんでもって言った?』


俺は頷く、できるなら何か俺たちの関係がすすむようなお願いをして欲しい…!

※香椎さんもいつも承くんにそう願ってます(笑)


厚樹『じゃ明日までに考えておく!

…また明日!』


『…また明日!』


かつての親友の口から当時の挨拶、

「また明日!」

が出たことに胸がいっぱいになりつつ俺たちはお礼を言って自転車に乗り、紅緒邸へ移動した。











☆ ☆ ☆

厚樹は承と青井を河川敷公園で見送って軽く手を振る。

そして唯一残った捕虜の津南に振り返る。



津南『…俺の番かよ…。

わかった言うよ、一年四組津南尚樹…。』


厚樹は笑って応えない。

訝しく思った津南は、


津南『…さすがにもうわかった、もう手は出さねぇよ…。』


厚樹は未だ前髪で顔を隠した黒縁メガネの陰キャスタイル。

それがこんなとんでもない男だったなんて…津南は厚樹を何処かで見たような気がするけどまったく記憶にない。制服から同じ東光高校なんだろうけど?

とにかくここを凌がなきゃ…。厚樹に言われるまま指紋認証でスマホを使える状態で厚樹に渡す。



津南『…本当ごめん、毛沼くん?もう絶対敵対しないから。』


厚樹『ふふ、承はさ?単純で人を信じやすいし?

お人よしでバカがつくほどの正直者なんだよ。』


津南は同意も否定も出来なくて困った顔。


厚樹『あいつ昔から要領悪くて、気弱で引っ込み思案で俺の子分みたいなとこあって…。』


津南『…あぁ、小物臭い!毛沼くんはすげぇよな!俺たち手を組めないかな?なんなら毛沼くんが頭でもいい!』


厚樹は酷薄な笑みを口に浮かべて、



厚樹『承は子供の頃からの幼馴染なんだよ。

…お前はそんな承を狙った主犯…しかも大人数で。あいつらと同じ目ですむ訳ねぇだろ…?

あいつら行かせたのは見られるとまずいから。

…あいつ優しいんだよ…。』


津南『…毛沼くん?』


厚樹『俺、クズみたいな半グレと毎日ヤりあって来たから知ってる…。

そこはお前の言う通り…会ったら逃げ出すほど痛め付けてやらないと…な?』


津南『ひ、ひいぃーっ!!』


厚樹『花は花籠に、ゴミはゴミ箱に。』


厚樹がすぐそこにある石を手に取って振りかぶると津南は失禁して失神した。


厚樹『脅かしすぎたかな?

さて写メ、写メ!』


失禁した写真を何枚か撮影して厚樹は1人呟く、


厚樹『…こんな写真を保存するスマホの容量が勿体ない…。』


厚樹はにやって笑うと津南を公園の大きなゴミ箱に入れて津南のスマホで電話をかける。


厚樹『河川敷公園でおたくの高校の生徒が?公園荒らしてるんですよ?

今?ゴミ箱で寝てますよ!なんかしょんべんも漏らしてるみたいで!引き取りに来てください!』


声をおじさんみたいに出したけどどうかな?

厚樹は久しぶり荒事だったけど何故か楽しかった。

…昔と違って仲間を守るための必要な荒事だったから。



厚樹『…幼馴染か…。』


自分の口から出た言葉だったが自分の気持ちにしっくり馴染む響きだった。

…承に出来ること…願い…。

厚樹の心に浮かんだ事は一つだけ。

明日承に素直に話してみよう、承ならきっと笑わないで聞いてくれるだろう。


厚樹は春休みが楽しみになった。

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