第341話 終業式

紅緒『だーかーらー!ごめん!ごめんなさいー!』


教室に紅緒さんの声がこだまする。

昨日の紅緒さんの病欠騒動後に紅緒邸で行われた通称、

「とわんこお見舞い会」

で昨日は多少の文句はあれど皆んなに優しくされた紅緒さん。

今日の終業式がこのクラス最後の日…、放課後紅緒邸で打ち上げ開催予定と言う事もあり、まだ痛みは強く両親には休みを勧められた紅緒さんは今日は気合いで出て来ていた。


ギャル『…昨日みんなで?お茶してお菓子食べていっぱい騒いだから打ち上げしなくてよくない?』

ギャル2『そうだしー。下着の色教えてくれないしー!』

女子『…また無理するから紅緒さん。やめたほうが…。』

女子『…うん、そうだよね。皆んなからのロインも無視してたし?』


紅緒『ちがうの!そんな意地悪言わないでよー?終わったらうちに集まろうよー!』


紅緒さんがクラスの真ん中でいじられている。

ただ皆んなもう許しているのか仲間外れやいじめている訳じゃない、あんな心配かけるなよ!って言うメッセージなのだが終業式後の打ち上げを楽しみにしているとわんこは皆んなに謝りながらどれだけこの一年が楽しくて幸せで嬉しい日々だったか力説する。

皆んなそれを聞いてニマニマしている…、クラスのほとんどが紅緒さんが好きだし、紅緒さんも好きなんだね。

…もちろん全員が全員じゃ無いし津南派閥や稲田さんグループは線引きして別世界みたいな雰囲気で過ごしている。

別にそれは当然の事だし合う合わないとかあるしね。

皆んな仲良くなんて理想はどっちかって言うと幻想に近いと思う。



伊勢『はいはい!わかってるって!全部終わったらとわわんちに集合ね!』


一回家に荷物置いたり、所用がある奴も居る。

11時位には終業式も終わる。で、13時紅緒邸に集合。

直行する奴も多い。

俺も一回帰るの面倒だからそっち側。


それより問題は…。

手元をチラッて見る。

3通の手紙がある。

…今朝登校するとシューズボックス、机、ロッカーにそれぞれ1通ずつ入っていた…。

俺にラブレター?そんな訳ない。

良くも悪くも俺は紅緒さんのイメージが強い。

そもそも目立たないタイプの男子で正直…無いと思うんだよ…。


なんとなく思い出すのは…イタズラ手紙。

191話 忘れかけてた悪意 参照。


また津南じゃない?俺はそっちを見るけど…目があうと睨まれる。

いつもこうだから?正直判断つかない…。


そうこうしているうちに担任が来て最後の朝礼があって、


(朝礼とかの号令ももうしなくて良いんだ…。)


紅緒さんが今日が一年生最終日!って連呼するからさ…なんかこっちまでセンチな気持ちになっちゃうよ…。



☆ ☆ ☆

最後のHRの礼を終えた後担任が、



担任『春休み問題起こすなよ?楽しかったな!二年生になっても見かけたら声かけろよ!』


紅緒『せんせぇ…ありがとぅ…。』


紅緒さんはさっきからポロポロ泣いている…。

卒業式ならわかるんだ。…終業式だよ?まだ2年あるんだよ?

思っていても紅緒永遠の純粋な感動が伝わりクラスは紅緒さんを微笑ましい目で見守っている。


紅緒『…せんせ、一年、ありがとう、ございますた。』


噛んでしまった紅緒さんを先生は優しく見つめて、


担任『…紅緒は今年一年頑張ったな、二年生になっても身体気をつけてがんばれ?社会科教室は昼や放課後使っていいからな?』


紅緒さんは大きな瞳から涙をポロポロこぼしながら笑顔で、


紅緒『ふぁいっ!』


担任は笑って去っていった。

担任もきっと一年大変だったのだろう。

紅緒さんの体調や特殊性もあっただろうし。

それでもいつも側で俺たちがやりたいようにさせてくれた。

歩き遠足や体育祭、先日の球技大会。何か起こればきっと担任が責任を問われる。

紅緒さんが普通に学校生活をおくれた要因に先生に恵まれたってことは大きかったと思う。



紅緒『わたし!準備あるから!もう行くね!

来れる人は是非来てね!絶対!待ってるね!』


是非なのか絶対なのか!クラスメイトは微笑ましく伊勢さんを引っ張って出て行く紅緒さんを見送っていたんだ。




☆ ☆ ☆

さてと。

俺も多少学習したことがある。

…こうゆうどうしたら良いかわかんない時…ひとりで抱え込むとあとで滅茶苦茶怒られるのだ…。

前回の襲撃事件の時も後から口酸っぱく青井に言われたんだよね…。

ただ…宏介と違って青井は脳筋だから…

でも?俺も?友達のピンチ黙っていられたら怒るよなぁ…。


紅緒さんと伊勢さんが居なくなったのを確認して俺は2人に声をかけた。


青井『…ほほう?手紙?』

仙道『…立花ばっかり…。』


仙道の視線が痛いんだけど…正直俺は疑っている。

この手紙が朝入っていた経緯を説明して俺の疑念を伝える…。


青井『…そんなまどろっこしいことする?』

仙道『うーん、確かに…。

あと僕荒ごと向かない。』


うん、わかってる!

違うならその方が良いでしょ?

…本当に告白ならそれはそれで…いや、受けないけどね?


1通目を開封する。

女の子の字で、


『放課後、校舎裏のベンチで待ってます。』


青井『…女じゃね?』

仙道『Shit!(嫉妬)』


…わからん。



2通目、

女の子の字で、


『打ち上げ前に話し聞いて欲しい。教室残って。』


青井『なんか怖いな。』

仙道『…クラス女子かな?』


なんか威圧感無い?



3通目、すっごい丸文字で、


『放課後、河川敷公園の高架下で待ってます♡』


…。


青井『怪しくね?』

仙道『怪しいでしょ?』


抜群に怪しい…。


ふー、怖いわぁ。

とりあえず、青井は俺に着いて回るって言ってる。

仙道は別行動で早めに紅緒邸に移動しておく。

もし連絡あればすぐ通報したり、校内なら職員室へ火事!とか大事にする為の連絡係をお願いした。


…三件とも怪しいって言えば怪しいし。

差し当たり教室にまだ人は多く残って居てざわざわしている。

残ってって言うからにはクラスの子か見てるんだろうから?人少なくなってからアクションがあるでしょ?


俺は自然に青井と談笑しながらすぐ裏手の校舎裏ベンチへまず移動した。




☆ ☆ ☆


そこには…


クラスでは地味な女の子がふたり居た。

少女マンガ好きで紅緒さんが初期に仲良くなりたい!って言ってた子たち。

今は結構紅緒さんに近い穏やかなふたりの女の子。


…ちょっと緊張感がある…まさかね?



青井が申し訳無さそうに、


青井『…俺外すわ?じゃ…』


女子『待って!青井くんも居て!』

女子2『…勘違いされても困るから!』


えー…わかってたけど小さく傷付くなぁ…。

俺は呼び出された理由に心当たりがあった。

あの文化祭の告白事件から感じる目線。

きっとその件でしょ…。



女子『…立花くん。

…あの、人の恋愛に口出しするのはどうかと思ったんだけど…。

紅緒さんの事、どう思ってるの?!』


俺は文化祭の一件以降俺が感じる女子の視線…これ。

公開告白の弊害なんだよね。

…この子たちは悪気は無いし、紅緒さんの味方だから善意で言ってるんだ。

俺だって言いたいことは沢山あるし、好きな子居るから断ったって事は一度だけ説明した。

でも紅緒さんが一年友達以上の恋人候補として見てってお願いしたの!承くんは悪く無い!って宣言したけど…俺を見る目は結構厳しい訳で。


女子2『紅緒さん、立花くんの事が大好きで大好きで…。

好きな子居るの?紅緒さんじゃダメ?』


女子『紅緒さんとの事考えてあげてくれないかな?

1番しんどかった頃助けてくれた立花くんを紅緒さん本当に信頼してて…いつも立花くんの事ばっかり話して居るんだよ?

あんな綺麗で内面も可愛い子居ないよ?』


女子ふたりにたじたじ。

大人しいこのふたりがこれほどの熱量で?!


…繰り返しになるが俺には好きな子が居る事紅緒さんにはその事話してある事を説明する。


女子2人は全部納得してはいないようだったが、紅緒さんの事真剣に考えてあげてお願いって言い残して去って行った。



青井『…しんどいな。』


青井が他人事のように呟く。

俺は頷く。

なんで他人間の恋愛に口出されなきゃ…。

でも俺もなんとかしなきゃいけないとは思って居る。


気が重いなって思いながら教室へ戻ると…

球技大会でも活躍、昨日も1番にお見舞いに行ったギャル2人が腕組んで待ってた…。



ギャル『立花、ちょっといい?』


…2戦目も同じ要件でした…。

紅緒さんは俺を信頼してて?

付き合う合わないは立花の自由だから口出さないけど…?

紅緒さんを今後も支えてあげて欲しいって内容だった。

あとなるみんは?なるみんはどう思ってるの?中学からずっと一緒なんでしょー?

そっちも考えたげて?なるみんもよろしくね?


紅緒さんと成実さんをよろしくね?ってまとめてギャル達は紅緒邸へ移動して行った。紅緒さんはわかるけど成実さん?どう思ってるってそりゃ信頼している。

香椎さんと同じ位信頼している女の子…なんなら軽くリスペクトすらある…。


みんな二年生になってクラスが変わるから紅緒さんの行く末が気になって居る様子。でもさ?みんな紅緒さんを気にかけてくれてなんか嬉しい。

微妙に俺に当たり厳しいけど紅緒さんが好きすぎて言わずにいれない!ってヒシヒシ伝わってくる…。

4月はあの娘腫れ物扱いで誰も話し聞いてくれなかったんだよ?

それが一年でこれほど皆に愛されて…!なんか師匠にでもなったような気持ち。


俺と青井は自転車置き場に向かい、すぐそこの河川敷公園へ移動する。

…なにかあるなら此処しか無いでしょ?



青井『バットや木刀欲しいわぁ。

…立花木刀持ってなかったっけ?修学旅行で買ったヤツ。』


『…あれは望のお土産。』


青井『…マジ土産だったん?

自分のだって言えなくて照れ隠しかと思ってた…さすが猛獣(笑)』


俺と青井は話しながら移動した。

当然事件はそこで起こった。


☆ ☆ ☆

中学時代の修学旅行で香椎さんとキュンキュンする思い出作りながら京都で買った木刀は外町が蹴って足痛めたり、ウロヤさん(笑)が外町を襲撃する時に有効に使用しています。こうして見るとその木刀外町キラーですなw

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