第338話 まさか?!

女子『紅緒さん、倒れたらしいよ…?』


球技大会の翌日で卒業式の朝、俺と青井と伊勢さんが笑い合いながら教室へ入るとそこは異常な雰囲気…。


クラスの女子が慌ててやって来て衝撃的な事を言われる…!

担任に提出物あって持って行ったらそんな電話来てたんだって…。

明日も体調次第とか言ってたよ?って。

まさか…?昨日あんなに元気だったよ?とわんこ。


なあ?後ろのふたりに引き攣った顔で聞いてみる、


青井『…紅緒はPKとか無理してたもんな…そもそもおかしくね?

せっかちわんこが打ち上げ延期するとか?』


俺も伊勢さんも教えてくれた女の子も顔を見合わせる…。


伊勢『…あたし…止めるべきなのに。

…絶対とわわん出るって宣言してたし、あたしが面倒見れば良いか?って楽観視してた…。』


気づけばクラスがまとまって話し出していた。


『…私がGKなら出れるんじゃ無いって言ったからだ…。』

『私もクラスでフォローすれば大丈夫って言ったよ…!』

『一回くらい、永遠ちゃんと出たかったから賛成しちゃった…。』


ずーんって落ち込む4組女子。

誰かロインした?…確認するもやっぱり紅緒さん昨日ロインも反応していない…。

俺は敢えて明るく、


『気づいて無いだけかもしれないし?もう一回ロインして詳しい状況聞けば良いんじゃ?』


伊勢『うん!とわわん?身体大丈夫?…っと。』

ギャル『あーしも!とわわん!あそぼ!』

ギャル2『はあはあ、今どんな下着履いてるの?…っと。』


まぁ落ち着こう?緊急で入院したわけでも、昏倒して搬送されたわけでも無い。

今日休みで明日は体調次第?なんでしょ?そこまで心配…心配になるよね?


俺ほど詳細じゃ無いとは言えクラスみんな紅緒永遠が寝たきりで入院生活長引いて多感な時代を病院で過ごした事を知っている。

…今日は卒業式。なんかセンチで別れの雰囲気が充満する東光高校。


誰かが言った、


「…やっぱ紅緒さん反応しない…。」


ざわ…


「昨日から、昨日の夕方から全く反応無いよ?」


ざわざわ…



「…やっぱ何かあったんじゃ?紅緒さんの身に!」


しーんと張り詰める教室。


津南『ん?何これ?』

稲田『さあ?』


ツナダ組がこのタイミングで登校して来て異様な教室の雰囲気にポカンとしていた。



☆ ☆ ☆

担任『じゃ、この後体育館に移動して卒業式。

…終わったらSHRで今日はおしまい!明日の終業式でこの教室ともお別れだなぁ。』


担任の今日明日の流れの説明もみんな上の空なわけで。

話が終わるやいなや、


目白『先生!紅緒さん倒れちゃったって本当ですか?!』


目白くんの悲痛な声を皮切りに皆んな追求する。

そうだよ!先生!どうなの?教えてて!


担任『あぁ、朝紅緒ママから電話あってな?

朝倒れて動けなくて…体調不良って?

入院とかじゃないらしいぞ?卒業式は起立してる時間も長いし無理しない方がって?明日はどうかな?ほら!卒業式!』


誰かが言う、


「倒れたのを体調不良?」

「動けないほど体調不良を?」

「…本当の事隠してるんじゃ…?」

「…どうしよう…昨日が最期とか…?」

「ロインもさっぱり既読つかない…こんな事ある?!」


仙道『…意外と寝落ちとか?』


仙道はめっちゃ叱られた。

あのロイン大好きでやめ時わからないとわんこがそんな訳無いし!


…でも、寝落ちだったりして。体調不良で寝ちゃって?ぐうぐう?

じゃ、卒業式終わる頃には起きて着信や未読ロインに目を白黒させてんじゃね



俺たちは自分たちに言い聞かせるように3時間後位かな?卒業式後には流石に一報入ってるでしょ?って言い合いながら自分の椅子を体育館へ運び卒業式の準備を始めたんだ…。




☆ ☆ ☆

卒業式は厳かな雰囲気で始まり、滞りなく式典は進んでいく。

…三年生に知り合いの居ない自分は特に感慨もなく淡々と進んでいく。

長い校長の話し、来賓のご挨拶に諸々の挨拶。そして卒業証書授与。

…2年後には俺もあっち側。

高校生活が始まったのがつい先日だったのにもう3割以上は終えた事になる。


(…紅緒さん…卒業式に出たかっただろうなぁ。)


不思議と居ないって思うと紅緒さんのことばかり考えてしまった。

これ知られるとウザいムーブかますんだよとわんこの奴。


見送る卒業生の中に、新川中の先輩の顔を見つける。

…あの先輩東光だったんだ?完全に他人事のような心境で卒業生を見送り無事式典は終了する。


持参した椅子を持って自分の教室へ戻る。

ごった返す廊下で渋滞が発生しないように動線の設定と会話禁止、スマホ厳禁になっている。

俺たち4組は仮設校舎のおかげで体育館に近く、一般校舎への道と違い混雑も

少なめで皆んな足早く教室へ戻る。



皆んな席に着くなりスマホの電源を入れる!

俺ももちろん大急ぎ!


…しかし、紅緒さんのロインは既読も付いていないしメッセージも無い…。

俺だけじゃ無い、皆んなも総じてため息を吐く…。


伊勢『これは流石に緊急事態だよね?』


クラスを代表するように親友として伊勢さんがクラスに問いかける。

そうだよね?流石にもう11時過ぎ…昨日の放課後以降の紅緒永遠に何があったか?皆は不安になる想像しか出来ない…。


本当は入院してたりして…?昨日この辺で救急車のサイレンしなかった?

今頃永遠ちゃん…。


皆んな最悪な想像に歯止めがきかない…。

※その娘ならやっと湿布が効いてぐっすり眠っています。



「…私が…ゴールキーパーならできるんじゃ無い?って言ったせいだ…。」

「ううん、私がシュート止められなくて、紅緒さんが真正面で止めたせいかも…?」

伊勢『あたし…とわんこを守れなかった…。』

稲田『…私がPK外したから長引いて…!』


クラスは葬式の様な暗い雰囲気で自責の念にかられる生徒の懺悔式のような状態に…。

※その娘なら東光高校から400m位の自宅の自室で俺カレで承と食べさせ合いっこしてる幸せな夢をみています。

永遠『…うふふぇ。』


クラスの雰囲気を振り払うように!伊勢さんが宣言する!


伊勢『あーし!今日帰りにすぐそこのとわんこの家にお見舞いに行く!

何があったか聞いてすぐにクラスロインで報告はするつもりだけど…あーしと一緒に行く子居る?』



クラスの大半が名乗りを上げる!もちろん俺も!

わかってたけど紅緒さん人気すごいな。


伊勢『流石に全員は迷惑なっちゃうからさ?数人で最初に行って?

すぐ報告する!お見舞い可能か!』


伊勢さんとギャル2人、少女マンガ好きの子2人の計5人が行く事になった。

特にギャル2は、



ギャル『あたし…あたし永遠ちゃんにに何か起きてるかもしれないのに…何色の下着履いてるの…とか送っちゃったよぅ…ごめん、とわ…。』


…半泣きで1番に紅緒邸へ突撃する勢い。

先生のSHRが終わるのももどかしく礼と同時に教室を飛び出すギャルと大人しい娘!


俺たちは祈るような気持ちで教室で伊勢さんの連絡を待つ。

話しする内容も紅緒さんの話だけ。


目白『…なんにせよ、お見舞い出来ればするつもりだし…差し入れ?お見舞い行くのに手ぶらって訳には行かないよね?』


『確かに。』


伊勢さんたちも売店部でゼリーをバラで買い占める勢いで買って紅緒さんとこ行ったし。


目白『…俺あっちのコンビニで買って来る!』

『…俺、あっちのコンビニまで自転車で行ってなんか買って来る!』

「「「俺も!」」」



クラス皆は伊勢チームの帰り?連絡が待てなくってお見舞いの品をそれぞれ買いに行くってよくわからん展開!


買いに出てすぐ来るか!と思った伊勢さんからの連絡は来ない。

缶詰フルーツセットみたいなのがあったから購入すると伊勢さんから着信!


『もし?!』


伊勢『あ!立花!遅くなってごめん!』


『いいよ!どう?どうだった!』


伊勢『とわんこ筋肉痛だった!あははははは!!』


は?


はあ?


『…はあ?ふざけんな?

あの人を振り回しわんこが!』


安堵→歓喜→激怒と感情は目まぐるしく変わるけど…そっか。

でも無事なんだ?まあよく考えれば明日は体調次第って程度ならそんな最悪な事態はありえないわけで…なんかここ数時間の緊張や心配がバカらしくなる!

それでも文句言わなきゃやってられない!


伊勢さんの連絡が遅れたのもソレだったらしい。

行ったら死んだ様に眠っていてビビりながら近づいたらぐっすり気持ち良さそうに寝てたって。



一言言ってやらなきゃ収まらない!

みんな気持ちは同じだったようで1年4組の生徒が続々と紅緒邸に集結してゆく…。


何事も無くて良かったね紅緒さん!

…でもお前ここまで心配させてわかってんだろうな?


そう言う趣旨の集会が始まる…!

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