第337話 卒業式って縁が無い【side紅緒永遠】

あーあ、自分のじゃ無いとはいえ?卒業式出たかったなぁ…。

私はひとりお部屋でぼんやり思う。

起き抜けだから頭働かないよ…。

私の人生の記憶で卒業式の記憶はほとんど無い。

幼稚園…んー。なんか薄っすらすぎて記憶に無い。

小学校の卒業時は入院していて…って言うかまだ寝たきりだったし?

中学校の卒業時はほぼ今みたいな状態だったから出れば出れたけど…一回も登校して無い(厳密には一度だけ登校)卒業式に出席するのは流石に気が引けた。

あーあ、今頃皆んな神妙な顔して式典に出席しているのだろう…。

私は、気だるさと布団の暖かさとまだ強く残る疲労感に呆気なく意識を手放した…。


☆ ☆ ☆

話は少し遡る。

昨日、私は家に帰っても興奮を隠しきれずに居た、仕事終わりの従業員さんたちが大広間でくつろいでいたから今日の球技大会の活躍を語って聞かせる。

※紅緒家の家業の東光組の土木業や道路工事に携わる作業員さんです、決して反社会的企業ではありません。


皆んな入院時に私を心配してくれて娘のように妹のように姪のように可愛がってくれる私の家族!


紅緒『…そこで!ペナルティエリア外からっ!私は横っ飛びでっ!』


若頭『GSGK!GSGK!』

パパ『あの…あの永遠ちゃんがサッカー出来るまで…ううう…。』

おじさま『しかもチームのピンチを何度も救って?!』

兄貴『さっすが永遠ちゃん!そこにシビれる!あこがれるゥ!』


『WRYYYY!!ってdio様じゃ無いよっ!』


あははははは!!!

私dio様大好き!


優しいおじさまたちにちやほやされて大広間ではしゃいでいると、


ママ『ほら!永遠!お風呂入っちゃいな?みんなも疲れてるけど貴女だって珍しく動き回って体力限界でしょ?』


『そんなこと無いもーん!』


ママ『ほら!汗くさ娘はさっさと入浴!』


『ちょっ!ママ!私のイメージが?!』


従業員さんのおじさまたちは、


パパ『永遠ちゃんのイメージ?鼻垂れ?』

おじさま『おねしょ?』

兄貴『厨二病?』

若頭『貧弱貧弱ゥ!』


私のイメージって…そんななんだ?

私はママに引きずられて浴室へ追いやられる。

…汗くさく無いよね?私は自分をくんくんするけどよくわかんない…。


鏡に映る私の裸体は自分で言うのもなんだが綺麗じゃ無いかな?って思う。

…人によってはもうちょっとムチムチの方が好きかもだけど。

おっぱいだって小ぶりだけど色も形も良いし?脚だって綺麗!

…でも、胸元に大きい傷痕がある…承くんは頑張った印だって認めてくれたもの!大丈夫!…大丈夫だよね?


身体を洗い始めるとちょっと膝が擦りむけてて沁みた。

肘にも擦り傷があった。

身体が動かない頃、リハビリでそういった傷が付いてしまった事はあったけど…。

傷は痛みとともに今日の激戦が嘘じゃ無かったって私に主張しているようだった。

『…楽しかったなぁ。』


浴室に独り言が響いた。


☆ ☆ ☆

お風呂あがりにパパとママと食卓を囲んでも今日は球技大会の話一択!

パパもママもニコニコしながら聞いてくれて私は誇らしく今日の顛末を語って聞かせた!


ママ『…でも永遠?貴女もう眠たいでしょ?』


パパ『本当だ、永遠もう寝たらどうだ?』


『…しょんなこと…。』


寝たく無いならせめてお布団で横になって身体休めなさいってママの勧めに従い自室で横になる…。

少し休んで?クラスロインや?個人的に承くんや!なるみんと今日の話したいよ!


横になった私に急激な眠気が押し寄せる…!

あ…あ…ダメ…意識が…。




…。




…。




…。




…。





目が覚めるともう朝だった。アラームが鳴り響く室内に朝日が燦々と差し込む。うそ夜七時から朝七時まで?

働かない頭で昨日あのまま寝落ちしたであろう事だけ理解した。

そして…


『…身体がおかしい?』


私は自身の異常を感じる…?

これ?これなんだ?!


アラーム止める為にベッドから起きて机のスマホスタンドへ歩こうとして…。



『痛った!!』


私はあまりの激痛にベッドから転がり落ちる!布団も巻き込んで部屋は大惨事!布団に包まったまま倒れて自分で起き上がれない?!



身体中に痛みが走る!手!腕!二の腕!胸(筋)!おしり!足裏!ふくらはぎ!ふともも!

あうあうあー!


もう一度試すけど…そろそろって動けば…?


『うわらば!』


乙女にあるまじきくぐもった悲鳴が喉から出ちゃう!

これダメなやつ…。私はママに電話かける…。


ママ『…胸は?胸は異常無いのよね?』


ママは私の惨状に頭を抱えて私の身体を念入りに確認したけど心臓は大丈夫!

ただ…


ママが私の太ももをツンって人差し指で押し込む…!


『あひぃ!』


痛った!止めてよママ!乙女にあるまじき声が出ちゃうの!

ママはため息ついて、


ママ『本当に止めてよね?

今日は学校休みなさい?筋肉痛で動けないからって言って良い?』


『…いや。体調がちょっと良く無いとか言って?』


それで無くてもおばあちゃんとか呼ばれるんだから…。



そして時刻は7:45

ふう、ママはため息ついて学校へ電話をかける。



ママ『いつもお世話になっています。

はい、1年4組の紅緒永遠です。

はい、昨日動きすぎて起き抜けに倒れまして?はい、体調不良で今日はお休みを…はい、卒業式は立ってる時間も多いですものね。はい。

明日は…体調次第で?はい失礼しますー♪』


…不本意だが今日はお休み。

明日、明日の終業式に出る為、明日の打ち上げを皆んなで!

今日中にある程度なんとかしなきゃ!



ママ!はいはい。

筋肉痛なら?タンパク質でしょ?パパのサプリメントでアミノ酸や筋肉の素になるプロテインも飲んでおく?後は…湿布かな?どれをする?


『ぜんぶ!』


私は今日を諦めて明日の為出来る事は全部する!

お部屋までご飯を運んで貰い、ムグムグしっかり食べるよ!薬をじゃらじゃら飲んで?

パパのアミノ酸サプリメント(BCAA,HMB)とプロテインをシェイカーで混ぜてごくごく飲んで気分はジャッ⚪︎範馬!!


『どくん!』


ママ『自分で言わないの…パパソックリ。

ほら!ママも忙しいの!』


『ああっ!ダメ!ダメだよママ!まだ心の準備がぁ!』



私はママにパジャマを乱暴にひん剥かれて下着姿に…。


ママ『何雰囲気出してんの?永遠!湿布貼ってあげるから痛いとこどこ?』


『…わかんない…ありとあらゆるところ…。』


ママ『もう!ゴールキーパーってそんなに動かないって聞いたから許可したのに…!』


ママは私をひっくり返してまたひっくり返して、腕と脚、胸、お尻といった突くと痛いところに片っ端から湿布を貼ってくれた…!


『メンソール臭いよぉ。』


ママ『…でも鎮痛と炎症を抑えるからじきに痛みも弱まってくるよ?

ご飯も食べたし、治したいなら良く寝なさい?

学校には連絡したけど、お友達にもロインした方が良いんじゃない?』


『あー!そう言えばいっぱい来てた!』


ふふーん!皆んな昨日の活躍でいっぱいロインくれてたみたい?

昨日寝落ちしちゃったし。

…うん?お腹いっぱいで、ちょっと湿布効いてきて痛み落ち着いたら…。


うーん、やっぱ身体疲れているのかな?

ね、む、くなってきたぞ?






☆ ☆ ☆


…!…!


『…ほえ?』



何か声がして目が覚める…。

私って寝相がすごく良いって言われる…。

真っ直ぐ綺麗に仰向けで眠り、音もほとんどたてずに静かに綺麗に身動きひとつしないらしい。

だからなのかな?


目をパチリと開けると、どアップでなるみんの顔!!


なるみん『うわああ!!!』

『うわあああああ!!』


『『『うひゃあああ!!!』』』


なに?!なに?!


目を覚ますと私の部屋になるみんを初め、クラスの女子が5人も私を覗き込んでいた?!なにごと?!


『…人騒がせだなぁ。』


女子たち『『『『『お前に言われたく無いわ!!』』』』』

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