第334話 超介護サッカー
紅緒『ばっちこーい!』
『『『おおぉ…?』』』
試合直前、フィールドに散らばるイレブン。
キッチンミトンを着けたキャプテン紅緒の檄にクラス女子は困り顔。
気を取り直して裏キャプテンの伊勢さんが、
伊勢『絶対!とわんこにボール触れせんなしー?』
『『『おお!』』』
紅緒『…なんで私に触らせないのよ!』
荒ぶるとわんこをにゃるみが宥める。
まあまあ。
伊勢『キーパーにボール行かないって事は押してる、勝ってる!って事でしょ?』
紅緒『…そっかぁ…でも出番無いのもつまらないね?
見せ場あるかな?』
伊勢『見せ場どころじゃ無いっつーの。』
側から見てても伊勢さんは紅緒さんを心配している。
素人の女子サッカーに戦術なんてものは無い訳で。
伊勢さんに特訓時に聞かれたから、
戦術ちして「キックアンドラッシュ」を教える。
多分1番原初のスタイル。
とにかく前にロングボール蹴り出してそれを前線の選手が追いかけて攻撃する形。
…子供のサッカーは意図せずこの形になっちゃうよね。
ちなみに外町はこうゆう原始的なのは戦術じゃないって大嫌いだった。
身体能力高い伊勢さんのギャル友2人が前線で守備もせずに張り付きゴールを狙う事しかしないオールドスタイルも合い重なり多分相当昔ながらのサッカースタイル。
ホイッスルが鳴り、試合が始まる!
センターサークル付近でボールを取ったり取られたり。
人数が多く入り混じりサイドはガラ空きの完全な素人サッカーなんだけど…。
バレーに引き続き見てて面白い。
女子たちはケラケラ笑いながらボール取ったら笑う、取られたら笑う!
微笑ましくも楽しいほんわかサッカー。
このままドローでPK戦にでも…PKはPKでとわんこ怖い。
なんとか一点取れれば良いのに?
そんな芋洗いのような中盤争いを相手のFWがミスを突いてボールを持ったまま抜け出す!
伊勢さんがすかさずチェック!
…うん、特訓した遅らせて味方の戻りを待つができてる!
結局伊勢さんに阻まれ何も出来ずにボール戻したところをカットされて試合はまたむぎゅむぎゅ中盤の小競り合いに。
前半終了間近,
小競り合いのボールがゴール前の伊勢さんの足元に転がってくる…。
伊勢さんがクリア!(ボールを大きく前線へ蹴り出して仕切り直すこと)って叫ぶ、周りはそれを見てボールが前へ行くぞ。ってポジションを動かし始める。
伊勢さんが転がってきたボールを一回収めて、蹴り出そうとする。
伊勢さん基本に忠実!動いてるボールは予期せぬ方向へ飛びがち!
特訓時に止めて蹴った方がいいよ?ってアドバイス守れてる!
…しかし…。
紅緒『パス!パス!』
伊勢さんはチラッと紅緒さんを見て、見ないフリをした。
周りに敵も居ないので大きく蹴り出そうとモーションを大きく…、
紅緒『パス!パース!なるみん!なるみーん!』
ボール遊びしたいわんちゃんじゃ無いんだから…。
とわんこGKなのに必死にボール呼び込む…。
チャンス時のFWでもそこまで
ボール要求しないでしょ…!
伊勢さんはしぶしぶバックパス…。
紅緒さんはニッコニコで来たボールを大きく蹴り出そうとする…。
ぺしょっ…。
…そう言えば紅緒さんにボール蹴る練習ってさせたっけ?
空振りこそしなかったモノのボールの芯を思いっきり外しボールは斜め後ろへ変な回転で転がって行く…!
『『『あー!!』』』
クラス女子が等しく叫ぶ!
それを見て敵チームの女子がゴール前へ殺到する!
ボール!自殺点なっちゃう!危ない!
紅緒『パンチング!』
身を投げ出して倒れ込みながらグーパンで辛くもボールをかき出したとわんこ。クラス女子はふーって吐息を漏らす…!
パンチングは必殺技名じゃない。
紅緒『危なかった…ゴールは私が守るよ!』
キリッ!
ギャル『違うし!とわんこが勝手に自爆しただけだし!』
ギャル『おまえボールさわんなw』
紅緒『ごめんだけど…そこまで言わなくったっていいでしょー!』
ピンチは続く、とわんこの自爆によりコーナーキックになってしまった。
青井『紅緒!ちょっとだけコーナー側寄れ!』
紅緒『…!』
青井の指示通りコーナーキックのボール側に3歩位置をずらす。
青井はコーチした手前めっちゃのめり込んで見てるんだよね。
わかるけど。俺も伊勢さんばっかり見てる…いや!そういう目では無く!
ふわっと高くボールが上げられない女子たちでは当然ショートコーナーになる!ゴール前混戦!
あ!シュートされた!
ばしゅ!紅緒さんの真正面!
紅緒さん正面からキャッチ!
クラスメイトもびっくり!誰より紅緒さんがびっくり!
ギャル『とわんこ!とわんこ!こっち!』
ギャル『蹴るな!投げろー!』
はっと我に帰った紅緒さんは全身を使ってボールを投げる!
…弱くて遅い…!でもボールは転がってセンター付近のギャルの片割れに届く!相方ギャルがそれを確認して駆け上がる!
ギャル2のカウンターが一閃!4組ゴール!
『『『きゃー!!!!』』』
前半終了直前の劇的な先制点に4組はお祭り騒ぎ!
ハーフタイムも大盛り上がりでキャッキャ女子たちは大盛り上がり!
後半攻勢に出る3組の猛攻を必死にしのぐ!
※伊勢さん大活躍w
ゴールを守ってるんだか紅緒さんを守ってるんだかわからないけどチーム一丸となって守り切った4組女子の勝利!
やったね!勝ったー!
MVPは間違い無く2人でカウンター決めたギャルなんだけど…。
紅緒『…あの時は…ボールがゆっくりに見えたよ…!
自殺点になっちゃうって!
その後私のスーパーキャッチが…!』
紅緒さんは初めてのサッカーで初めての勝利、初めての球技大会と初めて尽くしでご満悦。
正直ちょっとウザいんだけど、退院前の記憶が朧な彼女は今日が初スポーツの初勝利!興奮冷めやらない様子の紅緒さんはキラキラした瞳でいつまでも試合の余韻に浸っていたんだ。
☆ ☆ ☆
勝った男子バスケと女子サッカーは2回戦目の準決勝がある。多分どっちも昼頃。
それを見越して早めの軽い昼食を食べて体育館横の自販機へ向かう。
体育館は試合消化に忙しく必然的に体育館前の自販機前も人通りも多い。
体育館入り口に張り出された結果表を見る。
予定では12:30だよな?相手どこ?
…相手は7組。1-4組まで仮校舎、5-8組まで本校舎だからこの隔たりは大きくて委員会や部活無いと交流が基本ほとんど無いわけで。
でもさ?俺7組に友達が居る…!
あっちゃん…!
あっちゃんと学校で本気でバスケ勝負出来る!
俺は震える…!
だってそうだろ?
熱くない?かつての親友と高校で再会して?
拒絶されてたけども最近ようやく心開き始めてきてさ?
久しぶりに一緒にバスケして、ついに!学校で!本気の勝負!
いつもの高架下のバスケコートじゃ無いクラスのみんなに注目浴びながら本気でやれる!
あっちゃんに7組は気づくんだ。
『東条?!あれがあの陰キャか?!』
『今までなんでわからなかったんだ?!』
みたいな?
遅れて来たヒーロー!これを機にクラスの人気者になって!
実は野暮ったい姿は仮の姿で!実は運動神経抜群のイケメン!
良くない?
もうすぐじゃない!俺は昂りを抑えられない…!
こんなの完くんとのマラソン大会以来じゃないかな?
燃える!
そこにあっちゃんが通りかかる!
あ、あっちゃん!
…なんで?なんで制服姿?
厚樹『…俺ソフト出てもう負けたから。』
スンって無表情に言い放つ俺の太陽。
いやいや!なんでバスケにエントリーしないの!なんで?負けたならバスケ出てもいいじゃん、
厚樹『…目立ちたく無いんだよ…わかってねえなぁ。
…ま、試合は見に行くからさ?がんばれ?』
『…うん。』
あー、燃えかけてたからなおさらスンってテンションが落ちる…。
俺の憧れの親友と球技大会でガチバトルって展開はあっけなく流れたんだよね…。
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