第333話 球技大会

紅緒『…ペナルティエリア外からはゴール決めさせない…!

俺が決められなきゃチームは負けない。』


アディオスの帽子をかぶってニヒルにつぶやくとわんこ。

…この娘形から入るところがある。

それ?国民的サッカー漫画の名GKの源三くんのつもり?


さて、最後の期末テストも良好で安心!青井が1番ホッとしていてこれで授業もおしまい!今日はいよいよ球技大会、男子はバスケとソフトボールが女子はバレーボールとサッカーが種目になる。例えばサッカーは20分ハーフとかバスケも15分2クォーター制とか1日でやるから短縮ルールで慌ただしく始まる。

負ければ即終わりだけどやる気ないクラスなんかは負ければ一日中遊んで過ごせるのでそれで良いってところも多い。


…しかし。


紅緒『がんばろ!一個でも多く勝って!4組の団結力見せよ!

少しでも長くこのクラスで一緒に戦おう!』


おおお!!!

我がクラス4組はずいぶん戦意が高い。

クラス委員長の紅緒永遠を筆頭に盛り上がるクラスメイトたち。

放課後紅緒邸で打ち上げが開催される予定でそれもあり一年最後の協力イベントに大盛り上がり!


早速第一試合に女子バレーボール、男子ソフトボールが予定されているのだが、


稲田『応援行けなくてごめんね?頑張って♡』


津南『球技大会のソフトボールなんてどーでもいーよ。』


ツナダ組はカップル同時刻試合の為離れ離れで稲田さんだけ寂しそう。


紅緒『応援に行こう!クラスみんなで二手に分かれてさ!』


津南『永遠ちゃん!応援来てくれんの?!』


紅緒『…私はバレーボール応援に行く。』


津南『…ちっ。』


津南はさぁ、彼女居るんだから紅緒さん諦めろって…。

早速第一試合から出るバレーボールとソフトボールに応援に向かう俺たち4組。

…正直チアの衣装とか紅緒さん着て来るんじゃないか?って心配していた。

俺たちは第二体育館で行われる女子バレーの応援に向かいながらそんな話をする。…違うよ?女子バレーを見たいわけじゃ無い!俺たち第二試合で第一体育館だから移動を考えて室内競技の応援を選んだだけ!

一緒に歩きながら紅緒さんはつぶやく、


紅緒『応援するのに相応しい衣装あったよね?』


『学ランとか?』


一応外して答えるけど、紅緒さんはニマニマして、


紅緒『…本当は承くんは私がチアリーダーの格好とかして来るの期待してたんじゃ無い?ほらほら!』


ツンツンされるけど俺は知らない顔で、


『そ…そんな事思って無いし。』


紅緒『えー?顔赤く無い…?

…恥辱のチアリーダー〜そんな応援できません!〜見たい?』


『…紅緒さん恥辱好きだね?』


紅緒さんは表情を引き締めて、


紅緒『…でも今日はそれどころじゃ無いよ!

私ゴールマウスを守らなきゃ!着替え何度もしてたらバテちゃうもん!』


何度か着替えでバテるのか…?

体力貧弱モンスター紅緒永遠が心配…。


バレーは稲田さん派閥中心に組まれたチームでなんせ素人しか居ないからこその白熱した自滅合戦が繰り広げられる!

極論、ミス少ない方が勝つ。


稲田『そっちー!』


女子『きゃー!』


何これ?結構面白い。

ハラハラするボールつなぎ、続かないラリー、ブロックがほぼ機能しない試合はポンポン点が入り試合はどんどん進んでいく。

あっという間に我が四組は僅差で負けた。


紅緒『お疲れ様!頑張ったね!惜しかったよう!』


稲田『…。』


稲田さんは紅緒さんの言葉に邪気無いのも、本当にそう思ってるのもわかるけど悔しさ滲ませて、


稲田『…そっちは勝ってよね?』


紅緒『うん!命かけて頑張る!見ててね!』


『命かけるな。』


俺は突っ込まざるを得ない。

じゃ、バスケの第二試合だから、俺行くね?


⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

第一体育館。

相手は三組、体育一緒にやる隣接する組だから何となく運動神経はわかってる。

十分勝機はあるけど?


7人で試合に臨む俺たち。

陰キャの男子も試合で使いたいし、前半勝負したい。

スタートは俺、青井、青井の友人の3人…。

青井友人は柔道部、レスリング部、空手部と武闘派揃い…。

ゴリゴリの体育会系でパワー型揃い。


俺と青井が普段バスケしてるよ?って話してあるから基本俺と青井が軸になる。


紅緒『承くーん!承くん!がんばれ!ダンク決めてー!』


無理なんじゃ…。そこまでの身体能力無い!

188cmある青井ですら全力ジャンプでリング触れるけどダンクまではいかないしそんな全力ジャンプなかなか何度も出来ない…!




試合が始まる。

ジャンプボールで青井が俺に向かってボール弾く!

青井見えてるし余裕あるな?


俺はドリブルで持ち込み、武闘派3人はゴール下で押し合いを有利に進めている!

3人に出すって素振りからの…!

青井へ高速パス!

…宏介直伝のやつ!相手へぶつける!ってほど気合い入れた早いパスを出来るだけノーモーションから繰り出す!…宏介はこれを本気でノーモーションで相手見ないで出すんだよ?


青井『ナイスパス!』


青井はチェックしに来た三組生徒をあざ笑うように高くジャンプして打点の高いシュートを決める!


ばし!


ハイタッチ気持ちイイ!

青井もニッコニコ!


早いパスは慣れないと武闘派の3人には取れないので青井に使うか、完全にこっち向いてる時限定。

とにかく青井が強い!青井が押し勝ちゴール下は独壇場!

リバウンドが取れるから3人も思い切り良くシュート打てる!

俺もパス意識させてフリーなら打っちゃうし!


紅緒『承くん!承くん!』


とわんこ…血圧上がるから…叫ばないで?

心配になるよ。

後半に入り点差が15点を超えたので温存とバランスを取る為に青井を下げて、大人しい男子をinする。


青井『大人しい男子をin…か。

千佳が喜びそう。』


汗を拭きながら青井はにっこり。

青井は彼女の趣味に寛大な懐の深い漢である…。

いつか女王さまの熱意に負けて過ちを犯さないか俺は心配…!


青井を下げても戦力的にはほぼ拮抗している。

ボールがアウトした際に7人目の男、仙道晃に声をかける。


『…仙道、出る?』


仙道『俺、秘密兵器だから。』


『そう。』


花道みたいな事を言う…。

そのまま試合は俺たちが押し切り、四組準決勝進出!


紅緒『一回クラス戻って♪そしたら私たちの試合♪』


クラスに戻ると早速津南が絡んでくる…。

他の顔見る限り…?負けたかな?


津南『おい、立花?バスケどうだった?負けた?』


『普通に勝ったけど?』


俺は普通の顔して言う。

津南は一瞬黙ったあとイライラしながら、


津南『は?三組でしょ?よわよわじゃん?』


『…そっちは?ソフトボールは勝った?』


津南『は?はぁ?こんなのに熱くなるやつがおかしいんだよ!くっそが!』


悪態をつく津南…いつもの事ではあるが…

いつもの事だからって見逃せない娘が居た。


紅緒『…やる気のある無いは仕方ない。

でも頑張ってる人を笑わないで!私もみんなも頑張ってるの!』


紅緒さんの声に津南は一瞬キレかけたけど拗ねた様に笑い、出て行こうとした。

そこに!とわんこが!


紅緒『…怒ってるの?

図星さされて怒るって事は津南くんだって悔しいんでしょ?』



あー!あー!

言うことは正しいよ、でもそんな正論言われたら…!


津南『悔しくねえよ!

頼まれたってバスケ出てやらないからな!』


津南は扉を乱暴に開けて足音荒く出て行った!

とわんこ…煽りすぎ…!


でもね、とわんこもキレていて。


紅緒『やる気は個人的な事、無理強いは出来ないよ!

でも!頑張ってる!みんなを!バカにした事!

頑張って勝った承くんや青井くんをバカにするのは許せない!』


荒ぶるとわんこが吠える。

クラスメイトたちは優しい目で紅緒さんを見ている。

…なんのかんの全体的には良いクラスなんだよ…最初は荒れてたけどクラス委員長の紅緒さん中心に今は団結力が強いクラス。

それだけに最後イベントの今日の球技大会ひとつでも勝ちたいね?


か弱いって言う表現がピッタリくる、色白な綺麗な娘は目をキラキラ輝かせクラスメイトたちに話しかける!


紅緒『みんなで思い出作ろうよ!

がんばろ!えいえいおー!』


紅緒永遠の鼓舞はクラスをどよもす!

四組の士気は最高潮!


目白『ソフト負けちゃったし、バスケ出れたら僕出たい!』


ベンチメンバー含めて10人出れるので負けた方から補充人員持って来て良い事になっている。

士気高い俺たちのクラスは俺出して!って申し出が殺到した。

…結局最後まで津南派たちは名乗り出て来る事は無かった…。


紅緒『ボールはともだち!いくよ!』


キャプテン紅緒の檄に応えて女子サッカーが出陣!


ギャル『とわんこ?ゴール前から動くな?』

ギャル『いい?絶対無理するなし?』

女子『心配だよー。』


超介護サッカーが始まる…!

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