第332話 特訓

紅緒『…特訓!特訓するよう!付き合って!』



学校指定ジャージに着替えて近くの大河横の公園のサッカーコートで5人で集まる。

伊勢さんは球技大会のエントリーはサッカーにした、紅緒さんが心配だから。

中学時代バレー部じゃなかったっけ?


伊勢『うん、でもへたっぴ。あんまりスポーツ向きじゃ無いんだよね。』


伊勢さんは紅緒さんをフォローすべくディフェンダーなんだって。

伊勢さんは青井が紅緒さんと仙道に柔軟体操させてる姿をスマホで撮影しながら笑う。


伊勢『ねぇ立花?球技大会の勝ち負けなんて正直どうでも良いんだあたし。

…でもさ、負け方によってはとわわん自分のせいだって泣いちゃうじゃん?あたしに少しサッカー教えて?』


相変わらず伊勢成実って女の子は友達思いの気が利く娘。

いつも友達の為に一所懸命なオシャレ女子。

ぱっと見強そうな巨乳の勝ち気なギャルなのに優しい女の子なのだ。


それこそ球技大会程度でしょ?3日後本番だから大した事なんて出来ないでしょ?

それでも出来る事…?

たっぷり体を動かしておく、ボールに慣れる、一対一で負けないってとこじゃ無い?


そんなわけで青井が紅緒さんの介護と仙道のフィジカル強化。

俺が伊勢さんのコーチって形になった。


紅緒『おかしい!そこは私が承くんに手取り足取り密着してドキドキするところでしょー?』


青井『サッカー経験者の立花使う程じゃねぇんよ?まず紅緒の身体をほぐして手の届く範囲のボールだけ触れるようにするだけだから?仙道は走ってて?』


仙道『酷い。』


俺もGK(ゴールキーパー)の知識ってそんな無くて?

部活ん時GK同士で横にボール投げてそれを弾く練習や部員のシュート練習をゴールで弾くみたいなことしか知らない。それを青井に言ったら、

俺でも出来るなそれ。立花は紅緒を介護する事になる伊勢見てやれよ。って事になった。


青井は紅緒さんに付き添いしばらく歩いて、早歩きを途中で交えて。

一回息を入れてから小走りを何本かやった。


青井『関節が錆び付いてるな。身体も硬い。

息上がらない程度に動く癖つけなきゃだぜ?』


紅緒『…うん。』


青井のどれくらいの腕力あるん?って質問に握力はまあまあ。それ以外は壊滅的って言ってた。

握力は倒れる際、何かに掴まれないと大惨事。リハビリ時も何かに掴まって立つのに必要で昔重点的に鍛えた名残なんだって。


紅緒さんをサッカーゴールの前に立たせて学校で借りたサッカーボール3個を使い左右に青井が投げるのを紅緒さんが弾く。


紅緒『これくらいなら!だいじょう!ぶ!』


青井『じゃ、もちょっと早く!』


投げるボールが早くなると途端に弾けない紅緒さん。

紅緒さんは想像の自分と実際の自分の誤差が酷くて乾いた笑みを浮かべる。

いやいや、実際GK大変なんだって!


紅緒『…若林くんみたいにダイビングキャッチとか…できるとちょっと、ほんのちょっとだけ思ってた自分の愚かさよ…。』


青井『…まぁ、手の届く範囲だけ手を出せば良いんじゃね?

仙道?仙道は?』


仙道『青井が走ってろって言ったのに!忘れるなんて酷い!』


青井チームは順調みたい。

さてこっちチームは…。


伊勢『あん、たちばなぁ…!うぅん、もうダメぇ…。』


横で走る…伊勢成実の息が上がった掠れ声と揺れるバインバインに俺は困り果てていた…。

身体ほぐす為のランニングで揺れまくるし、柔軟させれば…下手な雑誌のグラビアよりセクシーだし…。


伊勢さんは女子平均より若干背が高め。

太ってはいないし運動神経最悪って事も無い。ただそのバインバインのせいで不安定なのだ。

スポーツ時はガッチリ固めて動かないようにしているって何気無い説明にもちょっとドキドキしちゃってしんどい。


こっちは伊勢さんに一対一の基礎を教える、

ボールを視野に入れながら相手の目と全体を見る。

そして重心を下げてパスでもシュートで対応できるように。

基本的に時間稼ご?待って相手を味方で囲めば素人なんだから大丈夫でしょ?

かわされることとシュート打たれる事だけ防げば良いし素人女子のサッカーでセンタリングとかフリーキックなんてまずまともに出来ないからカウンターだけ抑えれば良く無い?


とりあえず伊勢さんに相手に抜かれない、相手のボールにちょっかい出すように言う。

…しばらくすると結構出来るようになった。

あとは…相手がボール持ってて?ボールを保持してる相手に圧かける方法。

多分相手はこっちに背を向けてボールを保持してるから?反則ならない程度に肩や腕などで押したり圧をかけてどんどん外へ逃げざるを得ないように追い込むのだ!そうすれば苦し紛れにパス出すか無理にドリブルで抜くしか出来ないし、時間稼いで囲んでも良いよね。


伊勢『…基本って時間稼いで囲むのがいいんだ?』


まったくその通り。

ボールを保持してる俺は伊勢さんが足出せないように背を向けてボールを内側に保持する。


伊勢『こう?』


ぎゅっぎゅ!肩と手で反則にならない程度に押す。

これで相手も圧がかかるしボールを自由に捌けない。

ディフェンダーはパワーも必要な理由だよね。



伊勢『はは!なるほどね!自由にさせないって事なんだね?押すぞー?』


イタズラっぽく笑う伊勢さん…なんだけど…?

さっきから!


ぽよん!ぽよぉん!


当たっちゃいけないモノが…ご立派が俺の背に…。


『伊勢さん!すとっぷ!』


伊勢『ふふ!立花?ボール取られそうだからってストップは反則じゃない?』


『…伊勢さん、女の子相手ならアレだけど…肩と手、腕で押して?』


伊勢『…そこで押してない?』


俺は申し訳無いって顔で、


『…ううん、当たっちゃいけないモノが…。』


伊勢『…!』


バシン!バシン!俺は肩パン2発喰らったけど抗議はしなかった…。

そっちが当ててきたんじゃない…!言えないけど。


そんな感じで5人でボール回したり、3人でボール回してるとこ2人でカットしたりする練習をした。伊勢さんはシュート練習もちょっとだけした。

俺は青井に聞いてみる、


『仙道はどう?競技バスケだけどサッカーの練習に付き合わせちゃってるけども?』


青井は首を振って、


青井『仙道は夜は墓場で運動会って感じ。』


まったくわかんない。

ゲゲゲなテーマソングが聞こえるような気がする。


こうして準備したんだか、してないんだかわからないけど一年最後の球技大会へ臨む。


紅緒『なんでなるみんの方がラブコメっぽいの?』


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