閑話 ゆきだるま 後編

ひー『ゆきだるまさん…!

ぼくがひきとめたから?ぼくのせいでゆきだるまさんないてるの?やせちゃったの?

しょうはあんなにおおきかったのにこんなにちいさくなって、ひかるはぼくといっしょでちいちゃくてからだがよわい…。

のぞみはおっぱいもげた。』


『ぶふっ!』

香椎『ぴゅ!』


望『笑うなよぉ!』


突然のおっぱいもげたってパワーワードに吹き出した俺と香椎さん。

香椎さん涙目!笑わないように必死なのが見える!

ギャグっぽくならないように香椎さんは表情を引き締めて直して軌道修正を図る。



(あ、香椎さん久しぶりに女優モード使ったな…)


香椎『ううん、雪だるまさんたちもひーちゃんと一緒に居たかったからだよ。でも、もう限界なんだ。』


ひー『!!

しんじゃうの?それともゆきだるまさんきえてなくなっちゃうの?

そんなのいやだよお!』


泣き始めるひーちゃん…。

ずっと気になってた香椎さんの大きめトートバックから何かを取り出す香椎さん?発泡スチロールの箱?


箱から出て来たのは…!


香椎『これは氷の船。

これに乗って雪だるまさんたちは次の冬を探しに冒険の旅を再開するの。』


何それ!めっちゃいい!

旅立ちエンド!旅立ちエンドは俺も考えたけど知らないうちに居なくなった位しか思いつかなくって!さすが香椎さん!


ひー『…でも…。』


雪だるまとの別れが決断出来ないひーちゃん。

そうなんだよ、ひーちゃんが旅立ちをすすめる物語が必要なんだ。


香椎さんはもう理由を用意していた、


香椎『ひーちゃんだったらどうかな?

3兄妹揃ってたらどこでも大丈夫でしょ?』


ひーちゃんは大きく頷く、


香椎さんは柔らかい笑顔で、


香椎『雪だるまさんは冬を探して追いかけてずーっと旅をしてきた。

そろそろ仲間や友達。そしてパパやママやおじいちゃんやおばあちゃんに会いたくなってきたんだよ。』


ひーちゃんはっきり理解した、雪だるまさんたちは旅立たなければならないんだと。


ひー『…そうだよね?おとうさんやおかあさんにあいたいね?おじいちゃんやおばあちゃんもしんぱいしてるね?』


涙をポロポロこぼしてひーちゃんは理解した。

雪だるまさんとお別れなんだって。



ひー『ごめんね、ぼくがひきとめてこんなにちいさくなっちゃって…。』


涙ポロポロだけどひーちゃんは別れだから!ってニコニコ笑顔を作って一体一体に話しかけている。


望も雪だるまに話しかけていた。

…なんで自分モデルの「のぞみ」だけ敬語で話しかけてんの?


俺もまた会おうね、来年待ってるよ?って話しかける。


それを聞いたひーちゃんは顔をパッと輝かせて、


ひー『らいねん?!

らいねんもあえる?!


香椎『来年も雪だるま作ろう?そうしたら今年来て場所知ってるからまたひーちゃんの雪だるまに雪の妖精さんたちが冬の間帰ってくるよ?』


雪だるまに一生懸命新川町に来る方法を教えるひーちゃん。駅からのアクセスを説明している。

…多分新川駅まで電車で来ないと思うけど…?



ひーちゃんは優しい子に育っている。

それは俺たち家族の誇り。

…でも、いつかこう言う事を笑う奴、汚す奴が絶対に居る。

その時にこの純真な弟がどれだけ傷付くのだろう?って思うと気が気で無い。

それでも人は人の中でしか生きられない。

願わくばひーちゃんがこの純真な優しい気持ちを持ったまま健康に成長していきますように。

俺はそう雪だるまに祈った。


雪だるま三兄弟は香椎さんお手製、氷の船に乗り込む。

…さすが美術10の娘…!

なんか氷の彫刻みたい…。


香椎『大きめタッパーに水入れて凍らせて、彫刻刀でパパッと削って仕上げたの!ふふー!』


いやマジすごい。

香椎さんがひーちゃんの夢を綺麗に送ってくれるおかげでかけがえ無い思い出が弟の胸に残る。


香椎『あ!はい、あとこれ。』


氷のおにぎりが何個か用意されていた!

気が効くよね…香椎さんまじ才女。


ひー『ありがとう!ありがとうかしちゃん!

これでおなかへらないよ!ゆきだるまさんたちよかったね!

かしちゃんのごはんおいしいよ!』


香椎さんひーちゃんに褒められてご満悦!

いいな、雪だるま。香椎さん手作りおにぎりか。



別れを惜しむが、氷船も雪だるまもそろそろ限界。

名残惜しいがいよいよ旅立ちの時。



氷の船に雪だるま、氷のおにぎりを乗せていよいよ出港。


ひー『ばいばい!ばいばーい!

またね!またきてねー!まってるよ!

しょう!のぞみ!ひかる!

たのしかったよ!ありがとぉ!』


途中までひーちゃんは船を追った。

でも雪解け水で増水した川は流れが早く、帆も無いのに船は滑るように下流へ真っ直ぐ進む。


沈没するの目の当たりにしなくて良かった…!

バランスや歪な形だとすぐ沈みそう。

…香椎さんの器用さすげえ。



ひーちゃん『ばいばーい!ばいばーい!またきてね!

にほんのしんかわちょうのにちょうめだよぉ!わすれないでね!』


うん、日本の新川町って地名結構ありそうじゃない?しかも2丁目だけじゃね。微笑ましい。


望『万が一迷子の際に備えて住所と電話番号覚えさせようっと。』


望は呟いた。

見えなくなってもいつまでもーちゃんは見送っていたんだ。

望はひーちゃんが川に近いから側に付いていた。


俺は横の香椎さんにお礼を言う。


『…ありがとう、香椎さん。

弟の夢を綺麗にまとめてくれて。』


香椎『ひーちゃんは可愛いね、そして純真。

お兄ちゃんはいつも弟と妹の事に一生懸命だね?』


香椎さんはクスクス笑う、


香椎『お互いに思いあってるから絆が強い兄妹弟だよね。

うちも仲良いけど…3人兄妹だとまた違った良さがあるね?』


ひーちゃんと望の後姿を見ながら香椎さんと話す、話してると香椎さんがまた笑い出した、


香椎『ね?承くん?

このトートバック見た時食べ物入ってるって思ったでしょ?』


バレてたか…。

だって、植物園行った時このバッグからこれでもかって香椎さん手料理が…!

バレンタインデート編参照。


今度は香椎さん少しぷんすこしながら、


香椎『…さっきから気になってたんだよ、今日は香椎さん、香椎さんって。

玲奈でしょ。』


『妹弟の前で…なんか気恥ずかしい…。』


香椎『…ちゃんと玲奈って呼ぶと良いものあげるよ。ちゃんとおねだりできるかな?』


俺は照れながら、


『玲奈さん、良いものください。』


きっと食べ物のような気がする。


玲奈『じゃーん!玲奈お手製!肉まんです♪』


トートバックから保温容器が。

そこから取り出したるはフカフカ肉まん!

ご丁寧に使い捨てカイロで保温されてるー!

食べものの気配に望が反応して、ひーちゃんも小走りでやってくる。

…ひーちゃん!小走りダメ!


玲奈『ふふー!川の側で冷える気がしたんだよね。熱いよ気をつけてね?』


流石に熱くはなかったが、カイロ2個で保温されててホカホカ!

しゃがみ込んでひーちゃんに肉まんを手渡す玲奈さんに俺は見惚れてしまう。

ひーちゃんも望もアフアフ肉まん食べてる。


俺の妹弟を見つめる玲奈さんの目は優しい。

ひーちゃんの夢を壊さない為の発想、ストーリー、下準備、アフターケアから食欲お化けの餌付けまでそつなくこなすこの娘はきっと子供の長所を伸ばして夢を育てられる良いお母さんになるんだろうなぁって確信させた。

玲奈さんは色んな面を持っている。

そのどれもが素晴らしくって知れば知っただけ俺は玲奈さんを好きになる。






その日、寝落ちするまでひーちゃんは雪だるまがどこまで行ったかな?家族に会えたかな?ってニコニコ話していたんだ。


☆ ☆ ☆

今日の誤変換


雪だるまを見送るシーン。


見えなくなってーちゃんは…ってとこ



見えなくなって

であるは一回トイレ行った。


その後、


「も」で一回ひらがな確定して「ひ」で予測変換のひーちゃんって入力しようとして、タイプミス。


もひで予測変換→






見えなくなってモヒカン



モヒカン(笑)

コメント返しでバギーに乗って肩パッドつけたモヒカンが…なんて書いた記憶がある…世紀末暴徒(笑)



どういうシーンだこれ?

ひーちゃんがモヒカンになってる絵を想像してひとり吹き出す早朝の出来事。



ひー『ヒャッハー!!』

(モヒカン)

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