第328話 紅緒永遠の暗黒時代【side香椎玲奈】

『人にはあまり他人に言いたく無いような趣味の一つや二つあるものでしょー!

他人の家の泊まりに来て部屋の主人の性癖を看破するだけならまだしも!

本人に指摘しちゃうってなんなのー!』


やっちゃった…。

選択肢ミスったかも?


私の頭の中に3択で、

 しらばっくれる

 承くんに貰ったの!

→逆ギレ


ロクな選択肢無くって勢いで言っちゃった…。

普段の私なら時間かけて?話逸らしたり、違う話題被せたり?どんな手を使っても言質取らせないんだけど…。

初めてお姉ちゃん以外にバレて自分を見失った…!


永遠『…私の付けた汚れあるしわかるでしょ?

え?どうやって手に入れたの?』


これはまずい…。

このままだと泥棒女か完全メンヘラ女だと思われてしまう…。

でも、匂いフェチを拗らせてるって言いにくい…!

どうしよう?私は一度目を瞑るとゆっくり開き、優しく微笑みながら永遠に語りかける。


『卒業アルバム見る?承くんも載ってるよ?』


永遠『見る!』


感触と視線でわかる、永遠は忘れてもいないし丸め込まれてもいない。

でも、ここは見なかった事にしてくれるらしい…。借り1だね…。


私たちはキャッキャ笑い合いながら卒アルや文集を見て楽しく過ごす。

じきにママやお姉ちゃんが帰って来て、一緒にご飯食べてその後お風呂に入って貰ったあとおしゃべりかゲームのよくある女子会風景だったんだよ。




食後。

客間でお姉ちゃんも混じってゲームする。

え?私たち姉妹の高速ぷよぷよに対応できる人初めて見た、

お姉ちゃんは永遠とすぐに仲良くなった。


優奈『へー?永遠ちゃんって言うの?すっごい美人!びっくりした!』


永遠『いえいえ!お姉さんこそすっごい美人!びっくりしましたよ!

玲奈も美人だけど…お姉さんはやっぱ大人ですね…!』


永遠はお姉ちゃんにすっかり懐いてスプラトゥース!とかマレカーとか言われるまま付き合ってもう23:00。

貴女は何しにきたのかな?


まあ、楽しい時間だったけれども。

じゃ、そろそろお開きで?私の部屋で寝るってことになった。

お姉ちゃんはすっかり永遠を気に入って、


優奈『永遠ちゃん、綺麗だし賢いし良いお嬢さんだ!

玲奈と仲良くしてあげてね?

…玲奈は誰とでもある程度仲良くなるけど本当に心を開くのは一部だから。』


お姉ちゃん?!

…でもそうかも。ちょっと納得していると、


永遠『あはは!さすがお姉さん!

でもどうですかね?私と玲奈は承くんを挟んで綱引き中なので?

…いつか袂を別つと思います。

…本当はこんなこと言わない方が良いんですけど…お姉さんに嘘つきたくないんです。』


永遠が透明感のある、儚い表情で微笑む。

ぞく!って嫌な悪寒が背筋を走る。

なに?これ?不吉な予感?


お姉ちゃんも毒気を抜かれて、


優奈『えー…。承くんを永遠ちゃんも狙ってるの?』


お姉ちゃんは珍しくショックを受けて自室へ引き上げて行った。

…永遠?どうしたの?


私の部屋へ引き上げる。

永遠はさっきと表情を変えて、


永遠『じゃ!先週のデートの話しをしようか!

私はね…!』




永遠のデートもきゅんきゅんするもので?最後手を繋いで俺カレまで行って?手を繋いだまま入店するって騙し討ち!少し嫉妬しちゃうけど笑って羨ましがって、感情移入しながらたっぷり話を聞いた。そのデートもいいなぁ。


続いては私デートの話しをする番。

ナンパされたとこ助けられたとこで私も助けて貰った!って盛り上がったり、私の弁当直前にパン食べようとした話に怒ったりお弁当のくだり羨ましそうにしてた。


もう日付が変わり01:00そろそろ寝ようか?って事になった。

そしたら…永遠が急に真面目な顔で私に向き直り話し出した。


永遠『…今日は承くんとデートの話を交換しよう!心ゆくまで!って言ったけどさ。

本命はこっちなの、少しだけ話を聞いて?』


…それは、紅緒永遠の小5から高1の春までの話し。

私が承くんを意識したあの日に倒れた少女の話し

倒れた少女は死を意識しながらあがき、もがくように日常生活を求めた話し。

生きるってことと死ぬってことの狭間の話し。

承くんに告白した時にしたお話しだって言ってた…。


私は後頭部を強打しような衝撃を受ける。

目の前がチカチカして、意識はぼんやり。

その話をする永遠はまるでオルゴールみたいに綺麗な声で信子ちゃんの話し以外は感情を乗せずに一気に語り切った。

249話ー255話 永遠の告白内の暗黒時代 参照。


『…そんな事って…。

よく無事で…とわ。』


私は話が終わるのを待って永遠を抱きしめる。

何て細いんだろう。だからこんなに色白なんだ。目に力があるわけだよ。

色々と紅緒永遠って言う人間に納得出来てしまうここまでの人生話し。

私は何もしてやれないけどね。

私は永遠を抱きしめたくてたまらないし涙が止まらない。


永遠『承くんもなるみんも泣いてくれた。

みんな優しいね…。』


永遠は透明感のある儚い笑顔で微笑む。

だからこんなに?この女の子は活き活きと毎日を過ごしているのだろう。


その永遠が涙流し始める、


永遠『だからね、私は赤ちゃんが欲しい。

なんなら、さっき言った通り友達、思い出、卒業全部捨てれる。

…なんなら子供出来たら退学だ!って言われたって平気。

私はその覚悟を持っている。』


ビリビリ来る、永遠の本気に頷くしかできない。


永遠『…正直入学時は誰でも良いし、こだわりなんか無かった。

赤ちゃんのパパになって?私が死んだあとも養育して、たまに私のパパママ、家族のような従業員さんたちに忘れ形見を見せてくれるなら…。』


強い視線に私は頷く。


永遠『…でも、見つけた。

本当に欲しい人。私は承くんが欲しいし、承くんの赤ちゃんが欲しい。』


なんて衝撃なんだろう。

16歳で同じ男の子を好きな子がそこまで覚悟して、命を賭して赤ちゃん産みたいって言う迫力に私は飲まれていた。


永遠『玲奈。

私はきっと、そんなに長生きしない。

私は玲奈が好きになりかけている…。

だから玲奈と争いたくないし、友達…ううん、友達以上になりたいよ。』


すごい迫力…!

なんか言う事は想像出来るけど止められるわけもない、



永遠『…玲奈は中学だけで何十人告白されてるって聞いたよ。

…高校入ってからも止まらないんでしょ?

すっごい綺麗で可愛い、玲奈ほどの女の子は見た事無い。』


私は黙って首を振る。

やめて、それ以上は言わないで?

永遠はその大きな瞳から真珠のような大粒の涙を溢しながら、


永遠『…だから、お願い。

お願い、玲奈。

…承くんを譲ってくれないかな?お願いだよぉ…。』

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